第25話 昨日の敵は今日の友?
今回の探索。
個人勢と企業勢合わせて、かなりの数とは思ってはいたが、まさかこんなことになるとはな。
「よろしくお願いします。根津さん」
「配信でのご活躍、拝見しております。今日はご一緒させていただき光栄です」
「同じ前衛として、色々とご指導ご鞭撻の程よろしくお願い致します」
最近、合同の企業案件に行く先々で、敬意を表す言葉をかけられる事が多くなった。
ちなみに彼らは、うちの会社の人間ではない。
今回はクライアントの意向で、10人前後でパーティを組む事となったのだが、うちは3人しかいない。
だから、数を合わせるためには他の企業勢や個人勢と組むことになった。
「こちらこそ、今日はお世話になります」
いつものように、無難な返事をする。
それにしても大所帯だな。
「ユズ、大丈夫ですか?」
浮かない顔をしてる華宮社長を気にかける潮さん。
二人は既に、いつもの制服に着替えが済んでる。
「ええ、大丈夫よ。サナとオジサンが居る限り、うちの会社は無敵よ。それよりも、御宅んところのリーダーはどうなのよ――鏡」
華宮社長は自信満々に言った。
さすが社長業を務めるだけあって、切り替えは早いようだ。
――華宮社長を曇らせた要因であり、即席で組むことになった相手側は、華宮社長と因縁のある華宮不動産。
「う、うるさい! ボクの事は放っておいてくれ!」
肝心要のリーダー、鏡さんはというと部下の見てる前だというのに落ち込んでる模様。
俺達に勝負を吹っ掛けた手前、パーティを組むことになってしまい気まずいのだろう。
ただ、それは鏡さん以外も同じらしい。
華宮不動産の連中はどうも華宮社長に対して、あからさまに余所余所しい態度を取ってる。
誰も華宮社長と目を合わせようともしないし、物理的に近づいても離れる。
無理もないか。
自社から追放した元役員にして、先代社長の娘さんとパーティを組むのだ。
追放劇に直接関わってないにしろ、色々と思うところがあるのだろう。
うーむ、パーティ内の雰囲気は、あまりよろしくないな。
これから命懸けの仕事だってのに、こんなんじゃ命がいくつあっても足りないぞ。
「あんたたち! 私の解任は、役員会議で決まった事よ。だから、あんた達が気に病んでも何もならないわ。それに私はこの通り元気だし、事業も軌道に乗ってる。大体ね、死ぬかもしれない仕事なんだから、人の事よりも自分の心配をしなさい!」
華宮社長の想いが通じたのか、華宮不動産の方々の表情が少しだけ明るくなる。
……約1名を除いて、だけど。
「ほら、リーダーのあんたがシャキっとしないと下の者がついてこないでしょうが!」
「ん? ボクは別に、お前の事なんてどうでもいい。妹に近づく害虫め! むしろ、ボクの手で駆除してやりたいよ!」
「ここまで面と向かってハッキリいわれると、怒りを通り越して清々しいわね」
「鏡さん、妹さんの親友に向かって『害虫』はないだろ」
「この世は、男女平等の時代。故に、妹に近づくものは、男だろうが女だろうが分け隔てなく排除するのがボクのモットーだ! ご理解いただけたかな?」
シスコンと元暴を混ぜたら、こんなモンスターが生まれるのかよ。
そんなんだから家から追い出されたんじゃないのか?
「オジサン……鏡はね、カノンの事が絡むと、こうなるのよ。それも今に始まったことじゃないわ。小さい時から私とカノンが遊んでると物陰から、今みたいに鬼のような形相で睨みつけてくるのよ。気持ち悪いったらありゃしない」
「情操教育に悪影響を及ぼしそうですね」
「私にとって、シスコンとストーカーという単語は、あいつから学んだようなものよ」
「もう手遅れみたいですね」
「そういうことだから、いちいち真に受けてたら、身がもたないわよ」
「華宮社長、よく今まで無事に生きてられましたね」
「当たり前じゃない。こう見えて私、小さい頃は純粋無垢で聞き分けの良い子だったんだから」
純粋無垢な子は、幼少期にシスコンとストーカーを学習しないと思うんだが。
「それにしても、どうすればスケベジジィと雌雄を決することができるのだろうか……クライアントの意向に逆らうわけにはいかないのが堅気の辛いところだ」
スケベジジィは聞き捨てならんけど、案件には真面目に取り組んでくれるってことでいいんだよな?
そもそもダンジョン探索の成果物である情報の収集率はパーティ内で共有してるため、パーティを組む以上、成果物の差で勝負をつけることができないのが実情だし。
「鏡さん、今日のところはドローってことでいいじゃないですか」
「……うーん、どこか抜け穴はないだろうか」
面倒くせえな、このガキ。
公安時代、隊長が何かと騒ぎ立てる俺を蹴り飛ばした気持ちが今ならよくわかる。




