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明賢の物語(日本建国物語)正式版  作者: 大和草
第六章 覇権国のさらなる発展

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337話 1号の成功

羽合近海で1号機の宇宙飛行士3名が無事に回収され、コントロールセンターには大歓声が響き渡っていた。


宇宙軍の若い管制官は、震える手でヘッドセットを外した。


「帰ってきた」


隣の通信士も呆然としていた。


「本当に、帰ってきた」


数年にわたる開発。


何度も失敗を想定し、何度も計画を見直し、何度も設計図を書き換えた。


そして今。


人類は初めて宇宙へ行き、初めて宇宙から帰還した。


その事実を、全員がようやく実感し始めていた。


巨大スクリーンには、甲板へ移されたAMATERASU-Ⅰが映っている。


白い船体。


点滅する回収灯。


周囲で動く兵士たち。


そして。


船外へ出てくる三人の宇宙飛行士。


その姿が映った瞬間、司令室の歓声はさらに大きくなった。


「生きてる!」


「立っているぞ!」


「全員無事だ!」


ある技術者は、顔を覆って泣いていた。


「よかった。本当によかった」


しかし。


明賢だけは、まだ喜びに浸ってはいなかった。


彼は歓声に包まれる室内を、静かに見渡した。


一人ひとりの顔を見る。


涙を流す者。


笑う者。


抱き合う者。


皆、人類史の一部を見ていた。


そして。


明賢は、ゆっくりと口を開いた。


「よし。」


声は静かだった。


だが、その一言で室内の空気が変わる。


拍手が止まり、歓声が止み、全員が振り返った。


「計画通り、次に移る。」


全員の視線が集まった。


明賢は続ける。


「2号機、打ち上げ準備に入れ。」


明賢はスクリーンに映る1号機の回収映像を見つめたまま言った。


「歴史に一度の偶然と思わせてはならん。」


短い沈黙。


そして。


「一度の成功では、奇跡だ。」


さらに続ける。


「二度の成功で、確立された技術になる。」


室内が静まり返った。


誰もが、その言葉の意味を理解した。


一回だけなら、幸運かもしれない。


偶然かもしれない。


だが、二度続けば、それは再現可能な技術になる。


つまり。


日本は、宇宙へ行ける国になる。


そして。


宇宙から帰ってこられる国になる。


宇宙軍士官が、真っ先に動いた。


「第2発射班、発射棟へ急行!」


「燃料班、最終確認!」


「気象班、上空データを再取得!」


「医療班、2号クルーの搭乗準備!」


命令が次々と飛ぶ。


先ほどまで歓声に包まれていた司令室は、再び巨大な機械のように動き始めた。


人が走る。


資料が運ばれる。


電話が鳴る。


新しい軌道図が表示される。


数分前までの祝賀ムードは、完全に消えていた。


誰もが理解している。


まだ終わっていない。


今日という日は、まだ終わっていないのだ。


2号機のスタッフは、すでに打ち上げ棟で待機していた。


全員が、この瞬間が来ることを知っていたからだ。


1号機が成功した場合、間を置かず、2号機を打ち上げる。


それが最初から決められていた。


発射棟では、技術員たちが持ち場につく。


誰一人として迷いなく動く。


その手順は、何百回も訓練した通りだった。


2号クルーもまた、すでに宇宙服姿で待機していた。


胸には日の丸。


背中には生命維持装置。


ヘルメットはまだ閉じていない。


三人は、無言でスクリーンを見つめていた。


そこには、海軍艦上で敬礼する1号クルーの姿が映っていた。


四条直哉。


和泉奏。


島津巌。


ただ、静かに見ていた。


やがて。


四条が小さく息を吐いた。


「帰ってきたな。」


和泉が頷く。


「ええ。」


島津も頷いた。


「見事ですね。」


しかし、その静けさには不安はなかった。


むしろ、確信だった。


宇宙へ行ける。


帰ってこられる。


それを、今、仲間が証明した。


そして。


次は自分たちだった。


彼らの任務は、1号機とは違う。


宇宙へ行くだけではない。


世界初の宇宙遊泳。


人が宇宙船の外へ出て、宇宙空間そのものへ身体を晒す。


船外へ出る。


宇宙に立つ。


何もない空間で、命綱一本を頼りに活動する。


それは、人類が宇宙で活動できることを証明する任務だった。


司令室では、新しい軌道図が巨大スクリーンへ映し出される。


1号機の表示が消え、代わりに2号機のデータが現れる。


発射予定時刻。


軌道投入高度。


宇宙遊泳予定地点。


帰還軌道。


全てが表示されていく。


そして。


スクリーン中央に、赤い数字が点灯した。


打ち上げ準備開始。


室内に再び緊張が戻った。


誰もが理解している。


今から行われるのは、人類史上二度目の宇宙飛行。


そして。


人類史上初の宇宙遊泳である。

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