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捨て置かれた第二王子を助けたら王太子が婚約者になりました  作者: とぅーのすけ


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奇跡

エリオットと共に医務室へ向かったアイシアの背中を見送った後、ルーファスはジュリアスに連れられて、ヴァンシルとガルシア帝国のセラフィーヌ王女のいる応接室にいた。


「無事でよかった…。ルーファス、こちらへきて掛けてくれ。」

顔を見た瞬間ホッとしたように笑顔を見せた兄に、軽く頷くと、少し離れた椅子へ座る。

「第二王子である、ルーファスだ。ルーファス、こちらはガルシア帝国から使者として見えたセラフィーヌ王女だ。」

「お初にお目にかかります、セラフィーヌ・フォン・ガルシアと申します。」

丁寧に挨拶をするセラフィーヌに無表情のまま挨拶を返す。

「あなたがアイリーン姫のご子息ですね…。肖像画の姫とよくにてらっしゃいますね…。」

感慨深そうに呟く、セラフィーヌに小さく頷くと、ヴァンシルに話を促すように目線を移した。


「ルーファス、ドラゴンに襲われたというのは本当か?」

「ええ…。真黒のドラゴンでした。これが魔石です。少し削ってしまいましたが…。」

懐から黒い魔石を出すと、テーブルの上に置く。


ジークフリートが目を見張った。

「…これほどの大きさ…。よくぞご無事でもどられました。」

「はい。そのせいで到着が遅れましたが…。」

眉間を寄せ、険しい顔で悔しそうにつぶやくルーファスに、ジュリアスが眉を上げた。

「普通、数人がかりでも倒せるかどうかの魔物ですよ…。」

半分呆れたように答えるジュリアスに、首を傾ける。


「このドラゴンはたぶん闇魔法使いが空間移動で僕を狙って放ったものと思われます。手紙にも書きましたが、誘拐事件も闇魔法使いが関わっています。山岳地帯にいるはずのドラゴンを遣わせることが出来る事を考えると、間違いなく他国が関わっていると思われます。王妃殿下から、ノルン帝国より国交の申し出があったとアイシア嬢が聞いた様ですが本当でしょうか?」

ジークフリートが険しい顔でルーファスを見つめると、手元にあった資料をルーファスへ差し出した。

「先月、ノルン帝国の使者が来たのは間違いございません。その時、陛下は東部へ視察中だったため、王妃殿下が対応にあたったのですが、宰相のモルディール公爵様も不在で私がご一緒に使者にお会いしたのです。

ノルン帝国はこれより開国する旨と、フェイレイ王国と国交を結ぶ代わりに、王国の医療技術の継承や研究への協力を求められました。」

ヴァンシルは、事前に聞いていたようで、大きく息を吐く。

「はっきり言って、ノルン帝国と国交を結ぶメリットがわからない。」


「ノルンへ医療技術の知識や研究の協力を与え、こちらは何を得られると使者は言っているのでしょうか?」

ルーファスが疑問を口にすると、代わりにジュリアスが答えた。

「”侵略しない”その代償にそれを差し出せと。全く身勝手極まりない話です。研究で作られた珍しい食材や魔道具などは持参してきたようですがね…。」

呆れた顔で天井を仰ぎ見るジュリアスに、ジークフリートが続いた。

「正直、そのような一方的な内容は言語道断だと、王妃殿下は断ると思ったのですが、なぜか、持参された手土産品を気に入った様子で。前向きに検討すると答えたのです…。」

悔しさをにじませたジークフリードに、ルーファスはセラフィーヌ王女へ視線を向けた。


「ガルシア帝国にノルンからそんな話は来たのでしょうか?」

「…いえ…。我が国には使者は来ておりません。一か月前というと、わが国に謎のウイルスが感染拡大し始めた時期なのですが、もともとノルン帝国は信用に値しないと父ならば一蹴するでしょう…。」


昔からノルン帝国は何かわからないことを研究している謎の多い国だ。

80年以上前には、町一つを吹き飛ばすような、大爆発を起こす何かを研究していたようで、失敗に終わったのか自国で大被害をもたらしたと聞く。侵略に使うためのものだったのか、ガルシア帝国の国境近くの

村が被害に遭ったそうだ。

そんな過去があれば、間違いなくガルシア帝国からは国交は断絶されるだろう。


「今回の親交の証として、自国で研究して作られた見たこともない植物から作られたお茶や、長期保存可能な食品、土を掘り返すのに適した土魔法が付与された魔道具などを持参してきたようだ。実際使用してみると便利だが、今までで何も困ることもなかったものだ。あえて欲しいとも思わない。食品に関してもしかり…。だが、今回持参してきたもの以外に、目録に記載されたもので気になるモノが何点かあった。そのなかにあったものが万能薬だ。どんな病にも効くというが、本当にそんなものがあるのか…。」

うなるヴァンシルに、ルーファスが気づいた。

「それは…今回のウイルスに効くのでしょうか?」

「わからないのです…。万能薬が実在するのかも確かではない。今回、なぜ持参しなかったのかと問うと、この国には優秀な聖魔法士が沢山いるのだから必要ないと思ったと。」


その時、戸惑ったように、セラフィーヌ王女が声を上げた。

「あの…その万能薬、手に入れることは可能でしょうか…?出来るだけ早く、母に…国に希望を持ち帰りたいのです…。」

「…かの国を信用してよいものか…。王妃は考えると言ったが、陛下と話して検討するという意味であり、まだ、正式に国交を結ぶ約束をしたわけではないのです。それに、研究への協力というのも、内容が秘匿されていて安易に受けるわけにはいかないのです。」

心苦しそうなジークフリートの言葉に、目に見えてセラフィーヌ王女の瞳が曇った。


そのとき、部屋をノックしてエリオットが入室した。


「失礼します、殿下。」

「エリオット、アイシア嬢は…?どんな様子だった?」

「それが…お耳に入れたいことが…。」

エリオットはヴァンシルの横へ跪くと、声を押さえて報告する。


「実はアイシア嬢が倒れられました。ですが…。」

瞬間、ガタッと、ルーファスとヴァンシルが同時に立ち上がる。

「…!!」

「なんだと!?彼女は今…。」

焦ったようにアイシアの元へ駆けつけようとするヴァンシルに、エリオットは手で制す。


「落ち着いてください、殿下。大丈夫です。少し魔力を使いすぎたことによる魔力の枯渇で倒れられましたが、医者に診てもらいましたが、しばらく休めば回復するそうです。」

それを聞いて、ヴァンシルは力が抜けた様に椅子に深く座り込むと、はぁっと大きく息を吐いた。


「そうか…。」

「あの、シアは…なぜ魔力枯渇状態になったのですか?」

ルーファスは氷の様な冷たい瞳でエリオットを見つめる。

「それが…、神父の症状が改善しました。体の痣も残っておりません。医者に確認させましたが、衰弱はしているものの、体の不調はなくなっているそうです。」


「…は…??」

「完治…したのか…?」


シーンとなったその空間で、唖然とした様に皆がエリオットを見つめる。


「はい、完治しました。アイシア嬢の聖魔法が効きました。」







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