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明賢の物語(日本建国物語)正式版  作者: 大和草
第六章 覇権国のさらなる発展

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314/322

314話 ロケット開発と羽合発射場

宇宙軍の研究活動


宇宙軍は、空軍が蓄積してきた航空力学や材料工学の知見を積極的に取り込みながら、主としてロケットエンジンの研究に専念していた。


空を飛ぶ技術と、宇宙へ到達する技術。


両者には共通する部分も多かったが、同時に決定的な違いも存在する。


宇宙には翼を支える空気がない。


推進力も、姿勢制御も、すべて自らの力だけで生み出さなければならない。


そのため宇宙軍は、一つひとつの基礎技術を積み上げるように研究を進めていった。


初期の研究テーマ


宇宙軍が最初に設定した研究課題は、多岐にわたった。


液体酸素(LOX)の製造・保存方法


液体燃料(ケロシン系)の精製


LOXと燃料の混合比制御


ポンプ式ロケットの模倣


軌道投入の実験的検証


耐熱セラミック素材の検討


姿勢制御装置リアクションホイール


初期衛星の通信方式


高度計測機器の開発


どれも、一つとして簡単なものはなかった。


液体酸素は極低温でなければ保存できない。


燃料の流量がわずかに狂うだけで、燃焼は不安定になる。


姿勢制御も、高度計測も、17世紀の世界には前例が存在しない。


研究者たちは、明賢から与えられた資料を何度も読み返し、実験と失敗を繰り返しながら、少しずつ技術を積み上げていった。


その様子を見ながら、明賢ははっきりと断言した。


「最初は観測ロケットだ。いきなり人工衛星は狙わない」


司令部には静かな緊張が走った。


人工衛星。


その言葉の響きは魅力的だった。


だが、基礎を飛ばして成功できるほど、宇宙という領域は甘くない。


明賢は続けた。


「まずは飛ばす。」


「そして観測する。」


「何度も失敗し、何度も学ぶ。」


「その積み重ねの先に、人工衛星がある。」


宇宙軍の技術者たちは、その言葉を深く胸に刻んだ。


その方針どおり、宇宙軍は小型ロケットの開発を進めていく。


最初に製作されたのは、全長三メートル級の観測ロケットだった。


続いて、六メートル級。


さらに、十二メートル級。


ロケットは次々と打ち上げられた。


最初の目標高度は五キロメートル。


それを達成すると、次は三十キロメートル。


そして八十キロメートル。


一回ごとの打ち上げで、燃焼状態、推進剤の消費量、姿勢の安定性、通信状況、回収データが詳細に分析された。


打ち上げのたびに、宇宙軍は膨大な失敗と成功を積み重ねていった。


もちろん、世界は何も知らない。


海では帆船が交易を続け、陸では馬車が走っている。


人々は星を見上げても、そこへ到達しようと考えることすらない。


だが、その頃すでに日本では、空を越えるための技術が着実に築かれていた。


この時点で、「日本のロケット基礎技術」は、すでに完成の域へと到達しつつあったのである。


羽合宇宙基地の建設計画


研究が進むにつれ、宇宙軍の内部では確信が生まれていた。


人工衛星は、もはや夢物語ではない。


手を伸ばせば届く場所にある。


技術者たちは、これまで集めた実験結果を整理し、軌道計算を何度も行った。


そして結論に達する。


「人工衛星は、本当に射程距離へ入った」


宇宙軍は、正式な計画書をまとめ、明賢へ提出した。


司令室で、宇宙軍の責任者が静かに口を開く。


「明賢様。」


「人工衛星打ち上げのためには、専用の射場と制御施設が必要です。」


室内は静まり返った。


明賢は何も言わず、巨大な世界地図へ視線を向けた。


海流。


風向。


周辺環境。


輸送経路。


数多くの条件を頭の中で整理する。


そして、迷うことなく答えた。


「羽合だ」


その一言で、日本の宇宙計画は新たな段階へ進むことになった。


こうして、


1636年。


羽合宇宙基地の建設が、極秘裏に開始された。


陸軍工兵隊が動員され、建設計画は厳重な秘密のもとで進められていく。


まず着手されたのは、地下施設の掘削だった。


続いて、


ロケット組み立て棟


液体燃料プラント


海軍との共同監視網


地下通信ケーブル


が次々と建設されていく。


昼は資材が運び込まれ、夜は照明の下で工事が続けられた。


外から見れば、ただの大規模な軍施設にしか見えない。


しかし地下では、人類がまだ知らない未来へ向けて、静かに準備が進められていた。


羽合宇宙基地は、まだその存在を誰にも知られていない。


それでも確実に、宇宙へ進出するための機能を備え始めていた。

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