↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

21/31

第19話 配信終了

「オジサン、デカブツの右肩を斬って。そこにコアがあるわ」


 イヤホンを通じて、華宮社長の声が聞こえた。


「その言葉、間違いないですか?」


「ええ、言ったでしょ? 私、目がいいのよ。肉眼で捉えたのは、ついさっきだけどね。でも、一目見てわかったわ。あのデカブツの右肩、他の部位と違って、やたらと振動してるし、強力な電磁波も出てるわ」


「大丈夫ですよ、根津先輩。機械系モンスターのコアは私達でいう頭脳ですので、他のパーツとは明らかに異なる挙動をするんです。ダンジョン攻略ウィキにも載ってる情報ですので、間違いありません」


「攻略ウィキってゲームかよ」


「組合のホームページからログインできますよ。リンクは、先日お渡しした入社説明会の資料にも載せてます」


「見落としてたよ。文字を見ると眠くなるもんで――」


 例の組合の情報はともかく華宮社長の目は本物。


 闇雲に戦うよりかは、幾分マシってもの。


 俺は、ボスの右腕に飛び乗り、そのまま体を伝って右肩に一太刀入れた。


 ボスの装甲自体は、豆腐のように斬れた。


 俺がつけた刀傷は、傷自体の長さは申し分ないが、傷口は人間の指が入る程度の隙間。


 もう少し切り刻みたかったが、ボスの右腕(あしば)が不安定なので飛び退く。


「カノン!」


「おっけー」


 俺と入れ替わる形で、鬼灯組長がボスの右肩に到達。


 そのまま、俺のつけた刀傷に手を突っ込むと、装甲を引っぺがした。


 ボスの右肩の中身が露わになる。


 そこには、ひと際異彩を放つ球体――コアがあった。


 ボスの図体に合わせて、大きいコア。


「あっつ!」


 ボスを構成する金属は熱伝導が高いのか、鬼灯組長がボスから離れた。


 あれじゃあ力づくでコアを引きずり出すのは至難。


「ユズっち、そろそろ薬(ヤク)が切れそう」


 火傷を負ったのか鬼灯組長は潮さんから治療を受けてる。


「大丈夫、勝機はあるから――ということでオジサン、今度はコアを斬ってきて」


「でも真っ二つってわけにはいきませんよ。コアの直径に対して、刀身が明らかに短い」


「肩につけた切り傷と同じものでいいわ。ほら、早くしないと――」


 引っぺがした装甲が徐々に元の形に戻ろうとしてる。


 装甲が熱エネルギーで柔らかくなったことも関係してるのだろう。


 ここで、つべこべ言ってもボスに利するのみ。


 俺は急いで、ボスの体に飛び乗った。


 熱い!


 熱気なんて生易しいものじゃない。


 こんなところに長居したら熱中症どころの話じゃない。


 熱さを堪えつつ、ボスの体を伝って、閉じかけてた装甲を切り落とし、二の太刀で肩にあるコアに傷をつけた。


 あわよくばコアを細切れに、と思ったが、ボスが体中から放つ熱と蒸気のせいで、立っていられなくなった。


 ボスから離れて、皮膚がむき出しの顔がひんやりとする。


 その時だった――紐がコアに伸びて、そのままくっ付いた。


 そうか!


 脳裏によぎったのは、俺の失態で落とし穴に落ちた時に釣り上げてもらったシーン。


 おそらくムチの先端に、機械のパーツから作った釣り針のようなものをくっ付けて、刀傷に引っかけたんだ。


「コアにかかったわ。カノン!」


「よーし――ンギギギギ」


 ボスの腕に乗っかってる二人がムチを引っ張る。


 コアがせり出す。


 程なくして、ボスの右肩からコアがズルっと抜けた。


 後は、あれを斬っちまえば。


 俺は、コアの落下予測地点に向かって、駆け出した。


 ――が、コアを取り零すまいとしたボスの手が伸びた。


「ゴメン、もう薬(やく)が切れた」


「オジサン、何としてでもコアを真っ二つにして!」


 くそっ!


 このままじゃ、せっかく引き抜いたコアが落ちる前にキャッチされちまう。


 鬼桜の投擲――はダメだ。


 俺の手から離れたら、ただの業物になっちまう。


 何より、コアに刀が突き刺さったとしても、致命傷にはならないだろう。


「やあああああああ!」


 ガラにもなく頭をフル回転させてると、潮さんの勇ましい叫び声が聞こえた。


 同時に、落下中のコアに高速で飛来する物体が直撃した。


 潮さんが投げたメイスが命中したのだろう。


 おかげで、僅かだが落下の軌道がズレたようだ。


 その結果、コアはボスの指先に当たり、取り零した。


「ふう、当たって良かったです。根津先輩!」


「ああ!」


 落下予測地点に到達。


 そして、コアを細切れにした。


 次の瞬間、ボスの巨体がピタリと止まると、強い輝きを放ち、光と共に消えた。


 入れ替わるようにキーストーンが忽然と出てきた。


「カノン、ほら起きて。ボスは倒したよ」


「うーん、あと5分だけ」


「体が痛いだけでしょ、早くしないとオジサンがキーストーンを切っちゃうわよ」


「人聞きの悪いことを言わないでください。俺は、キーストーンに触れてませんよ」


 鬼灯組長はフラフラとよろめきつつもキーストーンを拾い上げた。


「みんな、こっちに来て――よーし、揃ったわね。無事、ボスを撃破できたので、本日の配信はこれで終わります。ご視聴ありがとうございました。まだの方はチャンネル登録といいねボタンをお願いします。ではまた次回、それではー」


 こうして、俺の初配信は幕を閉じた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。