採鉱族の村
村の中を隠す結界はかなり難しいものなんだろう。そこらの街にあるようなものじゃない。
目の前には、何もないはずの場所に張られた結界があった。
「何者だ?」
「俺の名はイルネス!採鉱族だ」
採鉱族?
採鉱族ってあの採鉱族か!?
「貴様ではない。貴様の隣にいる者の名を聞いている」
「アフ...」
「どうも、アフラと申します。以後お見知り置きを」
「なぜこの村へ来た」
「そこにいるイルネスさんから回復役がいると聞き、回復してもらうために来ました」
「ほう。あのイルネスが...」
反応的にイルネスはこの村では相当な有名人なんだろう
「イルネスよ!そいつは信用できる者なのか?」
「信用できる根拠はないが、俺は信用する。それにアフラはまだ幼い。問題を起こした時は俺が責任を取ることくらいできるだろう」
暴れた時は責任を取る...
これってつまり俺が暴れたら、イルネスが責任をとって俺を殺すということか!?
いやいや、俺は5歳の子供だぞ?なんで問題を起こす想定をするんだ!
「信用できる根拠はないが俺は信用する..か。信用できんな。イルネス、お前は戦士だ。村にいる間、四六時中アフラを監視することはできないだろう。それに、種族と年齢は?」
「それは僕の口から説明させていただきます。種族は悪魔、年齢は5歳です」
「5歳..ますます怪しくなった。そんな悪魔を俺の村へ入れるわけにはいかん」
「待て。アフラはそんな怪しい人物ではない!こいつからは全く敵意や害意が感じられないんだ!」
「わがままを言うでない。敵意や害意を感じ取る魔法は対象が自分より強かった場合、正常に機能しない。信用ならんやつは入れてはやれん。ましてや、5歳と名乗る怪しい、悪魔など...」
そりゃそうか。もし母さんの言っていたこと嘘だとするなら、5歳で冒険に行く人は少ないんだろう
「確か回復役を求めにきたんだったな。村へ入れることはできなくとも、回復役はそっちへ向かわせよう。わかっておるな?決して回復役を殺そうとは考えぬことだ」
「心得ております」
「もし、アフラが暴れたら俺が責任を持って止めよう。これは信じてくれ」
俺はてっきりイルネスのいう村は場所はエルステだと思った。
そこらの街にあるようなものじゃない。
村の中を隠す結界はかなり難しいものなんだ。
「あなたが5歳の悪魔、アフラですか?」
「はい。僕がアフラです」
「そうですか。それでは、回復魔法をかけます。動かないでくださいね」
「わかりました」
「我が力を糧にせせらぎをこの者に与えたまえ。ヒーリング」
..おぉ
これが初級Ⅲの回復魔法、ヒーリング。痛みが緩和されてる
「っく..」
回復役が顔を歪めている。
何か腑に落ちないことでもあるのだろうか?
無理してやってもらってるとしたら申し訳ないな
「大丈...」
「できました。もしかしたらどこかおかしいと思うところがあった場合、別の回復役へ行くことをお勧めします」
「わかりました。ありがとうございました」
〜〜
あの人は俺に回復魔法をかけるのを嫌がっているのかと思ったが、意外と親切に対応してくれた。それじゃあ「っく」ってセリフはなんだったのだろうか?
彼女からは一切嫌悪感も感じられなかった。
まあ嫌悪感を感じられなかったっていっても俺の『感』でしかないんだけどな。
「それより、お前は何か食わないのか?大きくなれんぞ?」
「え?はい。身体を強化する魔術で食事をするのは2日に一回でいいので」
「なるほどな。しかし、子供の頃の食事というのは大事な物だ。今後に影響するぞ?」
「それもそうですが、もう暗いですし、僕には魔物を倒す力がありませんので」
ここはイルネスが結界を張ってくれたので魔物は入ってこれないが、外は危険だ。それにイルネスには明日仕事がある。ここで迷惑をかけるわけにはいかん。
「そうか?それなら、俺が取ってこよう」
「いいんですか?明日仕事あるって言ってましたよね?休まなくていいんですか?」
「3日くらいは不眠不休で戦い続けられる。それにここは採鉱族の村の隣だ」
『3日くらいは』ってバケモンかよ...
普通3日も不眠不休だったら死ぬはずなんだが...
イルネスは俺に心配されないようにそう言ってるのか、本当にそうなのか。
「それでは行くとしよう。アフラもこの結界からはでないようにな。すぐ戻る」
「わかりました」
イルネスはいい人だと思う。俺を信じてくれる。助けてくれる。
回復役のいる場所へ連れていってくれた。結界を張ってくれた。
見ず知らずの俺のためにこんな夜遅くに食べ物をとってきてくれる。
焚き火を焚いてくれた。イルネスには返しても返しきれない借りを作った。
暇だしイルネスが行っている隙に荷物を確認しよう。
所持品:
メモ帳、服、銀貨3枚、銅貨2枚に父さんのアクセサリー
無くしたものはない、ハズ。というより荷物少ないな。まあ入れすぎても重いわけだし、銀貨3枚もあれば当分は生活に困らないからな。
「戻ったぞ」
「おかえりなさい。何を取ったんですか?」
「近くの川で初級Ⅲ相当の魚を取ってきた。焼き魚にするとしよう」
〜〜
なるほど。これは...
パサついてて、身は固くて、その上生臭い。
はっきり言おう!まずい!
「あまり美味しくないな。普段はこんなに生臭くないんだが...」
「そうなんですね」
「ただ栄養価は高い。いっぱい食べると大きくなれるぞ」
「そうなんですね」
おそらくこの魚も死の森へ変貌したことで突然変異したんだろう。
こんな魚は見たことがない。魚が初級Ⅲレベルは相当珍しいからな。
「もう一本いるか?」
「大丈夫です。もうお腹いっぱいですので」
「そうか。それじゃあもう寝るのか?」
「そうですね。もう暗いですし、寝ようかと」
〜〜
やべえ。眠れない。
普段この時間に寝ないから、全く寝れない...
「寝れないのか?」
「はい。普段こんな早く寝ないので」
「そうか。今日のことだが、すまなかったな。入れてやれなくて」
「イルネスさんが気にすることはありませんよ」
「イルネスさんって、この村では長いんですか?」
「ああ。もう何十年になるかな」
「相当長いんですね」
「ひとついいか?何があって退学になって、何があってここにいるんだ?」
「実は...」
〜〜
「...そうか。母親にそう言われたんだな」
「母さんは..俺を捨てたんでしょうか?」
「俺には分からん。だが、お前を捨てるためだけにあれだけ準備する親がいるとは思えん」
「そうなんですね。僕は戦えないので、どこかで暮らした方がいいのでしょうか?」
「そうなのか。アフラ、お前は強い。弱くない。戦える」
〜〜
昨晩はあまり寝れなかった。イルネスと夜通し俺の事情やら雑談をしていた。
初めての野宿ということもあったが、魔術で生み出した草はお世辞にもいいとは言えない。それでも前世の会社よりかはいい寝床ではあった。
「お世話になりました」
「こちらこそ。それじゃあ元気でな」
「イルネスさんもお元気で。ここまで案内してくれてありがとうございます!」
「ああ。頑張ってな」
「はい!」
イルネスさんには色々してもらった。
採鉱族の村に入れなかったことは残念だが、それもまた運命。
このエルステへと続く安全な道まで案内してくれたしな。
また今度、信用できる人になったら恩を返しにこよう。
俺はそう誓ったのだった。
〜〜〜〜
3時間歩き続けた末に、ついに着いた!
エルステに!!!




