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第18話 巨大ロボ戦

 鬼桜を両手で握りしめてから、敵陣の奥深くに斬り込む。


 向かってくる機械どもを斬って、斬って、斬り伏せて、ようやくボスの側まで辿り着いた。


 相も変わらず『デカい』という他は無い。


 ドラムの大きさが2メートルから3メートルくらいだから、こいつはその5、6倍はある。


 全身を確かめようとすれば、首を痛めそうだ。


 外観は、鈍重なロボット。鉄巨人がしっくりくる。


 四肢と胴体が大昔の合体ロボットのように、大きくて太い。


 鬼桜の刀身では、一太刀で真っ二つにすることは叶わないだろう。


 腕にはいくつもの砲身が搭載されており、背中から伸びてると思しき蒸気排出管からはスモークマシンのように白い蒸気が勢いよく噴出してる。


 他にも何か仕掛けがありそうな、ごついユニットが肩越しに見える。


 鉄巨人(ボス)を後衛抜きで相手するのは骨が折れそうだな。


 目につく武装だけでも、遠近どちらも隙が無い。


 こうなったらボスの攻撃を掻い潜りながら、雑魚共の数を減らすことに注力しよう。


 戦艦のようなボスの腕が、俺に狙いを定めたようだ。


 射線を切るため、即座に飛び退く。


 直後、轟音が鳴り、爆風を浴びた。


 すぐ側に着弾したようだ。


 当たれば、ひとたまりもないのは想像に難くない。


 だが、あのタイプは照準を合わせるまでの時間が遅いため、警戒を怠らなければ、問題無い。


 何せあれだけのデカブツを蒸気と歯車で駆動させてるおかげで、一挙手一投足が騒々しい。


 だから、音が止まった瞬間に回避行動を取るだけで射線を切れる。


 踵を返し、ボスの射線に注意を払いつつ、雑魚共を片っ端から斬り伏せた。


 斬っても、斬っても、絶え間なくに襲ってくる機械どもに辟易しながらも、ボスに目を向ける。


 腕の砲口(マズル)と目が合う。


 射線を確認し、回避行動に移る瞬間――突然、ボスの腕が明後日の方向に向いた。


 どこからともなく高速で飛んできた、人型ロボットの残骸がボスの腕に直撃したためだ。


 思いがけない出来事に一瞬、意識がそれた。


「お待たせ―」


 軽薄で気だるげな挨拶が聞こえた。


 鬼灯組長だ。


 頭に短い角が二本、生えてるけど間違いない。


 彼女は薄笑いを浮かべながら、素手でドラムの装甲を引きはがし、コアを引き抜き、両手で握りつぶした。


 そして文字通り、機械どもをちぎっては投げ、ちぎっては投げて、俺のすぐ側まで来た。


「それにしてもさー、凄いね。本当に一人でこいつらを相手にして、平気な顔してんだもん」


「俺の場合は年の功ですよ。それよりも数は大分減らしたとはいえ、敵陣を真正面から突っ切ってくる鬼灯組長には恐れ入ります」


「うひひ、凄いでしょー」


「それと角、似合ってますね」


「ま、まあね。可愛いっしょ」


「そうですね。俺の友人に、覚醒すると狼人間に変身する奴がいるんですが、そいつに比べたら大分可愛げがありますよ」


「――ッ!」


 鬼灯組長は俺の背後に回った。


 その直後、背中に温かいものを感じた。


「カイちん、ちょっち数多いから寄りかかるねー」


「カイちん?」


 と疑問を口にした瞬間、「ちょっと!? あんた達、距離近くない!? 何くっついてんの!?」とイヤホンから凄まじい声が聞こえた。


「華宮社長。これは、互いに背中を預け合っただけで、他意はないですよ」


「そーそー、ケンカで人数不利の時によくやる奴だって」


「いやほら、ねえ……背中合わせとは言え、オジサンと女子高生じゃ絵面が――」


「わかってるじゃんユズっちー、同じ絵ばかりじゃあリスナーも退屈でしょ? だから、こうして――」


「いやだから、オジサンとカノンがペアなのが危ないって――」


「なーに言ってんの、あーしとカイちんが組めば、無敵に決まってんでしょ」


「人の話を聞けよ! ジャンキーが! 薬(やく)に頭やられてんの!?」


「やられないようにするために、こうしてるだけじゃん」


「鬼灯組長、ボスの射撃は避けられますか?」


「大丈夫、大丈夫。カイちんが避けてるの見てたし、あと耳はいいから余裕よー」


「どこがよ!」


 などと話し込んでる間に、耳障りな鈍い金属音が消えた。


 俺は鬼灯組長の事を信じて、飛び退いた。


 ボスの砲弾が近くで着弾。


 爆風をモロに受ける。


 見なくても気配で鬼灯組長が無傷なのがわかる。


「カイちん、後ろはお願いねー」


「了解」


 実際、今の鬼灯組長なら、安心して背中を任せられる。


 ありがたい。


 後方を気にしなくていい分、コアの破壊に注力できるから敵の殲滅速度の向上が見込める。


「ユズっちとサナっちは、もう少し敵が減ったら来てねー」


 鬼灯組長が派手に暴れてる間に、俺は静かに速やかに粛々と職務を全うしますか。


 ボスの砲弾を掻い潜りながらも、二人が仮で機械の軍勢を全て撃破した。


 残るはボスのみとなった。


 問題はここからだ。


 機械系のモンスターはコアを破壊しないと倒せない。


 だから、装甲を剥がしたり、全身を切り刻むなりしてコアの破壊に注力する。


 俺は、改めてボスの見上げた。


 このバカデカい図体のどこにコアがあるのか。


 残念な事に、ボスに限ってコアの位置はランダムなので毎回探し当てないといけない。


 これが問題だ。



 無論、鈍重とはいえボスも動くし反撃もする。


 装甲を斬ることは容易だが、あのデカさじゃあ各部位の切断は不可能。


 人間で言えば、切り傷はつけられるが骨は切れない。


 そんな図体からコアを引きずり出し破壊する。


 それも近接要因だけで、成さねばならない。


 考えるだけで億劫になる。


『デカい』というのは、ただそれだけで脅威であることを改めて思い知らされる。


 おまけに、憤怒を主張するかのように、ボスから噴き出す蒸気の勢いが目に見えて増す。


 視界に霧がかかる。


 マズイな。


 視界が悪くてボスから離れすぎると砲身が霧で隠れて射線が切りづらくなる。


 そして、ボスという巨大な熱源のせいで、ただでさえ気温が高いのに、湿度が加わって余計に暑い。


 魔法使いでも居れば楽なんだが、無い物ねだりをしても無駄だな。


 さて、どこから斬るべきか――。

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