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死にかけるたび仲間だけが最強になる俺の異世界逆チート 〜攻撃力ゼロなのに、残念美少女パーティの強化素材にされました〜  作者: KoiToHimitsu
第一章 穏やかな生活

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第9話 魔王

テントの中で、悠真は胎児みたいに丸まっていた。


頭の中で、その言葉が何度も響いていた。


魔王。


「嘘だった。俺が読んできたものは全部、嘘だった」


震えながら、小さくつぶやいた。


「自分のスキルがどう発動するのかも分からないのに、最初のクエストでラスボスと戦うのか。しかもあいつら……怯えてるんだろうか?」


悠真はテントを少し開けて、外をのぞいた。


三人は焚き火の周りにいた。


火はもう弱くなっていたが、彼女たちは互いの言葉に笑っていた。


ルリカは、魔導師が緊張した時に頭上の空に黒い裂け目が開くのは完全に普通だと、真剣に説明しようとしていた。


ノノアは自分のマグカップを盗んで、それを探しているふりをしていた。


リーゼは目を半分閉じたまま、それを聞いていた。


「あ? どういうことだ? あいつら、これから何が来るのか何も分かってない」


悠真はもう一度、仰向けに倒れた。


「羨ましいよ。今日が俺たちの最後の日だとも知らずに」


テントの入り口が開く音が聞こえた。


リーゼが中をのぞいた。


「さて、彼女たちはもう休みました。悠真殿も休むべきです」


(ああ、彼女は俺がこの世界に来てから起きた最高の出来事だ)


「ありがとうございます、リーゼ様。でも眠れそうにありません。むしろ、これが普通です。俺が読んできた知識によれば、決戦前の夜にパーティがよく眠れることなんてありませんから」


リーゼは上を見上げ、さらに目立つ隈を浮かべたまま考え込んだ。


「ふむ。では、眠りゴボウを十分に入れなかったのでしょうか?」


「眠りゴボウの根?」


「はい。よく眠れるようになります」


悠真はまぶたが重くなるのを感じた。


「それ、君には効かないのか?」


リーゼは微笑んだ。


「私には効きません。私はいつも睡眠が足りませんし、眠るのが嫌いですから」


悠真は目を閉じる前に、最後の言葉を言った。


「そういうことじゃないはずだった。パーティが休めないはずで……」


そして深く眠りに落ちた。


リーゼは焚き火のそばの丸太へ戻った。


一晩中、剣を研いでいた。


その武器は長く、優雅で、白と金だった。金属は朝の光に磨かれたように見えた。砥石が刃の上を通るたび、小さな光の欠片がこぼれ、夢が空中でほどけていくようだった。


剣の中心には細い金の線があり、ゆっくり脈打っていた。


動かすたび、光が刃を上り、切っ先で消えた。まるで剣が呼吸しているようだった。


だが、リーゼはそれを死ぬほど眠そうな表情で見つめていた。


「今日は……このひどい夜を無駄にはできません」


悠真は、よだれを顔に垂らしたまま目を覚ました。


伸びをした。


太陽の光はもうテントの中に入り始めていた。


(ありがとう、リーゼ様。この熟睡を)


外へ出た。


誰もいなかった。


(ああ、今日は朝食を作ってくれなかったのか。でもそこは許そう)


クエストの紙を手に取った時、彼は固まった。


クエスト、二時間前に開始済み。


(リーゼ様、感謝の半分を取り消します)


ルリカの薄紫色の目が、ゆっくり開いた。


目の前に人影が見えた気がした。


腕で目をこすった。


「変態! 私たちに何をするつもりですか?」


胸を守りながら言った。


悠真は反応すらしなかった。


その表情は硬かった。


「ルリカさん」


彼女は心配そうになった。


「何ですか?」


ノノアもその瞬間に目を覚ました。


悠真はクエストの紙を持ち、彼女の前で開いた。


「俺たちはクエストに二時間遅刻している」


三人は大慌てで飛び出した。


ルリカの頭には、母の姿が浮かんでいた。


「初めてのクエストに遅刻したなんて信じられません。とても失望しました」


ルリカは帽子を頭に押しつけた。


ノノアが少し速度を落とした。


「待って、誰か足りなくない? リーゼはどこ?」


悠真が答えた。


「知らない。あちこち探した」


現場に着くと、森が彼らの前で開けた。


そこは広く平らな、ほとんど円形の空き地で、高い木々が壁のように周囲を囲んでいた。中央の草は踏み潰されている。風は葉の間を通っていたが、そこには入ってこなかった。まるで森ですら距離を取ることを知っているようだった。


古い石が端を示していた。


いくつかは割れていた。


ほかの石には焼け跡があった。


空き地の中央に、魔王がいた。


身長はほぼ三メートル。


皮膚は灰色で、肉の下を溶岩のように光る赤い線が走っていた。黒い角が頭の後ろへ曲がっている。肩には、風もないのに揺れる破れたマントをまとっていた。


左手には、重なった六角形の板でできた、巨大で半透明な魔法の盾を持っていた。中心には古い紋章が輝いている。


右手には、青と橙の炎をまとった剣がうなっていた。炎は金属を焼き尽くすことなく、刃を上っていた。


彼の視線が三人に落ちた。


悠真は震えた。


「ふざけているのか? 私は遠くから来て、用事までずらしてここにいる。それなのに君たちは数分ではなく、二時間も遅れてくるのか? 何という礼儀知らずだ」


(よし。魔王を怒らせた)


悠真は話す前に咳払いした。


「俺たちはParty #242だ」


魔王は動かなくなった。


それから、やけに長い高笑いをした。


燃える剣が少し下がった。


「待て……君たち、名前をランダムにしたのか? それが起きたのは何年ぶりだろうな。最後はParty #241だった」


笑い続けた。


悠真は拳を握った。


「覚悟しろ」


悠真は顔に手を当て、ポーズを取った。


「お前を」


ルリカも横でポーズを取った。


「消し」


ノノアは妙なポーズで腕を組んだ。


「飛ばす」


全員が、本来リーゼがいるはずだった空白を見た。


(練習時間が無駄になった)


何も起きなかった。


魔王は困惑した顔をしていた。


「ああ、メンバーが一人足りないから変になった。本当は最後にリーゼが立って、四人で『死』の字を作る予定だったんだが、これじゃただの下手な振り付けだ」


魔王は盾と剣を構えた。


「見られないのは残念だが、本題に入ろう。特にその魔導師を見るのが楽しみだ。彼女の中に、制御されていない大きな破壊力を感じる」


空に黒い裂け目が開いた。


ルリカは拳を握った。


「私は普通の女の子です」


「そうは見えない」


悠真は、裂け目が開き、空から黒い魔法がミサイルのように降り注ぐのを見ながら笑った。


「ああ、それは言うべきじゃなかった。彼女は不安定なんだ」


ルリカはさらに怒った。


「私は不安定ではありません」


さらに多くの魔法が空から降り注いだ。


黒い弾幕が空き地へ落ち、鋭い風切り音で空気を裂いた。


魔王は魔法の盾を空へ掲げた。


六角形の板がガラスの花のように開き、防護の領域を作った。魔法はそれにぶつかり、黒い波となって爆発した。


地面が震えた。


だが、盾は崩れなかった。


魔王は三人を見た。


「この盾は父から授かったものだ。魔法に対して素晴らしい耐性を持っている」


ノノアが低く走った。魔王の盾が黒い弾幕を押しのけた一瞬、その足元まで滑り込み、彼のマントの端に指先で触れた。


「君から大事なものを盗む時間だね」


その指先から青い光が跳ね、魔王の体を一瞬だけなぞった。


全員が静かになった。


(効いたのか?)


魔王は自分の手を見た。


「妙だ。私は悲しく、やる気もなかった。正直、君たちにはただ少し叩きのめすだけで済ませるつもりだった。だが今、突然、君たちを殲滅し、完全に破壊したくなってきた」


邪悪な笑い声を上げた。


悠真とルリカはノノアを見た。


「あ、どうやら彼のやる気を盗んだみたい。しかも負のやつ」


(すでにマイナスのものを盗むのをやめろ)


その瞬間、地面が震えた。


魔王が全力で突っ込んできた。


燃える剣が前へ突き出されていた。


彼の周囲で空気が裂けた。


踏み込むたびに草が燃えた。


盾が黒い魔法を左右へ押しのけ、刃はパーティの中心へまっすぐ向かってきた。


「終わった、全員死ぬ!」


悠真が叫んだ。


その時、白い光が空き地を横切った。


それは細く、静かだった。


その光は悠真の前を通り、攻撃の圧力を切り裂き、魔王の脇腹を打った。


衝撃は鐘のように響いた。


魔王の巨体が空中で軌道を逸らされた。燃える剣は横を通り過ぎ、地面にクレーターを開け、焼けた土を巻き上げた。


悠真は後ろへ倒れた。


ルリカは帽子を押さえた。


ノノアは、たぶん彼女のものではない硬貨を一枚落とした。


魔王は足を地面に踏みしめ、ゆっくり頭を向けた。


空き地の向こう側から、一人の女がこちらへ歩いてきていた。


白い鎧は土で汚れていた。


銀がかった金髪は乱れて顔にかかっていた。


目の下の隈は深すぎて、戦場の影のように見えた。


だが、青い目にはもう朝の甘さはなかった。


冷たかった。


集中していた。


危険だった。


その手にある白と金の剣は、澄んだ光を放っていた。刃は一歩ごとに小さな光の欠片をこぼしている。


その騎士は、疲労で黒く染まった幻のようだった。


剣は、夜明けから生まれたもののようだった。


悠真は口を開いた。


「リーゼ様、君なのか?」


リーゼはパーティと魔王の間で立ち止まった。


剣を上げた。


その表情は、これまで誰も見たことがないほど真剣だった。


「魔王を討つ時間です」



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