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内緒の話

 倉庫内で長い時間を過ごした。

 確かにガラクタばかりだったけど、

 宝物庫と違った面白さが此処にはある。



 「これ欲しい」

 「どれ?…なにこれ?」

 「わかんない」

 「ミリー、これはなんだかわかるか?」

 「これ、あれじゃないですか?

  多分ですけど、井戸かなにかの修理部品…」

 「要りません。置いていきなさい」

 「えーっ!」



 エンフェルトはせっかく見つけた鉄の部品をくれなかった。

 でもその代わり、ミリーが良い物を探し出して僕にくれた。



 「そう言うのが好きなら、これはどう?」

 「なにこれ!」

 「パズルだよ。この二つの部品は、上手くすると外れるんだ」

 「ほんとに?やってみたい!」

 「優にあげるね。それが解けたら、新しいのもあげる」

 「やった!」

 「よかったね優。

  そろそろ此処も片付け始めてもいいかもな」

 「そうですね。全貌を把握しておいた方が今後の為にも…」

 「今までは食料品か、金目の物しか興味がなかったからな…」



 ミリーに知恵の輪を貰った。

 一見すると外れないように見えるけど、頑張れば外れるらしい。

 それに夢中になっている間、二人は多分、難しい話をしていた。



 「優、暗くなる前に戻ろうか」

 「もうそんな時間?」

 「そうだね。優が来てから時間が経つのが早い。

  今日も、お風呂に入る?」

 「入る!」

 「それじゃ、水を出してから食堂に行こう」



 外れなかった知恵の輪を大事にカバンに入れた。

 帰り際に浴室に寄って、浴槽いっぱいに水を出す。

 それを間近で見ていたミリーが、ため息交じりの感嘆の声を上げた。



 「…優は、本当にすごいですね」

 「優は命の恩人以上に、感謝しなければな」

 「…ええ、本当に…。

  私、沸かせてから食堂に行きますね」

 「一人で平気なのか?誰かに声を掛けておくか?」

 「そうですね、お願いします」

 「僕が手伝う!」

 「ダメ」

 「今日!今日だけ!」

 「ダメ」



 有無を言わさないエンフェルトの説得は失敗した。

 ミリーだけを残し、浴室を後にする。

 途中ですれ違ったお姉ちゃんに声を掛けて、ミリーの手伝いをお願いした。



 「どうして僕は手伝っちゃダメなの?」

 「優がダメなんじゃなくて、

  使ってる間は、あの部屋に子供を入れちゃいけない事になってるの」

 「ならステラに頼んで、大人になったら入ってもいい?」

 「それ覚えてたの?

  なら、まずは夜に一人で歯を磨けるようになってからね。

  今日からそうしてみる?」

 「…じゃ、諦める」

 「よろしい」



 今日は予め野草を少し摘んでから食堂に行った。

 食堂では、既にステラが食事の準備を始めているみたい。

 僕達に気付くと、大きく手を振ってくれた。



 「優!今日はあんまり会えなかったね?」

 「エンフェルトと一緒にステラを探したけど、見つからなかった」

 「探してくれたの?この城は広いからね~。

  今日も夜、部屋に来てくれる?」

 「うん!本読んで欲しい」

 「いいよ。あ、今日も鍋にお水入れてくれる?」



 晩ごはんのメニューは今日もパスタだった。

 茹でる為の水を出し、今日も盛り付けを手伝う。

 それらを食べてから、昨日同様、皆で一緒にお風呂を済ませた。


 帰りがけに歯を磨き、またステラの部屋にお邪魔した。



 「優のおかげで毎日お風呂に入れて嬉しいよ」

 「ミリーの手伝いがしたかった」

 「ボイラー室は高温になって危ないから、それは団長が許さないかも?」

 「大人になるまでダメなんだって」

 「大人なんてすぐだよ。

  ほら、時間が勿体ないから本を読もうよ」



 昨日より長く、きりが良い所まで本を読んでもらった。

 読み終わると僕を後ろから抱き締めて、

 また自分の匂いについて聞いてきた。


 僕が良い匂いだと答えると、嬉しそうに笑う。



 「たまには優と一緒に寝てみたいな」

 「エンフェルトが可哀想だから、エンフェルトと寝る」

 「団長が可哀想なの?どうしてそう思ったの?」

 「たまに元気ないから心配。泣いてる時もあったよ?」

 「うそ、団長が?…ちょっと詳しく教えてくれる?」



 ステラにエンフェルトが泣いた話をしてあげた。

 辛そうに、自分の事が怖いかと聞いてきた話もした。



 「…優。それ、他の皆には内緒にしてくれる?」

 「いいよ」

 「ありがと。なら、そろそろ団長に優を返さないとね」



 ステラに手を引かれてエンフェルトの部屋に向かう。

 扉を叩くと、またすぐにエンフェルトが現れた。



 「おかえり優。遅かったね」

 「少し話が弾んでしまって、すみません」

 「うん?ステラの元気がなさそうに見えるけど、優、何かあったの?」

 「エンフェルトが泣いた時の話を聞かれた」

 「それで落ち込んでいるのか?。

  …ステラ、お前も泊っていったらどうだ?」



 エンフェルトはステラも招き入れてから、扉に鍵を掛けた。

 ステラは扉の前から動かなかったけど、

 エンフェルトは僕を連れてベッドに入る。



 「ステラ、お前もベッドに入ってこい」

 「ほんとに、いいんです?」

 「無理にとは言わん」

 「…お邪魔します」



 エンフェルトが促すと、ステラもゆっくりベッドに入ってきた。

 ステラが、ステラじゃないみたいに静かだ。



 「優、私が泣いた事は秘密にしてくれる?」

 「わかった。ステラにも言われた」

 「いい子だね。誰にも心配かけたくないんだ」

 「…団長も、泣くんですね…」

 「私をなんだと思ってたんだ?

  …最初のお風呂は、やっぱり私にとっても、特別だったよ」



 困ったことに、それを聞いたステラが泣いてしまった。

 エンフェルトはそれについては何も言わず、

 ステラに僕を抱き締めるように指示を出した。



 「今日だけ、優を貸してやる」

 「…有難う御座います…グスン…」

 「優。明日は何をしようか」



 ステラは泣いていたけど、エンフェルトは普通に話し出した。

 明日の予定を考えていると、いつしか寝息が聞こえ始める。

 ステラが眠ってしまったんだ。



 「…ステラはどうして泣いてたの?」

 「ステラは泣き虫だからね。そっとしといてあげて。

  私達も眠ろうか」



 二度、三度と頭を撫でてくれた。

 今日はエンフェルトの心臓の音は聞けないけど、

 二人に挟まれてるから眠れそうだ。


…。

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