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捨て置かれた第二王子を助けたら王太子が婚約者になりました  作者: とぅーのすけ


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フェイレイ王国への帰還

手を翳す。

魔力を込めて解毒魔法をかけると、目の前の幼い少女の痣が薄くなっていく。

苦しそうだった呼吸も安定し、すぐ傍で祈るように少女の手を握っていた母親がホゥッと安堵のため息を吐いた。


「治療は終了です。体力が戻るまでは、しばらく時間がかかりますが、もう大丈夫です。」


アイシアの言葉に涙を浮かべて母親は何度も礼を言った。


アイシアは重症患者が集められていた部屋を出ると、ちょうどこちらに向かって歩いていたセラフィーヌ王女に気付いた。


「アイシア様!ご苦労様です。」

「セラフィーヌ様。ありがとうございます。今ちょうど、最後の患者の治療が終わりました。」


それを聞くと、セラフィーヌは嬉しそうな笑顔を見せた。

「よかった…。こちらに派遣してくださった聖魔法士の方達も、治療を終えて、今、こちらへ向かっているようです。本当に、ありがとうございました。あ、これ、魔力回復薬です。」


アイシアへ手渡された綺麗なオレンジ色の液体の入った瓶は、ガルシア帝国の北東の海の近くで栽培されているエネゲラナクスと言う魔力回復効果のある薬草で作られた薬だ。

古くから栽培が難しく量産出来ないとされていたが、ガルシア帝国はこの薬草の栽培方法を見つけ、今ではかなり潤沢に回復薬が準備できるようになったのだ。


「ありがとうございます。でも、私は魔力量がかなり多いので大丈夫ですよ?高価な薬ですし、他の方に使ってください。」

アイシアが返そうとすると、セラフィーヌは首を振った。

「いえ、使わなくても良いのです。お守り代わりにお持ちください。」


セラフィーヌの笑顔に、アイシアも笑い返すと、ではありがたく頂きます、と、ポケットに入れた。


「父も母も兄も、みんなフェイレイ王国の方にはとても感謝しております。本当に、この度はありがとうございました。」

「いえ、そんな…。でも、被害も大きかったですよね…。今後は二度とこのような事が起きないようにしないといけないわ…。私は先に王国に戻ります。」


アイシアはセラフィーヌにタンデムへの伝言と伝えると、トーア砦のルーファスのゲートへ向かう。

あれから1週間。

フェイレイ王国ではどうなっているのだろう。

逃げた侍女は見つかったのかしら?

ガルシア帝国にいる間はフェイレイ王国からの連絡はなかった。


アイシアはゲートの前に立つと、光魔法を使う。

すぐに気づいてくれるかわからないけれど…。

アイシアは迎えに来ると言ってくれたルーファスを待ちながら、近くの柵にもたれた。

ぼんやりと空を見上げていると、

「シア。」

少し低い落ち着いた声が聞こえた。


「ルーファス様…早いですね。」

「うん。ゲートの移動には慣れたから基本的にすぐに移動できるよ。」

どこか探るようにこちらを見つめるアメジストの瞳に、こちらを気遣う色が見えて、アイシアは嬉し気に笑った。

「ガルシア帝国はもう大丈夫です。王都にもどりましょう。」

「そうか。良かった。シアはよく頑張ったね。」

ポンと、アイシアの頭に手を乗せるとフッと目を細めた。


「あれから侍女は見つかったのですか?」

アイシアの問いに、ルーファスが苦い顔で首を振る。

「まだ、見つかっていない。そもそも移動魔法がつかえるなら、本国に戻っていたら探すこと等かなわないだろう。倒れた王妃は目を覚ました。兄上が尋問されたそうだ。」

「そう…なのですね…。殿下はつらい立場でしたね…。実の母を疑わなければいけないのですから。」


「とりあえず、移動しよう。兄上が話があるそうだ。」

そう言って差し出された手にアイシアは自身の手を乗せると、ギュッと力強く握られた。

アイシアは早くなる鼓動を押さえながらゲートに吸い込まれていった。




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