第4話 幸運のウサギ
そして今度は、悠真が逮捕された。
この新しい世界で過ごす最初の夜は、牢屋の中になるらしい。
ノノアも連れていかれた。
衛兵たちに通りを引きずられている間、悠真は、自分だけが犯罪者だと思われないように、わざわざ三回も「俺の共犯者です!」と叫んだ。
「私は君の共犯者じゃないよ」と彼女は言った。
「じゃあ主犯だ」
「厳密には、荷車に火をつけたのは君だよ」
「『厳密には』って言葉、死んでほしい」
衛兵の荷車へ押し込まれながら、悠真はノノアを見た。
彼女は笑った。
それから、ウインクした。
(何だ? なんで今……? 意味は分からない。でも絶対にろくなことじゃない)
悠真は目を見開いた。
(やめろ。やめろ)
ノノアは笑い続けた。
(やるな)
彼女はもう一度ウインクした。
(やった)
悠真は荷車の後ろに投げ込まれた。
扉がばたんと閉まった。
木のベンチに座り、その日の出来事について考えた。
そして今、自分の袋が原因で起きた火事のせいで逮捕されている。
「穏やかな生活」と、悠真はつぶやいた。「順調すぎるな」
外では、衛兵たちが大声で話していた。
「おい、待て。俺の剣が盗まれた気がする」
「あ? 俺の帽子は?」
「牢屋の鍵を持っていったのは誰だ?」
沈黙があった。
その数秒後、荷車は馬鹿みたいな速度で走り出した。
悠真はもう少しで額を壁にぶつけるところだった。
「衛兵さん、もう少し落ち着いて運転を――」
横を見た。
「ノノアさん?」
一人だった。
悠真はとてもゆっくりと、御者席につながる小窓を開けた。
ノノアが前にいた。片手で手綱を握り、衛兵の鍵を歯にくわえ、大きな制帽を頭にかぶっていた。
少し振り向いた。
「見ないで。集中してるから」
悠真は静かに小窓を閉めた。
後ろの窓から外を見た。
衛兵たちが荷車を追いかけていた。
一人はすでに膝に手をつき、前かがみになっていた。
もう一人が叫んでいる。
「俺の帽子を返せ!」
悠真はベンチに頭を預けた。
「よし、決めた。寝よう。起きた頃には全部解決している。そう信じよう」
数分後、荷車は急停止した。
悠真は前に投げ出され、肩を打った。
小窓が開いた。
「馬がもう限界みたい」とノノアが言った。「おかしいね。二人しか乗ってないのに」
悠真は立ち上がり、荷車から降りて周りを見た。
夜は深かった。
月明かりが、土の道、高い木々、そして盗まれた荷車の上に落ちている。
悠真は疑いの目でノノアを見た。
「これが初めてじゃない気がするのはなぜだ?」
「公用の荷車では初めて」
「公用じゃない場合は?」
「質問が具体的すぎる」
彼女は荷車の後ろへ回り、荷台を開けようとした。
その時、悠真は木々の間に影を見つけた。
止まった。
「ノノアさん」
「うん?」
「あれ、何だ?」
道の端、枝の下に何か小さなものが立っていた。
見えるのは、二つの赤い目だけだった。
暗闇の中で、丸く、じっと光っていた。
悠真は自分のブーツがきしむ音を聞いた。
影が片耳を動かした。
それから月明かりの中へ出てきた。
ウサギだった。
白い。
ふわふわ。
小さな足、繊細なひげ、無垢な表情。
悠真は胸に手を当てた。
「すごく可愛い」
「見た目どおりじゃないよ」
「何だよ。俺、家でウサギ飼ってたことあるんだぞ。よく知ってる」
「それを家で飼ってたの?」
「ああ」
「気をつけて! 幸運ウサギだよ。異常な幸運を持ってて危険なんだ。目から撃ってくる――」
ウサギの赤い目が光った。
光線が夜を貫いた。
悠真は横に飛び込んだ。
レーザーは頭の上を通り過ぎ、背後の木の幹に煙を上げる穴を開けた。
「あっぶな!」
悠真は地面に倒れた。
それから、ゆっくりとノノアを見た。
「その部分から先に言えなかったのか?」
「今そこに行くところだった」
ウサギの目がまた光った。
もう一発、光線が放たれる。
悠真は横に転がったが、攻撃が足をかすめた。
焼けるような痛みが走った。
「ぎゃあっ!」
その瞬間、ノノアがびくりと震えた。
淡い光が、彼女の指を這い上がった。
「あ」
ノノアは自分の手を見た。
「変だね。君にレーザーが当たったら、なんか私のスキルが強くなった」
地面に座り、足を押さえていた悠真が叫んだ。
「そこに突っ立ってないで、何かしろ!」
「やってるよ」
ノノアは手を伸ばした。
光が彼女の指から抜け、糸のように悠真へ触れ、それからウサギへ伸び、最後に彼女の手のひらへ戻ってきた。
沈黙が戻った。
コオロギが鳴いた。
ウサギが瞬きをした。
悠真はノノアを見た。
「ノノアさん」
「うん?」
「俺に何をした?」
彼女は顎に手を当てた。
「難しいね。私のスキルってランダムだから」
ウサギの目がまた光った。
次のレーザーを撃とうとしている。
悠真は苦労して立ち上がった。
「何だと? この場で唯一スキルを持ってる人間が、見たところ何もしてない攻撃を放って、今度は俺が――」
ウサギが撃った。
光線は悠真の横を通った。
外れた。
木の梢に当たった。
石に跳ね返った。
小さな湖の水面にぶつかり、不可能な角度で上昇し、枝に触れ、螺旋を描いて落ちてきて、そのままウサギ自身の真上に降った。
閃光があった。
それから煙。
ウサギがいた場所には、黒く焦げた草の円と、ゆっくり落ちてくる焼けた耳が二つだけ残った。
悠真は固まった。
ノノアが笑った。
「あ。分かった」
悠真は煙を指さした。
「今なら説明を受け入れる」
「君からランダムに盗れた能力値を、あれに移したの。どれが取れても低そうだったし」
「どの能力値だ?」
「たぶん、また君の運」
悠真は濡れた草の上に座り込んだ。
「つまり俺たちは、幸運ウサギに俺の運を与えて倒したのか?」
「普段、私は盗むだけなんだけどね。今回は外に押し出せたみたい。君のせいだと思う」
ノノアは焼け焦げた円に近づき、中をのぞいた。
悠真はため息をつき、空を見上げた。
「せめて経験値は入ったのか?」
ノノアは首を傾げた。
「それが何か分からない。スキルポイントのことなら、ギルドで換算してくれるよ」
「そうか。成長にまで窓口対応が必要なのか」
夜が一瞬、静かになった。
月は綺麗だった。
銀色で。
平和だった。
悠真は草の上に仰向けに倒れた。
「なあ、夜は案外綺麗だな。俺はただ、静かに暮らしたかっただけなんだ」
その言葉が終わった瞬間、土砂降りの雨が降り始めた。
まるで空が、彼の言葉に逆らう許可を得たみたいに、水が落ちてきた。
悠真は三秒でびしょ濡れになったまま、仰向けに寝ていた。
「ん。俺、何か言ったか?」
ノノアは荷車へ走った。
「後ろに毛布と食料があるはず!」
悠真も起き上がり、彼女の後を追った。
ノノアは荷台を開けた。
止まった。
悠真が近づき、目に入る雨水を拭った。
「どうした? あ?」
荷台の中、袋や毛布や衛兵用の箱の間で、一人の女が眠っていた。
背が高く、美しく、銀がかった金髪が白いマントの上に広がっていた。
明るい色の鎧は、雨の中でも輝いている。
顔は穏やかだった。
気品があった。
古い絵画から落ちてきた戦姫のように見えた。
その時、彼女はいびきをかいた。
深く、疲れきった、どんな姫にもふさわしくないいびきだった。
髪には藁が刺さっていた。
目の下には薄い隈。
胸には、薄くて、歪んで、みじめな枕が抱きしめられていた。
美しい騎士はその枕をぎゅっと抱きしめ、寝言をつぶやいた。
「あと五分だけ……苦しませてください……」
悠真はゆっくりと荷台を閉めた。
それからノノアを見た。
「俺たち、人間を盗んだのか?」




