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捨て置かれた第二王子を助けたら王太子が婚約者になりました  作者: とぅーのすけ


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アイシアの王都への帰還

城に着くと、アイシアはルーファスと共に、ヴァンシルの元へ向かった。

執務室にいたヴァンシルは、アイシアを見つけると、すぐに立ち上がって駆け寄る。


「無事で良かった。ガルシア帝国は無事に治療が終わったようだね。ありがとう、アイシア嬢。きみのお陰だ。」

肩を抱いてソファへ促すと、すぐ隣にヴァンシルは座った。

手は握られたままだ。

いつもより近い距離に、アイシアは戸惑う。


ルーファスも向かいの椅子に座ると、侍女がすぐにお茶を用意した。

寄り添って座る二人を静かに見つめる…。


兄上のシアを見つめる瞳には愛おしさが籠っている。

とても大事に思っていることがわかる。

全て解決したら、兄上はシアに結婚を申し込むと言っていた。

まだ、王妃の罪は解決していない。ノルン帝国とのことも、逃げた侍女も見つかっていない。

まだ、大丈夫だ…。

まだ…シアは誰のものにもなっていない…。


膝に乗せた拳をギュッと握りしめる。

僕は、シアを幸せにすると決めた。シアの為なら命だって捨てられる。

シアが幸せに笑ってくれるなら…、そんな未来を守れるなら…

傍にいるのが自分じゃなくてもいい…。


「帰って早々すまない。部屋は準備しているからゆっくり休んでくれ。それからでいい。

アイシア嬢、ルーファス、…王妃が君たち二人に会いたいと言っている。」


宝石の様なエメラルドの瞳を見開いて、ヴァンシルを見つめる。

「王妃殿下が…?」

ヴァンシルはアイシアの手を握りながら、小さく頷いた。


「ああ…母上を尋問した。証拠はもうすでに上げている。母がルーファスに使った毒はノルン帝国のものだった。その使用が闇魔法の操作によるものなのか、母の意思なのかまだ確認が取れていない。でも、、クロエに侍女を与えたのも母で間違いなかった。追及はしたが、母は肝心なことは何も答えていない。二人を連れてこないともう何も話さないと言っている。…。」


「そう…ですか…。」

アイシアが呟くと、ルーファスが反対した。

「僕はいい。だが、シアはダメだ。一度命を狙われているんです。そんな相手に会わせられるわけないだろう!」


「わかっている…。」

ヴァンシルがアイシアの手を握っている反対の手で、疲れた様に顔を覆って俯いた。

「私だって会わせたくない。ただ、闇魔法で操作されていただけだと言うことも考えられる。今は傍に侍女のカミラはいない。ベッドの上にいる母に何かできるわけでもない。」


「…わかりました…。」

「シア!!」


叫んだルーファスにアイシアは安心させるように笑顔を見せる。


「お会いします。私も聞きたいことがありますし…。」

「すまない…。二人の事は私が守る。」

ヴァンシルはギュッとアイシアを抱きしめると、ため息をついた。


「早く正式に結婚を申し込みたいのにな…。」

「…な…っ!」


ブワッと顔を赤くするアイシアの髪を、ヴァンシルは愛おし気に撫でた。

「明日、部屋まで迎えに行く。母上に会って、全てを明らかにしよう。」

「はい…。」


侍女に案内されて、アイシアはとルーファスは隣り合う客室へ案内された。

ふと、アイシアは思う。

「本当なら客室ではなく、ルーファス様の私室が王城に用意されてしかるべきですよね…。」

その言葉に、ルーファスはフッと笑う。  


「僕はこの城に住んだことは一度もないからね。住みたいとも思わないけど。僕が居たい場所はここじゃない。第二王子なんて名ばかりだよ。僕はこの国に興味もないし、この国の為に生きるつもりもない。僕の生きる意味は一つだけだから。」

「生きる意味…?」

「知らなくていいよ。シアは。大丈夫、怖いことでも酷いことでもないから。おやすみ、疲れただろう?ゆっくり休んで。」


扉の前でルーファスと別れると、アイシアは侍女にお茶を入れてもらう。

お湯の準備をされて、体を清めるとスッキリした。

知らないうちに疲れが溜まっていたようだ。

準備されたナイトドレスを着ると、脱いだドレスのポケットに手を入れ、セラフィーヌに貰った魔力回復薬と、ルーファスから貰った魔石を取り出す。

もう何度もこの魔石に命を救われている。

聖魔法士だからと、攻撃魔法が出来ないばかりに、守ってもらってばっかりだ。

私も大切なものを守りたい。

トルソーに準備されている明日着る予定のドレスのポケットに魔石と薬を入れた。


明日、王妃と会った時。ルーファス様は大丈夫かしら?

ずっと命を狙われていたのはルーファス様の方だ。

赤黒い毒々しい色をした王妃の魔力の色は、確かに闇魔法にかけられていることを意味する。

精神操作されていたのなら、罪に問うことは難しいのかもしれない。

でも…全てがそうだとは思えない。


聡明な王妃…。

私に話している時、彼女は操られているようには見えなかった。

なぜあれほどルーファス様を憎むの?

なぜ、私を排除しようとするのだろう。


その答えは明日わかるはず…。



ーーーーーーーーーーーー


闇魔法の気配がする…。


隣の部屋のベッドで横になっていたルーファスは、気配を感じて体を起こした。


国に逃げたわけではなかった。

それとも移動魔法で戻ってきたのか?

いや、ゲートを使うと、魔力の強い流れを感じるはずだ。

今は何も感じなかった。

ずっと城にいたのかもしれない…。


なぜ、いる?

何のためにここにいるんだ。

王弟のゴーレムと違ってカミラはただの間者だ。


見つかれば拷問の末、すぐに殺される。

一度逃げているからなおさら、警備は厳重になり、二度と逃げることなど出来ないだろう。

何か目的があるのか。


ルーファスは意識を集中するが、魔力は微弱で場所まではわからない。

ただ、この王城の中にカミラがいるのは間違いない…。

こんな微弱な魔力で移動魔法が使えたというのか?


いや。

そもそも移動魔法など使っていなかったのではないのか?

もぬけの殻になった牢を見て、闇魔法使いだから、闇魔法で逃げたと、考えたのではないのか…。

もし、彼女がこの城の中にいるのなら、油断は出来ない。


ルーファスは部屋を出ると、隣のアイシアの部屋に向かう。

部屋の前には護衛騎士が立っていて、軽く頭を下げてきた。

小さくノックをするが、返事がない。

もう、寝てしまったか。

中に、アイシアの魔力を感じるから、間違いなくちゃんと無事でいてくれている。

仕方ないがこのまま…。

騎士の見ている前でルーファスは呪文を唱えると、アイシアの部屋全体へ結界魔法をかける。


驚いた騎士に声を出さないよう合図をして、そのまま自室へ戻る。

今晩はこれで安全だ。

近くに感じた闇魔法の魔力は離れたようだった。



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