ステラの部屋
お風呂を一番早く上がったのは、また僕達だ。
今度はステラも一緒に付いてきた。
「エンフェルト、先に歯を磨いていこう?」
「ふふ、いいよ。ステラも居た方が怖くないだろうからね」
「怖くないもん!」
「優はほんとに子供なんですね~」
「子供じゃないもん!」
「はいはい。今度お姉ちゃんが大人にしてあげるからね」
「ステラ、冗談が過ぎると風呂を禁止にするぞ」
「わかってます!団長より先に手は出しません!」
「…お前はほんとに…。…まぁ、もうそれでいいか…」
賑やかなステラが一緒だと、今日は怖くなかった。
三人で並んで歯を磨き、食堂を後にする。
ステラの部屋の前で立ち止まり、エンフェルトと一時的に別れる。
「それじゃ、優はお借りしますね!」
「優、また後でね」
「寝ないで待っててね?」
「わかってるよ。ステラ、優を頼むぞ」
エンフェルトが部屋の方向に歩くのを見送って、ステラの部屋に入った。
扉は閉めたけど鍵は掛けず、ランタンを机に置いた。
こうして中に入り、改めて部屋を見ると、この部屋は少し狭い。
「エンフェルトの部屋より、なんだか狭いね」
「あんまり広いと落ち着かないんですよね~。
さて、優はどんな本がいいですか?」
「僕が選んでいいの?」
「いいですよ!でもやっぱり男の子は冒険譚かな?
恋愛の話なんて、興味ないですよね?」
「冒険がいい!」
「はーい。じゃ、これかな?」
ベッドに並んで横になり、ランタンの明かりで本を読んで貰った。
本の文字は、僕の知ってる文字とは全然違う。
ステラはそれを察してくれたのか、
今どこを読んでるか、指でなぞりながら読んでくれた。
「どう?面白い?」
「面白い!」
「よかった。でも、今日はこれくらいにしましょうか」
「えぇー!もっと読んで欲しい!」
「私も読んであげたいけど、団長を待たせたら可哀想でしょ」
「そっか。そろそろ寝る時間?」
「そうだね。…最後にギュッとさせて」
ステラは本を閉じて、僕に抱き着いてきた。
エンフェルトと違うけど、なんだかいい匂いがする。
「…どう?私、臭くない?」
「うん、いい匂いだよ。
昨日エンフェルトも同じ事聞いてきた」
「あはは、皆、気にすることは一緒なんだね。
…全部、優のおかげだね…。
…ほんとに、ありがとう…」
「…ステラ…?」
ステラのいつもと違う雰囲気に少し戸惑う。
ステラは名残惜しそうに僕を離した後、ベッドから降りた。
そして僕の手を引いて、部屋を後にする。
「またおいでよ。今度は、もっと早い時間に」
「また続き読んでくれる?」
「いいよ。あの本は優と一緒に読むって決めたから」
「気になるから明日も行く」
「ほんと?約束だよ!」
エンフェルトの部屋に着いた。
ステラがノックすると、すぐに返事が聞こえて、扉が開いた。
「おかえり優。ステラは優しかった?」
「うん!」
「それじゃ団長、優をお願いしますね。おやすみなさいです!」
「ああ、おやすみ」
ステラを見送り、部屋の中に入る。
エンフェルトは扉をしっかり閉めてから、また鍵を掛けた。
そして僕の手を引いて、同じベッドまで連れてきた。
「待ってたよ優。ステラと何をしてたの?」
「本を読んで貰った。面白かった」
「ステラは本が好きだからね。面白い本を沢山知ってるはずだよ」
「明日も読んで貰う約束した」
「そうか。それはよかったね」
エンフェルトと少しだけ会話した。
その後、昨日と同様に布団の中で抱き締められる。
やっぱり、此処が一番安心する。
今日もエンフェルトの心臓の音を聞きながら、目を閉じた。
次の日も同じように過ごした。
朝はパンを食べて、城の中を探索する。
秘密の部屋に行って、望遠鏡で景色を眺めてから中庭に水も撒いた。
その後、食堂を覗いたけど今日はパンを作っていなかった。
「もう生地が出来てるみたいだね」
「ステラは仕事が早いね」
「あいつは料理が好きなんだ。
ずっと出来なかったら、今きっと楽しいんだろう」
「ステラ、どこに居るかな?」
「何か用事?会いたいの?」
「用事は無いけど、居ないんだと思うと探したくなる」
「そっか。なら探してみよう」
最初にステラの部屋を見た。
けど、もぬけの殻だった。
次に近くの大聖堂を確認したけど、ステラどころか誰も居ない。
エンフェルトはついでだからと、また短くお祈りを捧げていた。
「お待たせ」
「何をお祈りしてるの?」
「優を守ってくれますようにって。さぁ次は何処に行こうか」
「ん~、適当に歩きたい!」
「いいよ」
目的地を決めずに、適当に城を歩いた。
なんとなく見覚えがあるような、ないような、
そんな似たような廊下がずっと続く。
今、どこら辺を歩いているんだろう。
辺りを見渡しながら歩く途中で、確かミリーと呼ばれたお姉ちゃんとすれ違った。
「ミリー。ステラを見なかったか?」
「ステラなら宝物庫方面に向かってるのを見ました」
「反対側か、まいったね。優、どうする?」
「ミリーは何してるの?」
「私ですか?久々に倉庫に行ってみようかなって」
「僕も行きたい!」
「暗くて埃っぽいよ?」
「行きたい!」
「ミリー。邪魔はしないから私達も行っていいか?」
「ええ、もちろん構いません」
ミリーに付いて行って、倉庫に行く事にした。。
倉庫は宝物庫の何倍も広くて、何倍も散らかっているらしい。
時折、ステラが食料を探しに行くくらいで、基本は誰も近寄らないみたい。
「ミリーは倉庫に何の用事だったんだ?」
「優にお礼がしたくて、何かないかなと」
「僕に?」
「皆、優に感謝してるんだよ。ほんとに、ありがとね」
かなり歩いて、やっと倉庫に到着した。
宝物庫と違ってボロボロの扉。
中を覗くと、足の踏み場もないくらい散らかってる場所もある。
「…うわー…、此処すごいね」
「でしょ?でもなんとなく同じ種類の物が集まってる。
あっちは食料品が多くて、この辺はカーテンとか布類かな」
ミリーは倉庫に詳しいのか、大雑把に把握してるみたいだ。
エンフェルトが足の踏み場を作ってくれて、そこをゆっくりと進む。
想像以上に散らかってて、これはこれでワクワクする。
「宝物庫の方が良い物があるんじゃないか?」
「あっちは今、ステラの他に何人も行ってるんですよ。
優へのプレゼント探し、今すごいですよ」
「それは初耳だな…。優はモテモテだね?」
「…そうなんだ…ふーん…」
「…照れてる?」
「照れてない!」
照れてないって言ったのに、エンフェルトとミリーに笑われた。
気を取り直して、僕もカバンに追加する何かを探したい。
冒険に必要なのは望遠鏡の他に、何があるといいだろう。
…。




