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明賢の物語(日本建国物語)正式版  作者: 大和草
第六章 覇権国のさらなる発展

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367話 月面2日目

月面滞在 2日目


月面の夜明けとともに、住居モジュール外壁いっぱいに展開された太陽光パネルへ、強い太陽光が降り注ぎ始めた。


静かな電子音とともに発電量が上昇していく。


ピッ。


ピピッ。


制御盤には発電状況が次々と表示された。


太陽光発電 最大出力到達


リチウムイオン蓄電池充電 正常


基地電力 安定供給中


住居モジュール内部では、夜間モードだった照明が自動的に昼間モードへ切り替わる。


暗く暖色系だった照明は白色光となり、室内全体を明るく照らした。


空調装置も昼間設定へ移行し、静かな送風音だけが室内に響く。


橘は寝台から起き上がり、壁面の時計へ目を向けた。


「月面滞在二日目。」


「作業を開始する。」


長谷川もゆっくり起き上がる。


「よく眠れたな。」


進藤は笑いながら答えた。


「重力が軽いせいか、身体の疲れがほとんど残っていない。」


三人は順番に洗面ユニットで身支度を整え、簡単な健康チェックを行う。


脈拍。


血圧。


体温。


酸素飽和度。


低重力環境での体調変化も重要な研究対象であるため、数値はすべて記録端末へ入力された。


橘が確認する。


「三名とも異常なし。」


「健康状態良好。」


その後、朝食用の保存食が準備された。


温められたスープ。


保存食品。


卵料理風ペースト。


果物ゼリー。


栄養飲料。


昨日よりも落ち着いた雰囲気で食卓を囲む。


長谷川が笑う。


「昨日は正直、緊張して味なんて分からなかった。」


進藤も頷いた。


「今日はちゃんと食べられそうだ。」


橘は端末を開き、今日の予定表を表示した。


「二日目は月の科学の日だ。」


「基地そのものの性能確認よりも、月という環境を徹底的に調べる。」


「今日一日で得られるデータは、今後何十年分もの研究の基礎になる。」


三人は静かに頷いた。


モジュール内での科学実験


居住区の奥にある実験室は、昨日まで電源を落としていた各装置がすでに起動を終えていた。


壁一面には分析装置が並び、中央には複数の実験台が配置されている。


長谷川は室内を見回した。


「ここだけ見ると、大学の研究室と変わらないな。」


進藤は笑った。


「違うのは窓の外が月面ってことだけだ。」


橘は実験一覧を読み上げる。


「生物実験。」


「材料科学。」


「レゴリス分析。」


「真空環境実験。」


「低重力データ取得。」


生物実験


進藤は実験ラックから透明な培養ケースを取り出した。


ケースの中には、厳重に保存されていた植物の種子が並んでいる。


イネ。


大豆。


小麦。


野菜類。


さらに細胞培養用カプセルも収納されていた。


進藤は慎重に装置へセットしていく。


「実験開始。」


「温度設定25度。」


「湿度60パーセント。」


「酸素濃度正常。」


ケース内部へ少量の水分が供給される。


種子は少しずつ水を吸収し始めた。


橘はモニターを見つめる。


「月面重力では細胞分裂速度も変わる可能性がある。」


「発芽速度。」


「根の伸び方。」


「重力方向の認識。」


「全部重要な研究だ。」


長谷川は映像を記録しながら言った。


「この映像も全部歴史資料になる。」


金属・鉱物反応実験


別の実験台では、昨日採取した月面レゴリスが分析皿へ移されていた。


灰色の細かな粒子が照明を受けて鈍く光る。


進藤は分析棒で軽くかき混ぜる。


「粒子が細かい。」


「予想以上に乾燥している。」


「静電気で器具にも付着しやすい。」


分析装置へ少量投入し、粒径分布を測定する。


続いて各種材料を並べる。


耐熱合金。


アルミニウム。


チタン。


特殊樹脂。


耐放射線コーティング材。


一枚ずつレゴリスと接触させ、変化を観察していく。


橘は結果を読み上げる。


「腐食反応なし。」


「摩耗開始までの時間を計測。」


「静電付着量も記録。」


進藤が小さく頷いた。


「将来の月面車両や基地建設には欠かせないデータだ。」


真空環境での材料実験


実験室奥では、小型真空チャンバーが起動していた。


長谷川が試験片をセットする。


金属板。


耐熱ガラス。


特殊樹脂。


シール材。


一つずつ内部へ固定する。


橘が操作する。


「加熱開始。」


ヒーター温度が徐々に上昇していく。


モニターには膨張率がリアルタイムで表示される。


進藤は画面を見ながら記録する。


「地球では空気が影響する。」


「ここでは完全真空だ。」


「純粋な材料特性が測定できる。」


長谷川は感心したように呟く。


「こんな実験、月でしかできないな。」


船外操作実験


午後になると、三人は中央操作室へ移動した。


今日は船外活動ではない。


住居モジュール外壁に設置された遠隔操作アームを使い、船内から宇宙空間での実験を行う。


橘は操作席へ座る。


「船外操作システム起動。」


画面には外部カメラ映像が表示される。


モジュールの外壁。


静かな月面。


その先には真っ黒な宇宙。


伸縮アームがゆっくりと展開されていく。


宇宙放射線曝露実験


アーム先端には密閉ケースが取り付けられていた。


橘が解除スイッチを押す。


ケースがゆっくり開き、試験用材料が宇宙空間へ露出する。


金属板。


電子基板。


樹脂。


配線材。


それぞれが固定された状態で、宇宙放射線へさらされる。


橘は言う。


「宇宙放射線は地球とは比較にならない。」


「長期間浴びれば材料も電子機器も劣化する。」


「その速度を知ることが重要なんだ。」


進藤は放射線量モニターを見る。


「線量計正常。」


「データ送信開始。」


リアルタイムで地球へ送られていく。


太陽風曝露実験


続いてアームがゆっくり回転する。


試験片が太陽方向へ向けられた。


長谷川は画面を見ながら言う。


「真正面から太陽風を受ける。」


「電子部品の寿命にも関係してくる。」


橘は操作を続ける。


「将来の宇宙船。」


「月面基地。」


「全部このデータが基礎になる。」


微小隕石衝突検知装置


最後に、外壁へ設置された検知パネルを起動する。


薄い金属板の裏には、極めて高感度な振動センサーが組み込まれていた。


進藤が説明する。


「宇宙では砂粒ほどの隕石でも高速で飛んでくる。」


「当たれば銃弾並みのエネルギーになる。」


長谷川が画面を拡大する。


「だから基地の外壁設計にも必要なんだ。」


橘はゆっくり頷いた。


「月面での暮らしは始まったばかりだ。」


「だが今日集めるデータが、未来の人々を守ることになる。」


月面からの高解像度観測


午後の科学実験を終えた3人は、住居モジュール中央に設けられた観測区画へ移動した。


そこには折り畳まれた状態で固定されていた、大型の高解像度望遠観測ユニットが設置されている。


有人月面計画のために新たに開発された装置で、可視光だけでなく赤外線・近紫外線による観測も可能だった。


橘は固定ロックを解除し、ゆっくりと観測装置を起こしていく。


「固定解除。」


ガチッ。


重厚な音を立てながら支柱が立ち上がる。


続いて観測鏡筒が静かに展開され、窓の外、黒い宇宙空間へ向かってゆっくりと姿勢を変えていく。


進藤は電源パネルを確認した。


「観測装置、起動。」


ピッ。


ピピッ。


表示灯が一つずつ青く点灯していく。


長谷川は横の操作卓に座り、各センサーの初期値を読み上げた。


「姿勢制御正常。」


「冷却系統正常。」


「観測レンズ温度、安定。」


「赤外線センサー起動確認。」


橘は小さく頷く。


「よし。地球観測を開始する。」


ゆっくりと観測装置が回転し、黒い宇宙の中に浮かぶ青い惑星を捉えた。


巨大なモニターいっぱいに、美しい地球の姿が映し出される。


青い海。


白く流れる雲。


褐色の大陸。


そして漆黒の宇宙。


長谷川は思わず小さく呟く。


「すごい。」


進藤も画面から目を離せない。


「月から見る地球は、こんなにも青いのか。」


橘は静かに観測モードを切り替えた。


「倍率を上げる。」


画面がゆっくりと拡大される。


太平洋が大きく映り、その縁には日本列島が細く伸びていた。


さらに倍率を上げる。


白い雲の帯がゆっくりと移動している様子まで確認できる。


今回の目的は、単に地球を見ることではない。


月面から長期間観測した場合、気象情報や海流変化をどこまで把握できるか。


将来、月を観測基地として利用できるかどうかを調べる重要な試験だった。


橘は記録装置を操作する。


「保存開始。」


長谷川も続ける。


「映像、録画開始。」


進藤は通信端末からデータ送信準備を行った。


「リアルタイム送信、スタンバイ。」


望遠鏡は次々と観測モードを切り替える。


可視光。


赤外線。


紫外線。


それぞれの映像が別々の画面に表示され、地球の状態が詳細に映し出されていく。


「赤外線画像表示。」


モニターには、海面温度の違いが色分けされて現れた。


暖流。


寒流。


巨大な雲の発達。


研究者たちが欲していた情報が、月から直接送られてくる。


長谷川は思わず笑みを浮かべた。


「地球観測衛星とは、また違う角度のデータになる。」


進藤も画面を見つめる。


「気象予測にも役立つかもしれないね。」


橘はさらに望遠鏡の向きを微調整した。


「日本列島を中心に観測。」


画面には列島全体が映る。


山脈。


海岸線。


太平洋上の雲。


その全てが鮮明だった。


「この解像度なら、大型台風の発達も早い段階で追える。」


「将来は、月から地球を監視する時代が来るかもしれない。」


送信開始。


進藤が通信キーを押す。


「データ送信。」


アンテナが地球へ向けて固定される。


数秒後。


羽合宇宙センター。


巨大モニターに月から送られてきた映像が映し出された。


「受信成功!」


「画像正常!」


「データ欠損なし!」


研究員たちは一斉に画面へ集まる。


「これは凄い。」


「月からここまで鮮明に見えるとは。」


「雲の動きまで解析できる!」


「地球観測の歴史が変わるぞ。」


歓声が管制室いっぱいに響いた。


2日目夜 地球への報告


夕食を終えた3人は、住居モジュール中央の通信卓へ集まった。


一日の実験データはすべて整理され、送信待機状態になっている。


橘は通信マイクを手に取り、ゆっくりと送信ボタンを押した。


「こちら月面第1班。」


わずかな遅延を挟み、通信回線が地球へ接続される。


「本日の実験・調査はすべて成功。」


「通信設備、正常。」


「地球観測データの送信も完了した。」


橘は報告を続ける。


「明日は船外活動服を着用し、ローバーによる広域探査を開始する。」


「予定地点まで移動し、岩石採取および追加観測を実施する。」


「以上、2日目終了報告。」


数秒後、羽合宇宙センターから応答が届いた。


『こちら羽合。』


『全データ正常受信。』


『各装置の状態も確認した。』


『本日の成果は期待以上だ。』


管制官は穏やかな声で続けた。


『君たちの作業が、未来の月面基地建設に直結する。』


『焦らず、安全第一で任務を続けてほしい。』


『明日の広域探査も期待している。』


橘は静かに答えた。


「了解。」


「こちら月面班。」


「明日も任務を継続する。」

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