宝探し
朝ごはんの他にステラがパンを二個もくれた。
皆はお昼を食べないらしくて、次に集まるのは夜になるみたい。
「はい!優には特別にパンのお弁当です!お昼に食べてね」
「ありがとうステラ!…皆の分は無いの?」
「私達は一日一食あればいい方だったから、一日三回なんて勿体なくって…」
「優、気にしなくていい。皆、お腹が空いたら勝手に乾パンを食べるからね」
「そっか」
パンを食べた後だと、乾パンはあまり食べる気にならなかった。
ステラは食堂の掃除をしていくと言うので、水をたっぷり用意してあげた。
それと僕が居ない時の飲み水も、これでもかと沢山出しておく。
食堂を出た。
僕は城の探検が終わってないからエンフェルトとそれの続きをする。
「今日は何処に行くの?」
「何処がいい?この辺で優が見てない場所と言えば図書室もあるし、
後は応接室とー…、一番面白そうなところは宝物庫かな?」
「宝物庫が見たい!」
「色々売っちゃったけど、気に入ったものがあれば優にあげるね」
エンフェルトと手を繋ぎ、今まで来た事のない場所を歩く。
目指す場所は宝物庫。
きっと、今から宝探しができる。
期待を胸に抱き、重たそうな鉄の扉の前に着いた。
「すごく楽しそうだけど、あまり期待はしないでね?」
「うん!」
「今の話聞いてた?…優が気に入る物がまだあるといいんだけど…」
無駄に物々しい扉を、エンフェルトと一緒に開ける。
中は想像より物が乱雑に置かれて、宝物庫というより物置みたいだ。
それでも、所々に置かれている鎧や剣に心が躍る。
「前に来た時より散らかってる」
「そうなの?どうして?」
「皆、お金になりそうな物が無いか必死で探したからね。
今でも時々、誰か来てるんじゃないかな」
「あれは売れないの?」
「鎧?ああいうのは重いし安いし、足が付きやすい。
この城から盗まれた物だとバレて、調査に来ないとも限らない」
「そっか」
まぁ、そんな余裕、向こうにもないと思うけどね。
でも念の為、探すなら宝石とか金貨とかがいいかな?
何処の誰が持っていても、おかしくないのがおすすめだよ。
…いや、優に泥棒のおすすめをしてるわけじゃないけど…」
おすすめされたけど、その辺は多分もう無いらしい。
宝石も金貨もあまり興味をそそられないから、それは無くてもいい。
せっかくだから、カッコイイ僕だけの宝物を探したい。
危なそうな剣や斧に触らない事を条件に、少し自由に探す。
「これが欲しい!」
「兜だね。じゃ、それは優にあげる」
「やったぁ!…カッコイイ…」
「ふふ、確かに男の子が好きそうだね」
色々迷ったけど、兜を貰う事にした。
耳の部分にドラゴンの羽みたいな装飾が付いている。
被ってみるとちょっと大きいけど、なんとか歩くことも出来た。
「かっこいいよ。似合ってる」
「ほんと!?剣も欲しい」
「剣はダメ。怪我したらどうするの?」
「怪我しないもん」
「でもね、優しい優に戦う道具は必要ないの」
しばらく粘ったけど、エンフェルトは許してくれなかった。
でもその代わり、同じデザインの篭手を探してくれた。
「ほら、これで我慢して」
「手もあるんだ!…やっぱりカッコイイ…」
「多分、装飾が実用的じゃないから祭事用のかな?
防御力はあまり無さそうだけど、軽くてちょうどいいね。
後、ついでに見つけたからこれもあげる」
「これなに?」
「覗いてごらん」
エンフェルトが筒状の物をくれた。
言われた通りに穴を覗くと、遠くの物が近くに見える。
「望遠鏡だ!」
「これはそれなりに売れそうだけど、優にあげるね」
「いいの?ありがとうエンフェルト!高い所に行きたい」
「いいよ。でも先に何処かでカバンを探そうか」
宝物も無事に見つかり、宝物庫を後にした。
兜は被ったままで、篭手はエンフェルトに持って貰った。
いくつかの部屋を探し、
無事に見つかったカバンに、望遠鏡とステラに貰ったパンを入れた。
次はこの望遠鏡で、できるだけ遠くを見たい。
そう思ったので僕とエンフェルトの秘密の部屋に向かう。
この兜を被ったままだと、最後の螺旋階段が少し怖い。
でも、兜を脱ぐ気は起こらない。
普段より苦労して辿り着き、さっそく望遠鏡で外を見る。
「すごい遠くまで見える」
「でも何もないでしょ。面白い?」
「面白い!…わぁー…」
「優が楽しそうでなによりだけど、太陽が出ても絶対に見ないでね。
最近はほとんど雲に隠れてるけど」
確かに此処から見える景色は、何もない干からびてる土地だけ。
でも、遠くが見えるだけで面白い。
こんなに面白いのを僕だけ見るのも悪いかと思って、エンフェルトにも勧めた。
けど、見飽きてるからと断られた。
「私は景色より、景色を見てる優を見てる方が面白いから」
「それ面白い?」
「面白いよ。とっても」
しばらく何の変化も無い景色を眺め続けた。
ふとお腹が鳴り、そう言えばパンを貰ったんだと思い出した。
望遠鏡を覗くのは一旦終わりにして、カバンから布に包まれたパンを取り出す。
パンは二個あったから、片方をエンフェルトに差し出した。
「エンフェルトに一つあげる」
「二つとも優が食べて」
「一緒に食べたい」
「んー…。…皆には内緒にしてくれる?」
「うん!」
エンフェルトとパンを食べてから、秘密の部屋を後にした。
兜と篭手は部屋に残して、望遠鏡だけカバンに入れて持っていく。
もっと色々探索して、カバンの中身を増やしたい。
その後、通りがかったついでに応接室を見た。
やたら豪華な椅子はあったけど、それだけだ。
「そうだ。優にお願いしてもいい?」
「いいよ」
「中庭で水を撒いて欲しいんだ」
「わかった!」
エンフェルトに連れられて、僕は初めて"外"に出た。
中庭は植物が沢山生えていた雰囲気はするけど、ほとんど枯れて朽ちている。
此処に水を撒いて、どうにかなるんだろうか。
でも、頼まれたからには本気でやろうと気合を入れる。
「優がお風呂の最後にしてた、指からちょっと出す奴を頼めるかな?」
「え?そのくらいでいいの?」
「もっと少なくてもいい。少量で、雨みたいにできるならもっともっといい。
毎日少しずつ、優しく水を上げて欲しいんだ」
雨みたいには難しかったけど、できるだけ細く、優しく水を撒いた。
水を撒きながら中庭を一周していると、途中で枯れた花を見つけた。
花は結構好きだ。
病室で、時々だけど部屋に飾られていた。
誰が飾ってくれたのか知らないけど、嬉しかったのを覚えてる。
「何色の花が咲くかな?」
「確か、赤色とかピンクが多いかな?
でもこの中庭は、庭師の趣味で花は少ないんだ」
「そうなんだ。花嫌いだったのかな?」
「ううん、花より食べられる植物ばかりを栽培して、
食費を浮かせてるんだって、そんな噂があったんだよ」
枯れてるけど、植物の種類をエンフェルトが教えてくれた。
聞いてる限り、エンフェルトも花が好きそうだ。
此処が花でいっぱいになったら、喜んでくれるかな。
水を撒くのが終わったから、部屋に戻って休憩するそうだ。
少しソファーで休憩して、その後でステラに会いに行くらしい。
「ステラは今、何をしてるんだろうね」
「多分、明日の為にパンを捏ねてると思うよ」
「僕も手伝う!」
「優は偉いね」
ソファーに座り、エンフェルトとゴロゴロした。
ちょっとだけ眠った後、ステラに会うために食堂に移動する。
すると、エンフェルトの言ってた通り、
ステラが他数名とパンを捏ねているところだった。
「ステラ、優が手伝いたいんだって」
「え?ほんとですか?
でも残念、もうすぐ終わっちゃうんですよね」
「そうなんだ…」
「あ、でもでも!優に晩御飯のお手伝い、お願いしてもいいですか?」
「いいよ!何作るの?」
「またパスタかな~。…同じメニューばっかりで、本当にごめんね…」
「美味しかったからまた食べたい!」
「頑張って、なるべく雰囲気は変えるからね」
「でも僕、昨日と同じのが食べたい」
「そう?なら団長と一緒に、少しだけ野草を摘んできてくれる?」
「わかった!」
さっき水を撒いた中庭にもう一度向かう。
無事な植物は少ないけど、よく見れば昨日食べた葉っぱがあった。
それを数枚だけ摘んで、食堂に戻った。
…。




