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明賢の物語(日本建国物語)正式版  作者: 大和草
第六章 覇権国のさらなる発展

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414話 第1クルー

第1クルー打ち上げ


第1弾クルーの人数が5名となった理由は、単なる試験飛行だからではなかった。


この飛行には、人類史上初となる宇宙常駐任務を成功させるという重大な目的がある。


そのため、宇宙飛行士を多く乗せるよりも、まずは宇宙ステーション「きぼう」が長期間安定して運用できるだけの物資を確実に送り届けることが最優先とされたのである。


宇宙軍では何度も検討が重ねられ、「人員よりも物資」という結論に達した。


どれほど優秀な宇宙飛行士が集まっても、食料や水、空気循環設備、修理部品が不足すれば長期滞在は成立しない。


そのため、第1便は「有人宇宙船」でありながら、実質的には大型補給船としての役割も兼ね備えた特殊仕様となっていた。


通常の有人宇宙船は10人乗りであり、


10席分の座席

乗員用収納スペース

長時間飛行に対応した居住区画


が装備されている。


しかし今回の飛行では事情がまったく異なった。


10名分のスペースのうち半分以上が取り外され、その場所には巨大な貨物コンテナが固定されていた。


座席はわずか5席。


その周囲には人よりも大きな貨物コンテナが積み重ねられ、船内はまるで宇宙貨物船のような光景となっていた。


宇宙飛行士たちは、狭くなった通路を身体を横にしながら移動しなければならないほどであった。


持ち込んだ主な物資


今回搬入された物資は、約半年間にわたって宇宙ステーションを維持することを目的として選定されていた。


積み込まれた物資は一つひとつ厳密に重量が計算され、限られた搭載能力を最大限活用できるよう配置されている。


主な物資は、


6か月分の食料(宇宙食パック・缶詰・冷凍保存食品・栄養ゼリー)

約1トン近い飲料水

空気生成用フィルターユニット

修理用ツールセット

小型観測装置

個人用医療キット

居住区拡張モジュールの一部部品


などであった。


食料だけでも数百種類が用意され、長期間同じ献立にならないよう配慮されている。


宇宙食パックは電子レンジ加熱にも対応し、缶詰は非常時用として長期保存可能なものが選ばれた。


冷凍保存食品は宇宙ステーションの冷凍庫へ収納され、必要に応じて解凍して使用する。


栄養ゼリーは船外活動前後の素早いエネルギー補給用として準備された。


飲料水も極めて重要な物資であった。


きぼうステーションには水再生装置が備えられていたものの、初期運用では再生効率が十分に確認されていない。


そのため、安全率を考慮し約1トン近い飲料水がコンテナへ収納された。


さらに空気生成用フィルターや二酸化炭素除去装置の交換部品も大量に積載され、生命維持装置が故障した場合にも対応できるよう備えられていた。


修理工具は一般的な工具だけではなく、


精密ドライバー

小型トルクレンチ

配線修復器具

真空対応工具

電子回路測定器


など宇宙専用品まで揃えられている。


小型観測装置も数多く積み込まれ、宇宙到着後すぐに観測を開始できる体制が整えられていた。


医療キットには外科器具や薬剤だけでなく、骨折固定具や緊急輸液装置なども含まれ、宇宙空間で起こり得る様々な事態に備えられていた。


さらに、将来予定されている居住区拡張のための構造材や接続部品まで積載されており、第1便は補給だけでなく建設資材の搬入も兼ねていた。


完成したばかりの「きぼう」は大型施設ではあったものの、多くの設備がまだ自動運転であり、消耗品の消費量も地上での予測より多いことが想定されていた。


そのため第1便は、「人を運ぶ宇宙船」というより、「宇宙補給船と有人輸送船を一体化した機体」として設計されていたのである。


打ち上げ準備


1653年春。


ブーゲンビル島宇宙センター。


夜明け直後の発射場には、海から吹き付ける穏やかな風と湿った空気が漂っていた。


早朝にもかかわらず発射場全体は慌ただしく動き続けている。


大型照明がロケット全体を照らし、多くの整備員や技術者が最後の点検を行っていた。


中型発射パッドには、補給物資を満載した有人宇宙船を載せた中型再利用ブースターが静かに立っている。


白く塗装された巨大な機体は朝日を受けて輝き、その姿はまるで一本の塔のようであった。


地上では、


燃料充填確認

配線点検

通信試験

電子機器確認

エンジン圧力確認


など数百項目に及ぶ最終チェックが同時進行で実施される。


中央管制室では数十名の管制官が各モニターを監視し、わずかな異常も見逃さないよう神経を集中させていた。


やがて搭乗時刻となり、第1クルー5名は宇宙服を身にまとって発射塔へ向かう。


大型エレベーターに乗り込み、数十メートル上にある搭乗デッキへゆっくりと上昇していく。


ガラス越しには巨大なロケットの白い機体が目前に迫り、その圧倒的な大きさに改めて息をのむ者もいた。


搭乗口付近では宇宙軍司令官が最後の言葉を贈る。


「今回の任務は、人類史上初の宇宙滞在の始まりだ。」


「諸君らが成功させる一歩が、未来の日本、そして未来の人類の宇宙開発を決める。」


「無事にきぼうを稼働させ、必ず帰還してほしい。」


5人はヘルメット越しに静かにうなずく。


その表情には揺るぎない決意が浮かんでいた。


互いに敬礼を交わした後、一人ずつ狭いエアロックをくぐり、船内へ乗り込んでいく。


打ち上げ


ハッチが閉鎖される


通信確認。


生命維持装置正常。


誘導装置正常。


すべての項目に準備完了が灯る。


中央管制室から最終許可が下りた。


発射台周辺にサイレンが鳴り響き、退避命令が発令される。


そして巨大スピーカーからカウントダウンが始まった。


10


9


8


機体下部へ大量の冷却水が一気に噴射される。


白い蒸気が発射台全体を包み込み、まるで巨大な滝が流れ落ちるかのような「水の壁」が形成された。


7


6


5


4


主エンジンがゆっくりと始動する。


低く重い振動が地面全体へ伝わり、発射塔が微かに震える。


3


2


1


点火。


一瞬の静寂のあと、轟音が島全体を揺るがした。


オレンジ色の巨大な炎が噴き出し、何千トンもの推力がロケットを押し上げる。


最初はゆっくりと。


しかし数秒後には加速度を増し、白い機体は一直線に青空へ向かって上昇していった。


発射場周辺では見送る技術者たちが静かにその姿を見守り、日本初の宇宙滞在任務がついに始まった。


上昇中のクルー


船内は物資で埋め尽くされていた。


通常なら人が歩ける通路にも貨物コンテナが固定され、自由に動ける空間はほとんどない。


宇宙飛行士たちは座席に身体を固定したまま、正面モニターへ映し出される飛行データを見つめ続けた。


「燃焼安定、加速度正常。」


「冷却系問題なし。」


「振動レベル規定内。」


「誘導誤差0.2。」


「予定軌道との差なし。」


やがて高度は100kmを突破し、窓の外から青空が消える。


黒く深い宇宙がゆっくりと姿を現した。


眼下には丸く輝く地球。


その光景を見た若い乗員が、小さく息をのんだ。


しかしすぐに視線をモニターへ戻す。


まだ任務は始まったばかりだった。


機体は予定通り地球周回軌道へ投入され、その後、静かに姿勢を変えながら「きぼう」へ向けて接近を開始した。


ドッキング


数時間後。


窓の向こうに巨大な銀白色の構造物が姿を現す。


「きぼうステーション」である。


長さ300メートルにも及ぶ巨大構造物は太陽光を反射し、漆黒の宇宙の中で静かに輝いていた。


太陽電池パネルが翼のように左右へ広がり、その中心には複数のモジュールが連結されている。


船内には一瞬だけ静寂が流れた。


誰もが、人類史上最大の宇宙施設を目の当たりにしていた。


オートドッキング装置が起動する。


有人宇宙船は姿勢を微調整しながら、ステーションの接続ポートへゆっくりと近づいていく。


数メートル。


一メートル。


数十センチ。


やがて静かな衝撃とともに、


「カチン」


という小さな金属音が船内へ響いた。


ドッキング完了。


固定ロックが作動し、機体は完全に一体化した。


続いて空気圧の調整が始まり、双方の気圧が一致するまで慎重な確認が行われる。


すべての数値が正常範囲へ収まると、最後の安全確認が実施された。


そして数分後、接続ハッチのロック解除ランプが緑色へ変わった。


第1クルー、ついに宇宙ステーションへ入室


船長がゆっくりとハッチへ手を伸ばした。


「ハッチ開放。」


静かな電子音とともにロックが解除され、厚い金属製の扉がゆっくりと開いた。


その先に広がっていたのは、人類がこれまで一度も長期間生活したことのない巨大な宇宙空間の居住施設宇宙ステーション「きぼう」の内部であった。


船長はゆっくりと身体を押し出し、無重力の中を静かに前進する。


その瞬間、人類史上初めて、巨大宇宙ステーションへ人間が正式に足を踏み入れた。


後にこの一歩は、日本の宇宙開発史だけではなく、人類史そのものを変えた瞬間として語り継がれることになる。


続いて通信士、機械主任、医療担当、総合科学班長の四名も順番に船内へ入り、全員が無事にステーションへの移乗を完了した。


内部ではすでに自動運転システムが正常に稼働していた。


天井や壁面に設置されたLED照明は一定の明るさで点灯し、居住区全体を昼間のように照らしている。


空気循環装置は絶え間なく静かな音を立てながら稼働し、新鮮な空気がゆっくりと室内を循環していた。


温度制御装置も正常に作動しており、室温は常に約24℃に保たれている。


無重力であることを除けば、内部環境は地上の建物とほとんど変わらない快適さであった。


船長は周囲を見回し、小さく頷いた。


その合図を元に、五人はすぐさま初期点検作業へ移った。


半年以上にわたり訓練を重ねてきた手順を、一つひとつ確実に実行していく。


初期作業内容


最初に行われたのは、宇宙ステーション全体の生命維持機能を完全稼働状態へ移行させることであった。


空気循環装置の本起動


試験運転状態で動いていた生命維持装置を通常運転へ切り替え、酸素濃度・二酸化炭素濃度・湿度・気圧を細かく調整する。


各区画のセンサーから送られてくる数値は正常範囲を示し、空気は計画どおり循環を始めた。


飲料水タンクへの補給作業


補給船から運び込まれた大型給水ユニットを接続し、ステーション内部の水タンクへ移送する。


飲料用、調理用、洗浄用など用途ごとに分けられた配管へ慎重に接続され、水循環システムも同時に確認された。


食料パックの収納


大量に運び込まれた宇宙食パックを、保存期間ごとに分類しながら保管庫へ収納する。


冷凍保存庫、真空保存庫、常温保存棚へと振り分けられ、半年間の生活に必要な食料が整然と並べられていく。


観測機器のオンライン化


地球観測カメラ、天体望遠鏡、各種センサーの電源を投入し、正常にデータが取得できるか確認する。


映像は即座に通信回線を通じて地上局へ送信され、すべて正常との報告が返ってきた。


非常時脱出ポッドの確認


万が一の事故に備え、全脱出ポッドの電源・姿勢制御・生命維持装置を確認する。


緊急時でも即座に使用できる状態であることが確認された。


通信装置(地上3局とのリンク)の確立


地上局と回線を接続し、常時通信体制を確立する。


映像、音声、各種センサーデータが問題なく送受信されることを確認し、きぼうステーションは正式な運用状態へ移行した。


補給船に積み込まれていた大量の物資も、順番に各モジュールへ運び込まれていく。


無重力下では重量こそ感じないものの、大型コンテナは慣性が大きく、一度動き始めると簡単には止まらない。


五人は互いに声を掛け合いながら慎重にコンテナを誘導し、所定の保管区画へ固定していった。


宇宙空間での作業には、地上とはまったく異なる慎重さが求められていた。


宇宙ステーション運用開始


補給船のドッキングから数時間後。


すべての初期作業を終えた第1クルーは、最後のチェックリストを確認する。


環境制御、電力供給、通信、観測設備、生命維持装置。


すべての項目に「正常」の表示が並んでいた。


船長は深く息をつき、静かに言った。


「これより、きぼうステーションの本格運用を開始する。」


その瞬間、人類初となる本格的な大型宇宙ステーションの運営が正式に始まった。


ステーションからの初通信


通信室中央に設置された大型モニターが点灯し、メインの地上局が同時に映し出される。


羽合地上局。


琉球地上局。


フロリダ地上局。


三地点すべてとの通信状態は良好であった。


船長は通信マイクを手に取り、ゆっくりと言葉を発する。


「こちら、きぼうステーション第1クルー。ステーションは稼働状態へ入りました。モジュール接続部、環境制御、電力供給、通信設備、生命維持装置、すべて正常です。現在より正式運用を開始します。」


数秒後、羽合地上局から返答が届く。


「こちら羽合地上局。きぼうからの初通信を確認した。全システム正常を受信。きぼう宇宙ステーションは正式に運用開始とする。第1クルー全員、本当にご苦労だった。」


通信室には静かな拍手が起こる。


五人は互いに顔を見合わせ、小さく笑みを浮かべながら固く握手を交わした。


それは長年の訓練と努力が実を結んだ瞬間でもあった。


大型タンクへ補給された水は、水循環システムへ接続される。


飲料、調理、洗浄など用途別に供給され、再生装置と連携することで長期間の滞在を支える基盤となった。


これにより、半年分の生活用水が確保された。


予備酸素・フィルター


環境制御モジュール内の専用ラックへ格納され、交換手順も確認された。


酸素濃度、湿度、温度は自動制御され、万一の故障にも対応できるよう予備装置も待機状態となる。


科学機材・修理工具


観測機器、各種測定器、修理工具、宇宙服部品、予備バッテリーなどは実験室モジュールと外部作業ロッカーへ収納された。


すべての工具は固定され、無重力でも飛散しないよう管理されている。


実験モジュール


無重力試験装置 起動確認


遠隔観測センサー 正常


放射線計測装置 校正完了


今後行われる数多くの科学実験に向け、万全の状態が整えられた。


外部機器・ソーラーパネル


パネル展開角制御 正常


外壁監視カメラ 正常


姿勢制御装置、リアクションホイール 点検完了


発電量も計画値どおりであり、巨大ステーション全体へ有り余るほどの電力が供給され続けた。


こうして宇宙ステーション「きぼう」は完全な安定運用状態へ入り、第1クルーは予定どおり約一週間にわたり生活しながら各種設備の最終確認と運用試験を続けることとなった。

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