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明賢の物語(日本建国物語)正式版  作者: 大和草
第六章 覇権国のさらなる発展

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365話 住居モジュール

住居モジュール内部へ足を踏み入れた三人は、まず中央区画に設置された主制御コンソールの前へ集まった。


室内は非常灯だけが点灯しているため、白い壁や設備は薄暗い輪郭だけを見せている。


生命維持装置の待機ランプだけが、静かに緑色の光を点滅させていた。


橘は中央操作盤を見渡しながら言う。


「まずは主電源を立ち上げる。」


進藤が端末を確認する。


「予備電源動作正常。」


「蓄電池残量95パーセント。」


「太陽光パネルからの入力も安定しています。」


長谷川はカメラを構え、操作の一部始終を記録し始めた。


「月面基地、初起動。」


「映像記録開始。」


橘は主電源パネルへ近づく。


赤い保護カバーには、『主電源』という文字が刻まれていた。


慎重に保護カバーを持ち上げる。


カチッ


橘は一度だけ周囲を見回した。


長谷川が頷く。


「全系統監視中。」


橘は深く息を吸い、主電源スイッチをゆっくり押し込んだ。


静かだった室内へ、低く力強い駆動音が響き始める。


内部の配電装置が順番に起動し、各系統へ電力が流れていく。


続いて、


ピッ。


ピピッ。


電子音が連続して鳴り、操作盤の表示灯が一つずつ点灯していく。


天井の照明が入口側から順番に明るくなった。


さらに奥の照明も次々と点灯し、白色LEDの柔らかな光が室内全体へ広がっていく。


薄暗かった居住区は、まるで地上の研究施設のような明るさへ変わった。


収納ラック。


作業机。


医療区画。


寝台。


壁面収納。


すべてがはっきりと姿を現す。


生命維持装置の表示画面も本格表示へ切り替わり、各種数値がリアルタイムで更新され始めた。


進藤は制御盤を確認する。


「主電源安定。」


「交流・直流変換正常。」


「電圧変動なし。」


長谷川も天井を見上げながら微笑んだ。


「室内設備、全系統起動を確認。」


橘はゆっくりと保護カバーを閉じる。


「主電源起動完了。」


「月面住居モジュール、本格稼働開始。」


三人は自然と室内を見回した。


つい先ほどまで、ただの無人設備だった空間。


今は人の生活を受け入れる基地へ変わっていた。


長谷川は静かに呟く。


「これでここが人類初の月面基地になったわけだ。」


進藤もゆっくり頷いた。


「歴史がまた一歩進んだな。」


橘は壁へ手を添えた。


「まだ小さな基地だ。」


「だが、ここが日本の月面開発の始まりになる。」


三人とも、しばらく言葉を失った。


誰もいなかった月。


誰も暮らしたことのなかった世界。


その静かな空間に、初めて人の居場所が誕生した瞬間だった。


室内環境が安定したことを確認すると、橘は表示パネルをもう一度確認した。


室温二十二度。


湿度四十五パーセント。


酸素濃度正常。


二酸化炭素濃度正常。


気圧安定。


すべて緑色表示で並んでいる。


橘は二人へ向き直った。


「環境安定。」


「宇宙服脱装を開始する。」


「了解。」


三人は脱装区画へ移動した。


まずヘルメット固定リングのロックを解除する。


橘が最初に操作する。


カチッ。


ロック表示が解除へ変わる。


ゆっくりとヘルメットを持ち上げる。


カシャン。


静かにヘルメットが外れた。


橘は初めて宇宙服越しではない空気を吸い込む。


ゆっくり息を吐き、小さく頷いた。


続いて長谷川。


ヘルメットを持ち上げる。


「ふぅ。」


「思った以上に快適だ。」


進藤もロックを解除し、ヘルメットを外す。


「臭いもない。」


「地球と変わらないな。」


三人は互いの表情を見て笑った。


次に胸部固定具を解除する。


バックパック型生命維持装置を取り外し、専用ラックへ固定。


各部のロックを外しながら、慎重に宇宙服上半身を脱いでいく。


長谷川が笑う。


「やっぱり軽いな。」


「宇宙服は何度着ても重い。」


進藤も肩を回した。


「六時間以上着ていたからな。」


「ようやく楽になった。」


ブーツ。


グローブ。


一つずつ取り外され、整然と収納ラックへ並べられていく。


最後に冷却インナースーツだけとなり、三人は通常の船内服姿になった。


室内には快適な空気が流れている。


温度も湿度も、まるで地上の研究施設そのものだった。


長谷川は大きく深呼吸した。


「地球を思い出すな。」


橘も静かに笑う。


「ここは月だ。」


「だが、人が安心して暮らせる場所でもある。」


宇宙服を収納し終えた三人は、すぐに点検端末を手に取った。


橘は中央のボードへ、今日の点検項目を表示する。


生命維持装置


電力システム


通信設備


給水設備


空調設備


居住設備


非常用電源


橘は言った。


「ここから六日間が本番だ。」


「この基地が完全に機能することを確認する。」


「一つも見落としは許されない。」


長谷川と進藤は力強く頷いた。


「了解。」

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