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明賢の物語(日本建国物語)正式版  作者: 大和草
第六章 覇権国のさらなる発展

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371話 月面6日目

月面滞在 6日目


月面で迎える六日目。


そして最後の朝。


住居モジュールの照明がゆっくりと点灯し、静かな機械音だけが室内に響いていた。


窓の外には、六日間見続けた灰色の大地がどこまでも広がっている。


六日間という短い期間だったが、そこには数年分にも匹敵する研究成果が詰まっていた。


橘は静かにモニターを見つめる。


橘


「もう最終日か。」


「長かったようで短かったな。」


進藤は頷く。


「やることが多すぎて、六日なんてあっという間ですね。」


橘は今日の予定を確認する。


「今日の任務は一つ。」


「撤収のための総点検と、月面基地の完全シャットダウンだ。」


三人は最後の朝食を済ませ、静かに宇宙服を身に着け始めた。


ヘルメット。


生命維持装置。


通信機。


酸素残量。


一つずつ確認し、減圧区画へ向かう。


やがて外部ハッチが開き、三人は最後の月面活動へ踏み出した。


すべてのセンサー・観測機器の再点検


住居モジュールの外には、六日前とはまったく違う景色が広がっていた。


静かな月面には、彼ら自身の手で設置した観測機器が並んでいる。


それぞれが無人のまま、淡々と観測を続けていた。


橘


「まずは全部確認する。」


三人は手分けして各装置を巡回していく。


最初に向かったのは月震計。


保護カバーを開き、内部診断画面を確認する。


記録容量。


電源。


通信。


すべて正常。


六日間に記録されたデータも失われることなく保存されていた。


進藤


「異常なし。」


「観測継続中。」


放射線観測塔


次は放射線観測装置。


太陽電池は問題なく発電し、バッテリーも活動していた。


センサー窓に付着したレゴリスだけを軽く払い落とす。


地中レーダー端末


橘は地中レーダー装置を点検する。


アンテナを動作確認し、試験照射を一度実施。


正常な反射波が返ってきた。


モニターには異常なしの表示。


橘


「問題ない。」


通信ビーコン


昨日まで何度も使った通信ビーコン。


アンテナは正確に地球方向を向いていた。


送信テスト。


受信テスト。


どちらも正常。


進藤


「通信強度も落ちていません。」


温度・観測ポール


月面に立つ細い観測ポール。


温度計。


熱流束計。


真空環境センサー。


すべて正常。


データはリアルタイムで基地へ送られ続けている。


月面塵帯電観測器


レゴリスがどの程度静電気を帯びるか。


その観測装置も正常だった。


長谷川


「このデータは絶対必要だ。」


長距離通信ブースターアンテナ


最後は大型アンテナ。


駆動部。


固定アンカー。


ソーラーパネル。


通信装置。


すべて異常なし。


橘


「全観測機器。」


「正常稼働を確認。」


「完璧だ。」


三人は静かに頷いた。


進藤


「次の探査隊が来る頃には、これら全部が貴重な基礎資料になっているはずです。」


長谷川は各装置に取り付けられた小さなプレートを見つめる。


そこには日本語で、『日本月面探査隊 第1次設置』という識別タグが刻まれていた。


未来の探査隊へ残された、小さな道しるべだった。


生活モジュールの整理整頓


屋外点検を終えた三人は、住居モジュールへ戻る。


減圧区画を通り、室内へ入ると宇宙服を順番に脱いでいく。


住居モジュールには、六日間生活した跡が残っていた。


机の上には記録端末。


使用した計測器。


空になった宇宙食の包装。


サンプルケース。


分析器具。


整然としているとはいえ、出発時と比べれば生活感が生まれている。


橘


「全部元に戻す。」


三人は黙々と片付けを始めた。


まず生活物資を確認する。


工具。


医療用品。


予備部品。


食料。


一つずつ在庫表と照らし合わせ、ストレージへ収納していく。


長谷川


「工具、全部そろってる。」


進藤


「医療品も欠品なし。」


続いて不要物を仕分ける。


使用済み包装。


消耗品。


交換した部品。


清掃クロス。


すべて専用の回収バッグへ入れていく。


将来の月面環境保全のため、不要物を残さないことも重要な任務だった。


宇宙食の残量確認も行われる。


未使用品。


予備食。


非常食。


数量を確認し、帰還船へ積み込む箱へ収納した。


電子機器も順番に停止する。


携帯端末。


分析装置。


予備通信機。


充電器。


すべて電源を切り、バッテリーを抜いて保管ケースへ収める。


最後は住居モジュール内部の清掃だった。


床。


机。


収納棚。


寝台。


空気循環フィルター。


専用クリーンパッドで丁寧に拭き上げていく。


六日前、誰も使ったことのなかったこの部屋は、再び新品同様の状態へ戻っていった。


橘


「よし。」


「これで問題ない。」


最後に生命維持装置の運転モードを変更する。


内部の空気を回収装置へ送り、酸素と窒素を専用ボンベへ回収していく。


圧力計が少しずつ下がる。


1気圧。


0.8。


0.6。


0.3。


モジュール内部は、研究保存状態へ移行するため、真空に近い環境へとゆっくり戻されていった。


進藤


「残留空気、回収完了。」


長谷川


「これで帰還後も、内部環境をそのまま調査できる。」


モジュールのシャットダウン


すべての点検項目が終了し、最終チェックリストには一つずつ緑色の完了表示が灯っていく。


橘は中央コンソールの前に立ち、ゆっくりと周囲を見回した。


わずか六日間。


しかし、この小さな住居モジュールは、人類が初めて月面で生活した「家」となった場所だった。


白い壁面には、収納ラック。

実験器具を並べた机。

寝台モジュール。


長谷川が言う。


「最初に入った時は、本当にここで生活できるのか半信半疑だったな。」


進藤は苦笑した。


「今じゃ普通に家みたいに感じます。六日しかいなかったとは思えないですね。」


橘も小さく笑う。


「それだけ順調だったということだ。」


しばらく三人は黙ったまま、室内を見渡していた。


加圧区画には生命維持装置の送風音だけが響いている。


照明が消えていく


橘は照明制御盤へ手を伸ばす。


「居住区照明、停止。」


カチッ。


寝室区画の照明が消える。


「中央照明、非常灯モード。」


最後に残った主照明もゆっくりと明るさを落とし、モジュール内は非常灯だけが淡く照らす空間となった。


数分前まで人が生活していた空間が、少しずつ静かな機械へ戻っていく。


機械音が少しずつ消えていく。


最終確認


進藤が各装置を見回る。


「冷却系停止。」


「給水系停止。」


「生活区画異常なし。」


長谷川も確認を終える。


「通信装置、待機モード移行。」


「太陽光パネル、自動維持運転。」


「バッテリー残量、良好。」


橘はチェックリストへ最後の印を付けた。


「モジュール、無人運用状態へ移行。」


住居モジュールは完全に自律運転へ切り替わった。


橘は静かにモジュールの中央へ立ち、周囲をもう一度見渡した。


「これで、このモジュールとはしばらくお別れだ。」


長谷川も壁へ軽く手を当てる。


「ありがとう。」


進藤も頷いた。


「次に来る隊員たちの家として。」


三人は最後に室内を一周し、忘れ物がないことを確認する。


荷物の搬出


ゴミ袋は用途別に分けられ、専用の廃棄カプセルへ収納される。


使用済みフィルター。


実験用消耗品。


食料容器。


不要となった包装材。


さらに、六日間で採取した大量のサンプルケースも慎重にコンテナへ収められる。


レゴリス。


岩石。


地中サンプル。


氷成分。


それぞれ番号を確認しながら固定していく。


長谷川が確認する。


「サンプル全二十五ケース。」


「固定完了。」


減圧が始まる。


空気がゆっくり排出され、気圧計の針が下がっていく。


やがて外気圧との差がゼロになる。


「外気ハッチ、開放。」


静かにハッチが開き、再び灰色の世界が姿を現した。


外ではローバーが静かに待っていた。


太陽光を受け、白銀色の車体がゆっくりと輝く。


六日間、彼らの足となって走り続けた車両だった。


橘は軽く車体を叩く。


「最後まで頼むぞ。」


三人は荷物を積み込み、固定ベルトを締める。


最後の荷物まで積み終えると、ローバーは静かに発進した。


ローバーはゆっくりと月面を走る。


車輪の後ろには、六日前とは違う新しい轍が刻まれていく。


3人はこの景色を目に焼き付けていた。


やがて宇宙船が見えてくる。


光を反射する船体は、静かに彼らの帰還を待っていた。


ローバーを停止させると、三人は荷物を一つずつ降ろし始める。


採取したサンプル。


観測データ。


記録媒体。


実験装置。


慎重に貨物室へ収納し、固定具で確実に固定する。


橘が最後に貨物リストを確認した。


「全貨物積載完了。」


「忘れ物なし。」


ハッチが開く。


一人ずつ乗り込む。


進藤。


長谷川。


最後に橘が乗り込む前、ゆっくりと振り返った。


そこには、日本の旗。


ローバーが刻んだ轍。


六日間動き続けた観測装置。


静かに待機を続ける住居モジュール。


そして、誰も歩いたことのなかった月面に残る、三人の足跡。


橘はしばらく黙ってその景色を見つめた。


「また必ず戻ってくる。」


その一言だけを残し、ゆっくりと宇宙船へ乗り込む。


ハッチが閉まる。


重いロック音が船内へ響いた。


減圧区画には空気が満たされ、気圧計がゆっくりと上昇していく。


三人はヘルメットを外し、互いの顔を見て静かに笑った。


六日間にわたる月面滞在。


人類初の月面基地運用。


その歴史的任務は、完遂された。

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