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明賢の物語(日本建国物語)正式版  作者: 大和草
第六章 覇権国のさらなる発展

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351話 先遣調査

月影の観測は続く


着陸地点の安全確認を終えたあとも、月影の任務は終わらなかった。


搭載された観測機器は、休むことなく月面の情報を収集し続ける。


地球から送られる新たな指令に応じ、探査機は観測モードを切り替えながら、月という未知の世界を少しずつ解き明かしていった。


地中レーダー観測


月影は機体下部に備えられた地下探査レーダーを起動した。


「地下探査モード、開始。」


アンテナから電磁波が月面地下へ向けて放射される。


反射波は瞬時に解析され、地下数十メートルまでの地層構造が映し出されていく。


羽合宇宙センター。


大型スクリーンには、今まで誰も見たことのない月の地下断面図が表示された。


地層解析担当が興奮を抑えながら報告する。


「地下15メートル付近に層構造を確認。」


「地盤は非常に安定しています。」


別の研究員も画面を拡大する。


「この部分は密度が高い。」


「岩盤でしょう。」


「将来、基地を建設するなら理想的です。」


地質班では、地下構造図が次々と保存され、新しい地図へ書き加えられていった。


温度変化の観測


続いて月影は、複数の温度センサーを使った長時間観測へ入る。


太陽光が当たる場所。


岩陰。


レゴリス表面。


地下数センチ。


それぞれの温度が、数秒ごとに送信されてくる。


解析担当者が読み上げた。


「地表温度、113度。」


「地下5センチ、62度。」


「影側、氷点下163度。」


巨大なグラフがゆっくり伸びていく。


生命維持装置班は、その変化を細かく確認していた。


「月読命の居住モジュールなら十分耐えられる。」


「温度制御計算も修正できます。」


月影が送る数値は、そのまま有人月面活動の設計資料となっていった。


放射線量の連続測定


放射線観測装置も、二十四時間体制で稼働を続けていた。


宇宙線。


太陽放射。


二次放射。


すべてがリアルタイムで送られてくる。


「現在値、正常。」


「急激な変化なし。」


「太陽活動も安定しています。」


宇宙服開発班は安心した表情を浮かべた。


「この環境なら予定時間の船外活動は問題ありません。」


「安全余裕も十分です。」


RIDERセンサーによる三次元地形測量


月影は観測マストをゆっくり持ち上げた。


先端には最近開発されたRIDER(三次元地形測量センサー)が搭載されている。


センサーが回転すると、月面へ無数のビームが照射された。


数秒後。


コンピュータが、着陸地点周辺を立体映像として再構築する。


巨大スクリーンには、日本平原が三次元で浮かび上がった。


クレーター。


岩石。


小さな起伏。


数センチ単位まで再現されている。


航法主任が驚いた。


「これなら着陸船はどこへ脚を下ろすかまで計算できます。」


「ここまで正確とは。」


設計班はすぐにデータを月読命の航法コンピュータへ転送した。


小岩・レゴリスの接写


月影は最後に、マクロ撮影モードへ切り替えた。


ロボットアームの先端に取り付けられた高倍率カメラが、月面へゆっくり近づく。


砂粒一粒。


小石の表面。


岩石の割れ目。


地球では見られない微細な世界が、超高解像度で映し出された。


帝国大学材料研究室では歓声が上がる。


「粒子が角張っている。」


「風化していない。」


「静電気で粒子同士が付着しているぞ。」


研究者たちは次々と測定を始めた。


「ローバーの車輪設計にも反映できます。」


「宇宙服の関節保護にも役立つ。」


月影はただ写真を撮っているだけではない。


未来の月面技術すべての基礎資料を集めていたのである。


日本平原、最終確認


数日にわたる観測の結果、着陸候補地の安全性は何度も確認された。


巨大スクリーンには最終評価が表示される。


地盤強度 最適

傾斜角 安全範囲

岩石密度 低

放射線量 許容範囲

通信状態 極めて良好

地下構造 基地建設に適する


航法主任が静かに報告した。


「月影による全観測を終了します。」


「日本平原を、月読命の正式着陸地点として最終承認します。」


室内には静かな拍手が広がった。


明賢の言葉


巨大スクリーンには、灰色の日本平原と、中央で静かに光を放つ誘導ビーコンが映っている。


明賢はしばらくその光景を見つめ、穏やかな口調で語った。


「月影は、人類が歩く道を切り開いた。」


「この静かな平原も、今は誰もいない。」


「だが、もう間もなく、ここには日本の宇宙飛行士の足跡が刻まれる。」


「月影が集めた一つ一つの観測データは、その第一歩を確かなものにした。」


その言葉を聞いた管制室の誰もが静かに頷いた。


次はいよいよ、人類初の有人月面着陸計画「月読命」が実行の時を迎えようとしていた。

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