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捨て置かれた第二王子を助けたら王太子が婚約者になりました  作者: とぅーのすけ


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デビュタント

王妃に内密で会ったあの日から

あれから数か月

ヴァンシル殿下は定期的にアイシアの屋敷に、婚約者候補の家へ挨拶という名目で会いに来るようになった。

最初は警戒しいていたルーファス様も今ではどこか不機嫌ながらも二人で話すこともあるほど打ち解けたようだ。


ニコニコと二人の王子を見ながらお茶していると、何とも言えない顔をした二人がこちらを見ている。


「え?どうしました?」

キョトンとした様子のアイシアにヴァンシル殿下がため息をつく。


「気になって仕方ない。アイシア嬢、何をそんなにニコニコとこちらを見ているんだ?」

「え?見てましたか?」

「「見てた。」」

二人の王子の声が揃う。

瞬間、二人が顔を見合わせて気まずそうに目をそらす。


「フフッ。」

思わず笑ってしまったアイシアにルーファスはすねたような顔をしている。


「シア、ほんと、気になるから言って。何??」


「えー?そんなに見てました?いえ、見てましたね。フフッ。だって嬉しくて。お二人ともなんだか雰囲気が似てるっていうか…波長が合ってるっていうか。顔も体格も性格も全然違うのに、やっぱり兄弟なんだなって。」

ニコニコ嬉しそうなアイシアの表情にルーファスは少し恥ずかしそうにプイと顔を背ける。

耳が赤いのが照れてる証拠だ。


「アイシア嬢、君も一緒に交じって話そう。どうして観察に徹してるんだ。」

ふてくされたようなヴァンシル殿下も、城では見かけない素の表情で、どこかお可愛らしい。


「いえ、魔法の話ですよね。聞いていましたよ。ルーファス様の火と風、闇の魔法と、ヴァンシル殿下の水魔法、私の聖魔法があればもう怖いものなしですよ。」

明るく適当に答えるアイシアにヴァンシルもルーファスも呆れ顔だ。


良かった。

このままお二人が仲良くなってくれたら、もしかしたら、この国の未来も変わるかもしれない。

時々二人が手合わせすることもあるが、ヴァンシル殿下にルーファス様が勝ったことはない。

魔法と組み合わせるとルーファス様が勝つが、純粋に剣だけだとヴァンシル殿下の方が体格もあって相当強い。


「そうだ、アイシア嬢。もうすぐ君のデビュタントだろう。ドレスを贈りたいのだが、希望はあるか?」

デビュタント…

そうだわ。最近王妃様も静かでどこか平和ボケしてたから、自分のデビュタントをすっかり忘れていた。


「シアに…ドレスを贈るのですか…?」

ルーファス様が不思議そうに問う。

「ああ。貴族の令嬢のデビュタントは16歳だ。まもなく夜会シーズンに入る。その一番初めの夜会がデビュタントになる。もちろん…その、君にだけじゃなく、ちゃんと他の婚約者候補の三人にもそれぞれドレスは贈ったぞ。令嬢のデビュタントは婚約者やいない場合は家族がドレスを準備するものだし…。アイシア嬢の希望の工房や、形などあれば考慮して作るから、希望があれば言ってくれ。」


「…そうですか…。」

少し寂し気に見えるルーファスの様子に、ヴァンシル殿下は何を勘違いしたようだ。


「ルーファス。私に任せろ。」

「え…何を??」

「兄に任せろ。」


その後、なぜか盛大に勘違いしたヴァンシル殿下は国王に進言し、アイシアのデビュタントの夜会がルーファス殿下の初めての公式の場をなることが決定した。


「嘘だろう…何をしてくれたんだ、あの人は…。」

と、呆然としたルーファスが毎日憂鬱なため息を吐くこととなった。


夜会には王妃ももちろん出席する。

ヴァンシル殿下は、絶対にルーファスに危険が及ばないようにすると断言した。


「夜会当日は…、本来なら迎えに行きたいところだが、すまないが母上にクロエ嬢のエスコートを命じられている。」

「大丈夫ですわ。お父様にエスコートはお願いしますので。」

その時、ルーファス様が焦った様に声を上げる。

「いや、僕が…会場までエスコート…したいのだが…ダメだろうか…?」


ファーストダンスは婚約者としか踊れないため、ヴァンシル殿下と踊ることになるが、エスコートは婚約者や家族か親戚、いない場合は友人などでも良い。


「そうだな。私が行けない代わりに弟である、ルーファスに頼んだということにすれば不自然ではないだろう。すでに王も王妃も、私がルーファスと会ったことは知っているし、ルーファスが魔術師団に所属していることも周知されている。

団長であるジョゼット侯爵の代わりにエスコートしても問題ない。」


その1か月後、ジョゼット侯爵家に美しいドレスが届いた。


侍女のアンがうっとりとそのドレスを見つめる。

「さすがヴァンシル殿下ですね。この見事な刺繍と縫い付けられた真珠が美しいですわ。」

デビュタントであるクリーム色がベースになっているが、ゴールドの輝く糸で繊細に刺繍が施されていて、ドレスにさほど興味のないアイシアでさえ、見惚れてしまった。


「アイシアお嬢様、一度合わせてみましょう!」

「え…?今?」

「はい、今です!!。」

元気に帰ってきたアンの返事にこれからかかる時間を思い、覚悟を決めた。





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