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死にかけるたび仲間だけが最強になる俺の異世界逆チート 〜攻撃力ゼロなのに、残念美少女パーティの強化素材にされました〜  作者: KoiToHimitsu
第二章 レベル999の夢

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第13話 風呂

温泉から、湯気がゆっくり立ち上っていた。


ルリカは動かなかった。


目の前、湯の向こう側に、セリアがいた。


長い黒髪。


濃い紫の目。


風呂の中で、湯気が体の一部を隠しているのに、彼女は湯気の配置まで計算された一枚の絵のように見えた。


ルリカは瞬きをした。


それから、もう一度瞬きをした。


指先が震え始めた。


小さな黒い円が、水面に開いた。


風呂の上の空が、細い線で割れた。


「セリア、どうしてここにいるんですか?」


セリアは空を見た。


驚いた様子はなかった。


ただ、わずかに顎を上げただけだった。


「では、まだ黒魔法を制御できていないのですね?」


彼女の指が水面に触れた。


黒い雫が、落ちる代わりに上へ昇った。


雫は小さな円形の封印に変わった。黒いガラスのように薄く、空中で一度だけ回転した。


セリアが一言つぶやいた。


封印が開いた。


そこから、鳥ほどの大きさの小さな影の使い魔たちが現れ、音もなく空の裂け目へ上っていった。黒い縫い手のように、裂けた現実の縁に張りつき、一つずつ閉じていく。


空は元に戻った。


(ああ、様になってるな)


セリアはルリカに微笑んだ。


「魔導師とは、こう振る舞うものです」


ルリカは唇を引き結んだ。


彼女の周りの湯が泡立ち始めた。


「分かっています。これはただの一度きりの事故です。あなたに会うとは思っていなかったからです」


(ん? 単発? 毎日起きてるぞ)


「では、最高位魔導師に近づいているおつもりなのですね」


ルリカは視線を泳がせた。


話題をそらそうとしていた。


「あ、はい。ですが、その前に」


軽蔑するような目で悠真を見た。


「あなたは何をしているんですか?」


悠真は湯の中から頭を出した。


風呂の隅に寄りかかった。


濡れた髪を手でかき上げ、作り物の自信で顎を上げた。


ランタンの光が湯気に反射した。


一瞬だけ、彼は謎めいた、大人で、危険な男に見えるよう振る舞った。


「なあ、ルリカさん……」


大げさに間を置いた。


水まで待っているようだった。


「これは……」


悠真は、まるで世界の禁じられた真実を明かすかのように、胸に手を当てた。


「混浴だ」


混浴という言葉が、ルリカの頭の中で反響した。


混浴。


混浴。


混浴。


彼女の顔は耳まで真っ赤になった。


「こ……こ……混浴?」


湯の中で自分の体を抱きしめ、肩だけが見えるくらいまで縮こまった。


空には、もう新しい裂け目が生まれ始めていた。


「心配しなくていいわ、ルリカ」


ルリカはセリアを見た。


彼女は穏やかだった。


「この男性は、変態に見えますが、度胸がありません」


悠真は、専門家に見抜かれた人間の顔でセリアを見た。


セリアは続けた。


「彼がここに来た時、私はすでに湯の中にいました。私を見た彼は、怖がりすぎて、湯に入るまで二十分ほどかかりました。その後、私に怯えた表情を見られないように、顔の一部を湯の中に隠していたのです」


悠真は魂が体から離れるのを感じた。


「つまり、この男性は明らかに……」


(その言葉を言うな。それだけはやめろ)


「童貞です」


その言葉が風呂を貫いた。


童貞。


童貞。


童貞。


悠真は固まった。


ルリカもだった。


三秒間、水の流れる音だけが聞こえた。


セリアは風呂から立ち上がった。


湯気が白いヴェールのように彼女の体を覆い、優雅なシルエットと、濡れた黒髪と、人生で一度も取り乱したことがない人間の落ち着きだけを残した。


悠真はパニックになり、首が折れそうな勢いで顔をそむけた。


セリアは横目で彼を見た。


「言ったでしょう?」


タオルを取り、落ち着いた動作で体に巻き、出口へ向かった。


ルリカが呼び止めた。


「セリア、どうしてここにいるんですか?」


セリアは扉のそばで止まった。


「分かりきっているでしょう?」


肩越しに振り返った。


「私は光輝様の女の一人です」


扉が閉まった。


ルリカと悠真は、風呂に二人きりで残された。


湯気が少し重くなったように見えた。


ルリカはゆっくり立ち上がり、出る準備をした。


悠真は、まだ半分、羞恥に溺れたまま、ほとんど本能のように手を伸ばした。


彼女の腕をつかんだ。


その瞬間、何かが見えた。


短い映像。


子どものルリカが、床に膝をついていた。


空には黒い裂け目が開いていた。


石が宙に浮いていた。


小さな顔に涙が落ちていた。


そして、その前に、子どものセリアもいた。


立っていた。


真剣な顔で。


ルリカを見下ろしていた。


映像は消えた。


悠真は現在に戻った。


手はまだルリカの腕をつかんでいた。


ルリカは、また空に裂け目を開きそうなほど赤くなっていた。


「悠真さん、放してもらえますか?」


「悪い」


悠真はすぐに放した。


ルリカはそれ以上何も言わずに出ていった。


悠真は顔をそむけたまま、彼女が扉の向こうへ消える気配だけを聞いていた。


風呂に一人で残された。


(何だったんだ、今のは? 記憶? 夢? 湯気の幻覚?)


ゆっくりと、鼻先まで頭を水に沈めた。


湯気が彼を包んでいた。


ランタンが輝いていた。


それでも、彼は二文字の言葉に敗北した気分だった。


(忘れかけていた。転生した後でも、俺は女に縁のない童貞のままなんだ)


そのまま一人、鼻先まで沈んでいた。


屋敷の中では、ノノアが長い廊下を歩き回っていた。


床は輝いていた。


壁には高そうな絵があった。


花瓶も高そうだった。


ドアノブでさえ、魔王の報酬より価値がありそうな顔をしていた。


ノノアは、何かが目に留まって足を止めた。


ガラスケースの中に、宝石が置かれていた。


小さく、淡い青色で、中心に柔らかな光を閉じ込めていた。その中に朝が丸ごと一つ入っているようだった。


プレートにはこう書かれていた。


朝光の結晶。


ノノアは笑った。


「高そう」


数秒後、石は彼女の手の中にあった。


そのまま廊下を進んだ。


廊下の途中で、ノノアは自分の手のひらを見た。


空っぽだった。


瞬きをした。


「あれ?」


もう一度、展示ケースを見た。


石はそこになかった。


「朝光の結晶が欲しいなら、素直にお願いしてくれればよかったのに」


声は甘かった。


ノノアは振り向いた。


白に近い明るい髪の少女が、彼女の後ろに立っていた。


柔らかな目、薄い青の服、簡素なリボン、そして胸の前でそろえた両手。


その手のひらで、朝光の結晶が光っていた。


ノノアは目を細めた。


少女はわずかに首を傾げた。


「白羽リリアです。よろしくお願いします」


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