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明賢の物語(日本建国物語)正式版  作者: 大和草
第六章 覇権国のさらなる発展

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301/322

301話 情報の独占

世界中で建設ラッシュ


日本政府の決定から間もなく、大規模な建設計画が一斉に動き始めた。


日本の陸軍工兵隊、情報通信隊、そして外交官たちが、次々と世界へ向けて出発していった。


港では、新たな任地へ向かう人々を乗せた船が何隻も出航する。


船内には、建築資材、通信機材、測量器具、書類の入った木箱が所狭しと積み込まれていた。


見送りに来た家族へ手を振りながら、彼らは未知の土地へ向かっていく。


その数は、もはや一つの遠征軍に匹敵する規模だった。


世界そのものを結ぶための、前例のない国家事業が始まったのである。


建設が許可された主な国々


建設を許可した国は、瞬く間に増えていった。


・フランス

・オランダ

・デンマーク

・スウェーデン

・ポーランド立憲王国

・ヴェネツィア共和国

・神聖ローマ帝国諸邦

・ロシア諸公国

・オスマン帝国

・ペルシャ帝国

・中国清朝

・北アフリカの諸国

・その他多数


各国の首都や主要港湾には、日本へ提供された広大な土地が用意されていった。


ある国では宮殿の近く。


ある国では港を見下ろす高台。


またある国では、城壁に囲まれた一角そのものが提供された。


そして、そこには共通して一枚の看板が掲げられる。


『日本国外交施設建設予定地』


各国の住民たちは、その看板を不思議そうに眺めていた。


「日本人が住む場所らしい。」


「日本と直接話ができる施設だという。」


「これで日本ともっと近くなるのか。」


噂は瞬く間に広がり、各地で話題となった。


こうして、世界各国の首都に、日本の治外法権区域が次々と誕生していった。


建設された外交施設の共通仕様


どの国に建てられても、施設の内部設計はほぼ共通だった。


日本は、世界中に同じ機能を持つ外交網を作ろうとしていたのである。


1.完全防音・完全遮蔽の設計


施設内部で交わされる会話や通信は、絶対に外へ漏れないよう設計されていた。


厚い壁。


複数の空間を挟んだ会議室。


特殊な防音構造。


重要な部屋には二重扉まで設けられた。


外交交渉。


軍事連絡。


各国の政治情報。


それらが、第三者に知られることはない。


世界のどこにあっても、そこだけは完全に日本の空間だった。


2.無線通信塔


建物の屋上には、一見すると煙突のような構造物が設けられた。


しかし、その正体は全く別だった。


軍用暗号通信が可能な、巨大な通信司令塔である。


昼夜を問わず、通信士が常駐する。


各国の外交施設。


近海を航行する日本海軍艦艇。


そして遠く離れた日本本土。


それらが、一つの通信網として結ばれていた。


世界のどこかで起きた出来事が、日本へ届く。


日本からの指示が、世界へ送られる。


距離という概念そのものが、徐々に変わり始めていた。


3.情報分析室


施設内には、必ず情報分析室が置かれた。


机の上には、現地の新聞や本が積まれている。


市場価格の記録。


議会での発言。


王宮から出された布告。


港の荷物の動き。


ありとあらゆる情報のかけらが集められていく。


現地に常駐する日本人外交官や専門職員たちは、それらを毎日整理し、分析し、東京へ送信していた。


「穀物価格が先月に比べ5%上昇。」


「貴族の対立が激化。」


「新たな法律が公布。」


一つ一つは小さな情報でも、積み重なれば国の動きそのものになる。


日本は、世界各国の情勢を、ほぼ同時に把握できる体制を整えていた。


4.日本語教育室


施設には、もう一つの役割があった。


日本語教育である。


敷地の一角には教室が設けられ、現地の貴族、官僚、学者、外交官に対して、日本語の講義が行われた。


最初は好奇心から受講する者が多かった。


しかし、日本との関係が深くなるにつれ、事情は変わっていく。


「日本語が話せれば、直接日本と交渉できる。」


「日本語を学べば、日本の学問を理解できる。」


「出世するためには必要だ。」


そう考える人々が増え始めたのである。


やがて各国では、日本語を学ぶこと自体が、教養や名誉の一つと考えられるようになっていった。


それは、日本が長期的に仕掛けた静かな布石でもあった。


世界は日本と常時接続した


外交施設の完成が進むにつれ、世界の動きは劇的に変化した。


各国の王宮や政府機関は、何か問題が起これば、まず近くの日本外交施設へ相談するようになる。


そして、その内容は通信網を通じて、即座に東京へ送られた。


たとえば


「フランス王宮より、至急の相談です。」


「イギリス議会派、北海問題について意見を伺いたいとのこと。」


「スウェーデン、クリスティーナ王が新しい単位の質問を希望。」


「清朝より紅茶に関する貿易交渉の打診。」


「ペルシャ帝国より技術交流について照会。」


次から次へと、世界中から通信が飛び込んでくる。


東京の外務省統合情報通信室では、昼夜を問わず無線機が稼働し続けた。


記録官が内容を書き留め、外交官が回答を作成し、再び世界へ送信する。


情報は、海を越え、大陸を越え、瞬時に行き交う。


世界はもはや、日本を中心に動く新しい国際ネットワークを形成していた。


かつては数か月かかっていた外交交渉が、今では同じ日のうちに始まり、同じ日のうちに返答される。


距離に隔てられていた国家は、一本の見えない糸によって結ばれた。


その中心にいるのは、他でもない、日本だった。

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