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明賢の物語(日本建国物語)正式版  作者: 大和草
第六章 覇権国のさらなる発展

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339話 宇宙遊泳開始

世界初の宇宙遊泳へ


2号機のエアロック室で、宇宙服の最終チェックが行われていた。


機械音だけが響く狭い空間。


白い照明。


そして、その先には外がある。


四条は、ゆっくりと手を握ったり開いたりする。


宇宙服のグローブが軋む音がする。


その音だけが、妙に現実的だった。


四条


「よし。」


「世界で初めて船外に出るのは、俺だな」


言葉は軽く聞こえるが、その中身は重い。


和泉はただ計器を見ていた。


落ち着いた声で言う。


「慎重に。でも、胸を張って」


島津は、少しだけ笑った。


「帰ってきたら、自慢していいからな!」


四条は短く息を吐く。


そして頷いた。


「ああ」


エアロックのランプが切り替わる。


準備。


管制室の声が響く。


「ハッチ開放に入る」


機械音が一段階低くなる。


ゴウン


金属がわずかに振動する。


その瞬間、誰もが向こう側を意識した。


宇宙。


そこは音がない。


風もない。


上下もない。


ただ存在する空間。


そして。


ハッチが開く。


ゆっくりと。


まるで時間そのものが引き延ばされるように。


ギギッ


金属が動くたびに、わずかな光が差し込む。


その向こう側に広がるのは漆黒。


そして地球。


白い雲の渦。


宇宙船の外壁に反射する太陽光が、銀色の帯のように流れている。


四条の呼吸が一瞬止まる。


「っ」


言葉にならない。


胸の奥が、何かで満たされていく感覚。


恐怖でもない。


興奮でもない。


もっと別のもの。


理解できない現実だった。


和泉の声が小さく入る。


「酸素濃度正常、スーツ圧力良好。通信チェック聞こえる?」


四条は少し間を置いてから答える。


「こちら四条。バッチリ聞こえる」


一度息を整える。


そして。


「行くぞ」


短い沈黙。


「人類史上、初めて宇宙空間に出る」


その言葉を言った瞬間、船内の空気が変わった。


ただ画面の中の彼を見ている。


地球の光が、四条のヘルメットに反射している。


その姿は、あまりにも小さいのに、あまりにも大きな意味を持っていた。


羽合宇宙センター。


巨大スクリーンに映るのは、2号機の船内映像。


この映像は、限られた者しか見ていない。


明賢は画面を見つめている。


誰よりも強くその瞬間を理解していた。


「この瞬間、世界が変わる」


誰に言うでもなく呟く。


「記録は全て残しておけ。決して失敗させるな」


オペレーターが即座に応じる。


「了解!」


管制室では、誰もが息を殺している。


ただ映像だけが流れている。


エアロック開放


管制の声。


「減圧完了」


「エアロック外扉、開放!」


その瞬間。


宇宙船の外壁が、完全に宇宙へと繋がる。


無音。


音が消える。


黒い宇宙。


その中に浮かぶ地球。


青。


白。


それだけだった。


カメラがゆっくりと外を映す。


その映像が、地上へ送られる。


言えない。


四条の声だけが、通信に乗る。


「すごい」


「息が止まりそうだ」


さらに続ける。


「これが、本当の宇宙!」


その声は、少しだけ震えていた。


しかし、恐怖ではなかった。


圧倒だった。


ある者は涙をこらえ、ある者は手を握りしめ、ある者はただ画面を見つめている。


明賢は目を細めた。


そして、静かに言った。


「始まったな」


それは、人類が初めて宇宙で活動する瞬間だった。


世界初の宇宙遊泳


四条は、腰に固定された安全ラインを確認する。


それが唯一の地球との繋がりだった。


エアロックの縁に手をかける。


白い宇宙服の手袋が、ゆっくりと金属を押す。


そして。


四条は、身体を外へ押し出した。


空間が変わる。


音が消える。


重さが消える。


上下が消える。


船内カメラがその瞬間を捉える。


四条の身体が、ゆっくりと宇宙船から離れていく。


まるで水中から浮かび上がるように。


しかし、そこに水はない。


あるのは宇宙だけだった。


和泉の声が通信に乗る。


「外部姿勢、安定!」


「スーツ温度正常!」


さらに続ける。


「四条、生命ユニット作動確認!」


その声の奥に、わずかな震えがある。


四条は外へ出たまま、しばらく動かない。


ゆっくりと息を吐く。


「了解」


小さく頷く。


宇宙空間


四条は浮いていた。


その後ろには地球。


圧倒的な青。


白い雲の渦。


大陸の輪郭。


それが静かに回転している。


あまりにも巨大で、あまりにも静かだった。


四条の呼吸音だけが、通信に微かに残る。


船内から島津が叫ぶ。


「撮れてる! 撮れてるぞ!!」


声が裏返る。


「四条さん、完全に浮いてる!これ以上ない映像だ!!」


カメラが切り替わる。


外部カメラ。


船体固定カメラ。


地球側カメラ。


すべてが彼を映している。


人間が、宇宙の中にそのまま存在している姿。


それは、誰も見たことのない光景だった。


地上の衝撃と興奮


羽合宇宙センター。


四条が、宇宙に浮いている。


それを理解するのに、数秒かかる者もいた。


明賢は静かに呟く。


「これが、宇宙に立つ日本人だ」


「歴史書には必ず載るだろうな」


通信士が報告する。


「四条飛行士の生体反応、正常値維持」


「映像安定! ノイズなし!」


宇宙遊泳、クライマックス


四条は、ゆっくりと身体を回転させる。


視界いっぱいに広がる地球。


その青を背景に、彼は片手を上げた。


そして通信を開く。


「こちら四条」


一拍。


「日本国、並びに地球の皆さん」


静かに息を吸う。


「私は今、宇宙空間を漂っています」


その言葉は、異常なほど落ち着いていた。


しかし、その意味はあまりにも大きい。


「人類は、ここまで来ました」


その瞬間。


羽合の管制室が、一瞬だけ無音になる。


そして次の瞬間。


誰かが机をたたく。


誰かが涙をこらえる。


明賢は画面を見つめていた。

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