希望と真実
「…完治…したのか…??」
ジークフリートが唖然としたまま、呟く。
エリオットが戸惑いもなく頷くと、セラフィーヌ王女が立ち上がった。
「あの…!!その方を治療したのは、その令嬢なのでしょうか…?」
縋るようなその瞳に、ヴァンシルは少し笑顔を見せた。
「そのようだ…。」
崩れるように、セラフィーヌ王女がその場に座り込む。
ヴァンシルが王女の前に膝をついて、顔を覗き込み、涙目のセラフィーヌ王女の瞳と目を合わせる。
「彼女が目を覚ましたら会いに行こう。もしかしたら、君の母上の病気も治せるかもしれない。」
「…はい…っ!!」
希望を見出したように笑顔を見せるセラフィーヌ王女に笑って頷く。
「…兄上…、それは、シアに治療をさせるという事ですよね。
それは、シアを病が蔓延するガルシア帝国へ遣わせるという事ですか?」
ずっと黙っていたルーファスの言葉に、ヴァンシルがゆっくり振り向いた。
ヴァンシルをまっすぐに見つめるルーファスの目は冷たかった。
「ああ…。彼女しか出来ないのなら、そうするしかない。我が国はガルシア帝国と協定を結んでいる。
助力を求められたら答える義務がある。それに、これは他国の出来事ではない。我が国にも起こりうることだ。」
「…。あなたは、あくまでもこの国の王子なんですね。…わかりました…。」
その瞳からフイと目をそらすと、そのまま部屋を出ていく。
「ルーファス!!」
ヴァンシルの声が聞こえるが部屋を出ると、外にいる騎士にアイシアの場所を確認する。
廊下を急ぎ進みながら、心の中でアイシアの事だけを考える。
この国の事など、どうだっていい。
母の国がどうなろうと、どうでもいい。
シアだけだ。
シアを守るために強くなった。
今までも、これからもずっと、僕にはそれだけだ…。
その瞳には決意を秘めた強い瞳を湛えていた。
温かい…
優しい魔力…
力が回復してるわ…
右手に感じる温かさにゆっくりと目を覚ますと、心配そうに自分を見つめる深い紫の瞳が揺れていた。
「シア…。」
目を覚ましたアイシアにホッと目を細めると、良かった…と小さく息を吐いた。
「ルーファス様…魔力を分けて下さったのですね…。ありがとう…ございます…。」
アイシアの言葉に優しい笑顔で笑うと、テーブルから水をとり、アイシアに差し出す。
「起き上がれるか?」
背中に手を回して支えると、アイシアは身を任せてルーファスにもたれたまま、水を口に含んだ。
冷たくて美味しい…。
これほど魔力を一気に使ったのは初めてだわ。
魔力枯渇が危険だとはきいていたけど、こんなにゴッソリ力が抜けるのね。
ルーファス様が魔力を分けてくれなかったら、きっとしばらく動けなかった。
「大丈夫か?もう少し魔力を流すから、少し横になって。」
アイシアは言われるがままに横になると、ルーファスから流れてくる魔力を静かに受け取った。
キラキラの魔力が流れると、通常より力の回復が早い。
やっぱり、ルーファス様の魔力は特別だわ。
しばらく魔力を受け取るとアイシアの顔色が戻った。
「ありがとうございます、ルーファス様。こんなに魔力を頂いて大丈夫ですか?」
「問題ないよ。僕の魔力量は人外だからね。それより、シア、無茶しすぎだよ。」
心配の混じった不機嫌な声でルーファスは怒った顔でアイシアを見つめている。
どれだけ心配をかけたのか…。
素直にアイシアは謝ると、真剣な顔をしてルーファスに向き直った。
「ルーファス様、わかったことがあります。
神父様の症状、普通の聖魔法が効かなかった理由。
これは病ではありません。」
「病ではない?」
「はい。負の闇魔法で覆われた…毒です。」




