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孤独死したおっさん、高校時代へタイムスリップ  作者: 雪だるま
橘彩音ルート

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 翌日。


 朝。


 教室。


 冬の光が窓から差し込んでいた。


「寒ぃ〜〜〜」


「ストーブまだ!?」


「購買行く奴いる?」


 いつもの騒がしい空気。


「のだっ♡」


 レイは妙に落ち着いていた。


 昨日。


 かなり幸せだった。


 彼女。


 プレゼント。


 家族。


 原稿料。


「のだぁ……」


 前回人生。


 自分は。


 “失ってから大事さに気づく”ことが多すぎた。


「うむ……」


 だから。


 今回は違う。


「…………」


 その時。


 教室後方。


「はぁ?」


 西園寺誠が友人たちと話していた。


「親父さぁ、最近また変な投資話乗り気なんだよ」


「投資?」


「知り合いに絶対儲かるとか言われたらしくて」


「うわ、怪しい」


「だろ?」


 レイの動きが止まった。


「…………」


 前回人生。


 覚えている。


 西園寺の家。


 かなり揉めていた。


 父親の事業失敗。


 借金。


 家庭崩壊寸前。


「…………」


 当時のレイは。


 遠くから見ていただけだった。


 でも。


 今回は。


「のだぁ……」


 レイは少し考えた。


 未来を全部話すのは無理。


 タイムスリップの説明なんてもっと無理。


 だが。


 “それとなく”なら。


「うむ」


 レイは立ち上がった。


「西園寺ぃ」


「ん?」


「ジュース飲むのだぁ?」


「急だな」


「おごりなのだっ♡」


「珍し」


 数分後。


 自販機前。


「で?」


 西園寺が缶コーヒーを開ける。


「何の話だよ」


「のだぁ……」


 レイは少し真面目だった。


「お主のパパぁ」


「は?」


「投資話とか、気をつけた方がいいのだぁ」


「…………」


 西園寺が少し止まる。


「何で知ってんの?」


「なんとなくなのだぁ」


「怪しい」


 だが。


 レイは本気だった。


「のだぁ……」


 未来を知っていると。


 “あの時止められたかもしれない”が増える。


「うむ」


 レイは静かに言った。


「絶対儲かる話って、大体怖いのだぁ」


「まあそれはそうだけど」


「あと」


「?」


「知り合い経由ほど危ないのだぁ」


「…………」


 西園寺は少し真顔になった。


「……何かあった?」


「のだぁ?」


「お前、時々変に現実的なこと言うじゃん」


「うむぅ……」


 レイは空を見た。


 白い息。


「吾輩、色んな失敗見てきた気がするのだぁ」


「何そのジジイみたいな台詞」


 だが。


 西園寺はちゃんと聞いていた。


 最近のレイ。


 変。


 でも。


 時々妙に鋭い。


「のだぁ……」


 レイは続けた。


「家族の空気悪くなるの、結構きついのだぁ」


「…………」


 西園寺の表情が少し変わる。


 図星だった。


 最近。


 家の空気が少し重い。


 父親、イライラ。


 母親、不安そう。


「…………」


「だから」


 レイはジュースを飲みながら言った。


「お主、ちょっとだけでも止めた方がいいのだぁ」


「俺が?」


「うむ」


「無理だろ」


「でも」


 レイは笑った。


「子供の一言って、意外と残るのだぁ」


「…………」


 西園寺は少し黙った。


「……お前さ」


「のだ?」


「最近ほんと変わったよな」


「うむっ♡」


「前はこんなこと言う奴じゃなかった」


「青春なのだぁ♡」


「便利ワードすぎる」


 だが。


 レイは少し真面目だった。


「のだぁ……」


 前回人生。


 自分は。


 誰かに何か言える人間じゃなかった。


 でも。


 今は違う。


 間違ってるかもしれない。


 余計なお世話かもしれない。


 それでも。


 言わないよりはいい。


「…………」


 西園寺は缶コーヒーを見つめていた。


「……親父さ」


「うむ?」


「最近、やたら“今動かなきゃ一生負け組”とか言ってんだよ」


「のだぁ……」


 レイは少し眉をひそめた。


 焦り。


 バブル崩壊後。


 不安。


 時代の空気。


「…………」


 前回人生でも。


 あの頃、大人たちはどこか焦っていた。


「うむ」


 レイは静かに言った。


「焦ってる時の人間って、変な話に飛びつきやすいのだぁ」


「…………」


「だから、お主だけでも冷静でいるのだぁ」


「…………」


 西園寺は少し笑った。


「お前、ほんと高校生っぽくねぇな」


「のだっ♡」


「でもまあ」


 西園寺は小さく頷いた。


「……ちょっと言ってみる」


「うむ!」


 レイは嬉しそうだった。


「家族は大事なのだぁ♡」


「急に真面目かよ」


「吾輩、最近わかってきたのだぁ」


「何を」


「帰る場所あるの、めちゃくちゃありがたいのだぁ」


「…………」


 西園寺は少し黙った。


 そして。


 笑った。


「ほんと変な奴」


「のだっ♡」


 教室へ戻る途中。


 レイは少し空を見た。


「のだぁ……」


 未来は全部変えられないかもしれない。


 でも。


 少しでも。


 後悔を減らせるなら。


「うむっ♡」


 レイは小さく笑った。


 今度の人生は。


 逃げるだけじゃ終わりたくなかった。

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