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孤独死したおっさん、高校時代へタイムスリップ  作者: 雪だるま
橘彩音ルート

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 翌日。


 教室。


 朝。


「…………」


 レイは燃えていた。


「のだぁ……!」


 机の上。


 ノート。


 メモ。


 大量の走り書き。


『雑誌投稿』


『小コラム』


『サブカル誌』


『ゲーム誌』


『ミニ連載』


『ライトノベル』


「うむ……」


 レイは真顔だった。


 前回人生。


 “いつかやる”で終わったことが多すぎた。


 だから今回は違う。


「思いついた瞬間に動くのだぁ!」


 そして。


 一九九二年。


 まだ紙媒体が強い。


 雑誌文化全盛期。


 ゲーム誌。


 サブカル誌。


 投稿コーナー。


 読者投稿。


 変な小ネタ。


「のだぁ……」


 しかも。


 レイは知っている。


 未来。


 オタク文化。


 ネット文化。


 変な雑学。


 全部巨大化する。


「うむ!」


 レイは猛烈な勢いで書いていた。


『海外の変な祭り』


『奇妙な食文化』


『ゲームあるある』


『成金ギャグ』


『ポンコツ悪役主人公』


「のだっ♡」


 かなり楽しい。


 しかも。


 意外と筆が進む。


「…………」


 前回人生。


 レイはネット掲示板や動画コメントで、無駄に文章を書きまくっていた。


 つまり。


 文章慣れだけはある。


「うむうむ!」


 その時。


「田中君」


「のだ?」


 橘彩音だった。


「…………」


 レイの顔が即座に緩む。


「彼女なのだぁ♡」


「声に出てる」


「のだっ♡」


 だが。


 彩音は机を見て眉をひそめた。


「……何これ」


「未来なのだぁ♡」


「は?」


「吾輩、作家になるかもしれないのだぁ♡」


「えっ」


 周囲までざわつく。


「田中が?」


「意外」


「絶対変なの書くだろ」


「うむ!」


 レイはドヤ顔だった。


「馬鹿主人公いっぱい書くのだぁ♡」


「自伝?」


「違うのだぁ!!」


 教室が笑いに包まれる。


 だが。


 彩音は少し複雑そうだった。


「…………」


 レイは最近。


 何かを始めようとしている。


 それはわかる。


 でも。


「…………」


 なんか。


 急に忙しそうなのだ。


「のだぁ〜♪」


 レイはもう次のネタを書いていた。


「追放された悪役がぁ〜♡」


「田中君」


「のだ?」


「私いるんだけど」


「のだっ♡」


 レイは即座に彩音を見た。


「可愛いのだぁ♡」


「そうじゃなくて」


「うむ?」


「さっきから全然こっち見てない」


「…………」


 レイ、停止。


「…………」


 彩音はちょっと頬を膨らませていた。


「…………」


 レイの脳が理解する。


「のだぁ……」


 彼女が。


 嫉妬している。


「のだぁぁぁぁぁ♡」


 レイ、感動。


「可愛いのだぁぁぁぁ♡」


「うるさい!」


 だが。


 彩音は本当にちょっと不満だった。


 付き合ったばかりなのに。


 レイが急に“未来のために頑張るモード”へ入っている。


「のだっ♡」


 レイはニコニコしていた。


「橘ぃ」


「何」


「嫉妬なのだぁ?」


「違う!」


「可愛いのだぁ♡」


「だから違うって!」


 周囲の女子たちがニヤニヤしていた。


「橘めっちゃ彼女じゃん」


「田中君最近ほんと彼氏面強い」


「のだっ♡」


 レイは誇らしげだった。


 だが。


 次の瞬間。


「…………」


 彩音が。


 スッとレイのノートを閉じた。


「のだぁ!?」


「休憩」


「えぇぇぇ!?」


「今は私と喋って」


「のだぁ……」


 レイ、動揺。


 だが。


 内心めちゃくちゃ嬉しい。


「のだぁぁぁぁ♡」


「何その顔」


「愛されてるのだぁ♡」


「重い!」


 だが。


 彩音は少し笑っていた。


 その時。


 西園寺が後ろから呆れ顔で言った。


「お前ら朝からイチャつきすぎだろ」


「青春なのだっ♡」


「便利ワードすぎる」


 レイはノートを抱えた。


「だが吾輩、稼ぐのだぁ!」


「急に真面目」


「橘と結婚するのだぁ♡」


「早ぇよ!!」


 教室、大爆笑。


 彩音は真っ赤だった。


「ちょっと!!」


「のだっ♡」


 レイは真顔だった。


「吾輩、前回人生の反省をしてるのだぁ」


「前回人生設定まだ続いてたんだ」


「うむ!」


 だが。


 レイは本気だった。


 五十歳まで生きて。


 わかった。


 幸せって。


 “いつか”じゃ遅い時がある。


「のだぁ……」


 その時。


 彩音がぼそっと言った。


「……でも」


「のだ?」


「無理しすぎないでね」


「…………」


 レイは少し止まった。


「最近、急に全部頑張ろうとしてる感じするから」


「…………」


 レイは静かに彩音を見た。


「のだぁ……」


 前回人生。


 頑張らなかった。


 逃げた。


 でも。


 今度は逆に焦っている。


 全部取り戻そうとしている。


「…………」


 彩音は小さく笑った。


「ちゃんと休憩しなよ」


「…………」


 レイは数秒黙って。


 そして。


「のだっ♡」


 彩音に抱きついた。


「うわっ!?」


「癒やしなのだぁぁぁ♡」


「教室!!」


 男子たち大爆笑。


「また始まった!」


「こいつらほんと!」


 だが。


 レイは幸せそうだった。


 夢。


 青春。


 恋愛。


 未来。


 全部。


 今度はちゃんと掴みたかった。

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