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明賢の物語(日本建国物語)正式版  作者: 大和草
第六章 覇権国のさらなる発展

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350/428

350話 無人月面調査

月面データ解析開始


月影から送られてくるデータは、一秒ごとに増え続けていた。


受信アンテナから送られた信号は、羽合宇宙センター地下のデータ解析室へ送られ、コンピュータによって自動解析されていく。


巨大な壁面スクリーンには、


地形図

標高図

温度分布

岩石分布

着陸危険度


などが次々と表示された。


分析主任が画面を見ながら報告する。


「画像解析、順調です。」


「地表解像度、一ピクセル数センチ。」


「事前予測よりも詳細な地形データを取得しています。」


その言葉に、地質班の研究者たちが一斉に画面へ集まった。


地質班の興奮


帝国大学地質研究班。


主任研究員が画面を指差した。


「この地層を見ろ。」


「クレーター外縁部の堆積状態が、予想していたモデルと一致している。」


別の研究員も興奮気味に続ける。


「この岩塊、割れ方からして衝突で飛散した破片だ。」


「しかも直径二メートル以上ある。」


若い研究員は夢中になって記録を書き込んでいた。


「有人宇宙船がここへ行けば、非常に価値の高いサンプルを採取できます。」


「採取候補地点へ登録します。」


地図上には赤い印が一つ、また一つと増えていく。


地形解析班


別室では地形解析班が作業を続けていた。


巨大な立体模型投影装置には、月面が三次元で再現されている。


技術者が操作すると、地形が自由に回転した。


「傾斜角五度。」


「ここなら着陸脚四本とも安定します。」


別の地点を拡大する。


「こちらは岩石が密集。」


「自動着陸コンピュータでも避けた方がいい。」


主任が頷く。


「着陸候補から除外。」


新しい安全区域が緑色で表示された。


その範囲は、有人着陸船「月読命」が降りる予定地点として正式候補になっていく。


温度・放射線データ


月影は観測装置を展開し、地表環境の測定も開始していた。


「地表温度測定。」


「日向側、110度。」


「影側、-150度。」


温度グラフが滑らかに変化する。


放射線担当研究員も報告した。


「宇宙線量、想定範囲内。」


「太陽活動による異常上昇なし。」


生命維持装置開発班は、その数値を食い入るように見つめていた。


「このデータなら宇宙服の遮蔽性能で十分耐えられる。」


「月読命の設計は正しかった。」


誰もが胸をなで下ろした。


月影による周辺撮影


探査機のカメラとRIDERセンサーは、決められた角度ごとにゆっくり回転する。


360度。


高倍率。


広角。


低角度。


真上。


一枚一枚、まるで地図を描くように撮影していく。


モニターには、着陸地点周辺数キロに及ぶ巨大なパノラマが表示された。


研究員が思わず声を漏らす。


「これなら、現地へ行く前から地形を歩ける。」


別の技術者も笑った。


「飛行士は初めて行くのに、初めてじゃないような感覚になるでしょうね。」


明賢の視察


解析室へ明賢が静かに入ってきた。


研究員たちは立ち上がる。


明賢は手で制した。


「そのまま続けてくれ。」


巨大スクリーンには、人類がまだ一度も歩いていない月面が映っている。


赤い着陸候補地点。


青い観測区域。


黄色い危険区域。


すべてが整理され、未来の有人探査計画へ組み込まれていく。


明賢はしばらく無言で眺めたあと、静かに口を開いた。


「月影は、ただ月へ行ったのではない。」


「人が安全に降り立つための道を切り拓いている。」


「今送られている一枚一枚の写真データが、何十人、何百人もの命を守ることになる。」


研究室は再び静まり返った。


その言葉の重みを、誰もが理解していた。


有人着陸計画への反映


その日のうちに、月影が送信した数千枚の写真と膨大な観測データは、「月読命」有人月面着陸計画の航法コンピュータへ反映され始めた。


着陸地点はさらに細かく修正され、進入角度、降下速度、最終接地位置、ローバー走行予定ルートまで更新されていく。


航法主任は最終報告を読み上げた。


「月影による先行探査、極めて良好。」


「有人着陸地点の安全性を確認。」


「月読命計画は、予定通り次の段階へ移行可能です。」


その報告を聞いた明賢は、小さく頷いた。


「次はいよいよ、人が月へ降り立つ番だ。」

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