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捨て置かれた第二王子を助けたら王太子が婚約者になりました  作者: とぅーのすけ


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結末

その後、カミラは尋問の後すぐに処刑された。

その中で彼女は、自身の家族がすでに自国で亡くなっていること。戻る家などない事を語った。

元はノルン帝国の国王に闇魔法の才能を見出され、家族を人質に取られ間者としてこの国にきたそうだ。

そして出会ったエリザベートを心から慕うようになり、彼女の為に生きたいと思うようになった。

最初はエリザベートを裏切った国王のランベルクを殺そうと思ったようだが、彼女がまだランベルクを愛していることに気付き、彼女の望むよう、ルーファスとアイシア狙ったと。

ただ、自身の力ではルーファスは殺せないと判断し、アイシアを標的に選んだ。

結果的に失敗はしたが、カミラは微笑んだまま処刑されたそうだ。


その後王妃は精神を病み、国の混乱を招かないよう、療養という名目で王国の北にある塔へ移されることとなった。


国王であるランベルクは、エリザベートの話を聞き、自身のまいた種で起きた一連の出来事に責任をとるため、ヴァンシルに王位を譲り、エリザベートと共に北の塔へ隠居すると決めた。


ヴァンシルはアーサー含む魔術師団や騎士団の精鋭と、さらにガルシア帝国のサイラス王子を伴い、共にノルン帝国へゴーレムを連れて話し合いに向かい、一連の責任を取るため、国王含む今回と前回の侵略に関わった幹部の処刑と追放を決行させる代わりに、黒湖の結界魔法の持続と浄化協力を約束して三か国の協定を結んだ。

ガルシア帝国の被害や死者数を考えて、ゴーレムは国王と共に処刑されることになった。

ただ、ルーファスがかけた黒湖の不可侵魔法を見て、感謝の言葉を述べて最後の時を迎えたそうだ。



「アイシア様、体調はいかがですか?」

カーテンを開きながら、アンが笑顔で振り向く。

「もう、平気よ。セラフィーヌ王女から頂いた魔力回復薬のお陰ね。」


あれからなんとアイシアは魔力枯渇で1週間寝たきりだったのだ。

起きた時、体が気持ち悪くて、傍につきっきりでいてくれたアンと専属メイドのメイナにお風呂をせがんだほどだ。

寝ている時に、何度もルーファス様やヴァンシル殿下が来て下さったそうだが、全く覚えていない。

でもお風呂にも入れない寝たきりの私の傍には来てほしくなかったわ、と、冷静にアイシアは思う。


あの後、すぐにルーファス様がアイシアに魔力を分けようとしてくれたようだが、死にかけたルーファス様に魔力は残っていなかったようで、他の方も魔力の相性もあり、分けることが出来ず、結局枯渇のまま寝ていたそうだ。

セラフィーヌ王女から貰っていた魔力回復薬がなかったら、瀕死状態になっていたかもしれない。

お守り代わりにと言ってもらったけど、本当にご利益がすごい。


「お風呂に入ってスッキリしたけど、私の部屋、ちょっと花が多くない?」


メイナの入れてくれたお茶を飲みながらアイシアが部屋を見渡すと、所狭しと沢山の花が飾られている。

その花はヴァンシル殿下やルーファス様、そしてなんとユージィン様やエリオット様からもあり、花の似合わないユージィン様の可愛いブルーの花束には笑ってしまった。

その隣にはエレナからのユージィン様と色違いのピンクの花束もあり、もしかしたらユージィン様と一緒に選んだのかもと想像し、早く詳しく聞きたいと思ってしまった。


「皆さま、アイシアお嬢様を心配されていたのです。ありがたいことです。それにしてもユージィン様がこんな可愛らしい花束を…ププ…。」

アンが噴き出したので、アイシアもつられて笑う。


ああ、良かった。

無事にすべてが終わったわ。

”あの時”、私は死ぬのだと思った。

だけど生きている。

生きてまた、みんなに会える。

そのことがとても素晴らしいと思う。


「そろそろ、私も動き出さないとね。ノルン帝国の黒湖の浄化にも向かいたいし…。」

私が目覚める前日に、ゴーレムは処刑されたそうだ。

ノルン帝国は国王の一人息子である13才の王太子が王となり、今回の侵略に反対していた貴族たちが後ろ盾になり、支えるそうだ。

処刑された国王は最後まで抵抗していたそうだが、王弟であるゴーレムは清々しい顔で、国民へフェイレイ王国が魔法の力で支えてくれることを宣言し、抵抗することなく斬首されたそうだ。


やり方は間違っていたけれど、ゴーレムも国民の為に尽力する王家の一人だったのだろう。


クロエ様は…ヘリオット公爵家が王妃の罪とクロエのしでかした件で責任を取る形で降爵され、公爵から伯爵位に落とされ、領地は縮小された。ジョゼット侯爵家への賠償金の支払い命令もあり、実質没落の一途を辿ることとなった。

長く続いた4大公爵家のあっけない結末だった。


そして今日、アイシアはヴァンシル殿下に王城へ呼ばれている。

アンが朝から気合を入れて準備したおかげで、今日のアイシアは艶々の髪に、ピカピカの肌に磨かれて、いつも以上に輝く妖精の様な仕上がりだ。


「とうとう、婚約の話ですよね。」

ワクワクと顔に書いてるかのようなアンの笑顔に、アイシアは苦笑いする。


全て解決したら…

ヴァンシル殿下の優しい熱のこもった琥珀の瞳を思い出す。

私は…王となるヴァンシル殿下の申出を断る術は持たない。

あれほどの人格者であるヴァンシル殿下に求められることは私には過分な申出だわ。


でも最後に…ルーファス様に会いたい。


「アン、ルーファス様は?」

「今日は朝からノルン帝国へ結界の確認に向かったそうです。」

「そう…。」

「でも、アイシア様が出られるお昼前に一度戻るとおっしゃっておりましたよ。」

「へ?ノルン帝国から?」

一体どれほどの距離があるのか…

「何でも、魔術師団本部とノルン帝国の黒湖の近くにゲートをつないだそうです。だから近所のお使いに行くような感覚なのでしょう。」


アンの何でもないような話に、唖然とする。

本当に、ルーファス様は規格外だわ…。

「あ。だったら私もルーファス様にお願いして一度黒湖を見てみたいわ。浄化計画もたてられるし。」

「もう、いまから王城へ向かうのに何をおっしゃっているんですか。」

呆れたようにアンが文句を言うが、その目は仕方ないですね…と親愛の情が籠っている。

それはまた、今度です、と、アイシアの髪に髪飾りを差してゆく。


「はい、お嬢様、最後の仕上げでございます。」

「ねぇ、アン。今日はこちらのネックレスにして欲しいわ。」

アイシアは深いアメジストの宝石が美しいネックレスを手に取った。

「私が生きているのはルーファス様のお陰だから…。」

アイシアは愛おしそうにそのネックレスを見つめる。

「…そうですね。ドレスはヴァンシル殿下のお色である金色ですから、一つくらいルーファス様のお色を纏っても問題ないでしょう。」

ニッコリと笑うとアンは美しく仕上げをしていく。


それから1時間後、王家からの迎えの馬車が到着したと執事のバーニーが知らせに来た。

ルーファス様には会えなかったわね。


アイシアは立ち上がり、私室を出ると、すぐ後ろからルーファス様の声が聞こえた。

「シア。」

アイシアが振り向くと、肩で息を切らせたルーファス様が立っている。

魔術師団と自分の私室をゲートでつないでいると言っていたから、今戻ったのだろう。


「間に合ってよかった。いまから兄上のところへ行くの?」

「はい。ちょうど迎えの馬車が到着したところです。」

「そう…。」


ルーファスはアイシアの髪にそっと手を伸ばして髪を一房掴むと、その指をゆっくり滑らせる。

「綺麗だね、シア。兄上の色だ…。ドレスもとてもよく似合ってる。」

「ありがとうございます。急いで戻って下さったんですよね。あ…。フフ、ここ、汚れてますよ。」

アイシアはルーファスの頬についた汚れに手を伸ばして指で拭う。


「シア、そのネックレス…。」

「はい、これ、ルーファス様にデビュタントの時に頂いたものです。私を守る魔法を付与してくださっているのでしょう?」

「…うん…。つけてくれて嬉しいよ。似合ってる。」

ルーファスはネックレスを持ち上げると、宝石にそっと口づけをする。


間近で見るルーファスのアメジストの瞳に、アイシアはドクンと胸が鳴った。


「あれから上達したからね。もう少し効果の高い魔法を付与したよ。」

「…あ、ありがとう…ございます…。」

顔が熱くなるのを必死で押さえながら、アイシアは努めて冷静な声を出した。


「気を付けてね、シア。さすがにもう危険はないと思うけど。帰りを待ってる。」

「はい…。行ってまいります。」


フワリと笑顔を見せて、アイシアは馬車へ乗り込んだ。

進みだした馬車をルーファスはいつまでも見つめる。

帰ってきたらシアは兄上の正式な婚約者になっているだろう…。


この腕の中で血を吐いて力を失っていくあの恐怖…死よりも怖いあの光景を思うと体が震える。

生きていてくれるだけでいい。

幸せに笑ってくれたらそれだけでいい。

僕の愛するたった一人の……。




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