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乱立する黒幕説



 巨大なゴズが歩くだけで人々の視線は釘付けだ。さらにその上でくつろいでいる俺たちは言うまでもないのだが、一回り大きな鎧姿の騎士団長は特に目立っていた。


 馬車でさえ逃げるように道を譲ってくれるので道中も快適。東門に到着した後もスムーズに通してくれた。改めてゴズの有用性を感じたりもしたのだが、こいつは俺を見下して鼻息かけてきたからなぁ。


 少し様子のおかしいアサガオちゃんは騎士団長のマントにウンコ!って落書きしてる。小学生かお前は。



「プールトンとやら。話ならここらでいいのではないか?」

「そうですね。ゴズさん、ここで結構ですよ。ありがとうございました」



 東門を抜けて人気のない場所に到着したが、なにやら妙な気配も感じる。気づいているはずのアサガオちゃんが無反応ってことは敵ではないのか?


 かたやゴズは豚肉さんからニンジンもらって美味しそうに頬張っていた。彼は生まれてくる種族を間違ったようだ。



「あらためましてディーネ・フォン・アウタールフ様。寛大な対応に感謝いたします」

「……それで、話とはなんだ?」

「はい。いくつかあるのですが、まずは災厄の扉に関するお話です」

「なぜそなたが災厄の扉のことを知っている?」

「騎士団長。噂自体はサウスポイントでも普通にありましたよ」

「そ、そうなのですか?」

「アウタールフ様の仰るとおりです。わたしがいた組合でも噂は広がっておりました。今お聞きしたいのは、いったいどのような方法で扉に対処なさったのか、でございます」



 お、これは飛んで火にいるなんとやら。豚肉さんにまさかの黒幕説があるかもしれない。



「質問を返すようで悪いが、それを知ってどうする?」

「それがこの大陸にとって大きな希望となるからです。災厄の扉はそう遠くない未来にこの大陸を飲み込むでしょう。わたしたちが対抗するにはあらゆる手段を講じる必要があります」

「そのあらゆる手段とは、味方に犠牲を強いることか?つい最近も国を滅ぼしかけたアホがいたようだが」

「ヴィンス公爵ですね。魔石を使って扉の化け物を獣人国へ仕向けようとしたと聞いております」



 思わず騎士団長に目でどういうことかを尋ねたが、首を横に振って不思議そうに豚肉さんを見ているだけだった。そこまで情報を漏らしたわけではないらしい。


 少なくとも一般人が知りうる内容ではないな。いや、騎士団長がウソを吐いている可能性もあるか……。


 うぬぬ、ちょっと判断がつかない。先生オナシャスッ。



 “豚肉さんはノヴァ帝国の出身です。”



 あんたも豚肉言うとるやんけ……。

 それに帝国出身だと?これは完全にクロです。本当にありがとうございました。



 “彼はアルファの部下として活動していますので暗躍は難しい立場にあります。また、統計的に肥満型の人族に黒幕は難しいと思われます。”



 なんだその理論は……それに今の発言は全相撲協会を敵に回したぞ。次の春場所は覚悟しておけ。


 しかしアルファといえば帝国最強さんのことだったか。そもそも敵かどうかもわからん相手ですけど?



 “アルファは味方ですのでご安心を。さらに今ならご登録頂くだけでアルファの情報が閲覧できます。”



 ついに個人情報をダシに釣り始めたぞこのポンコツ。


 ちなみにだが、先生のデータベースにも黒幕についての情報はなかった。なんか並行世界の記録にはありませんとか、謎の電波を受信してよくわからないことをほざいていた。


 なので俺は先生こそが黒幕なのでは?とちょっとだけ疑っていたりする。



「待て、なぜそなたが魔石の話を知っているのだ?それは評議会にいた者にしかわからないはず……」

「それについては後ほどお答えしましょう。まずは災厄の扉についてですが、確かに扉が開かれたというのに目立った被害が報告されていません。そんなことは奇跡が起きない限りありえない。ですが、現実にその奇跡が起きている。そうですね?アウタールフ様」

「……」

「この時点で多くの疑問は残りますが、これはとても喜ばしいことです。過去いくつもの凄惨な被害をもたらしてきた災厄の扉に対抗するどころか、まさに打ち勝ったと言っても過言ではないのですから」

「打ち勝った、ね」

「これは途方もない戦果です。この事実が広まれば各国が躍起になって探りを入れるでしょう。その手段を知りたがるのは当然ですから。きっとヴィンス公爵を退けるだけでは終わりません」



 回りくどいぞ豚肉さん。皮肉か脅しかはっきりしてほしい。



「残念だが、それを教えるには信頼関係が足りないようだ」

「なるほど、失礼いたしました。扉への対抗策を知りたいのは本当ですが、アウタールフ様にも言えない事情がおありのご様子。ひとまずは諦めましょう。ですがもう一つ。先ほど魔石の話をしましたが、それに関連する情報を求めております」



 あ、ずるくね?今度はこっちのターンでしょうがッ。



「扉の怪物を魔石によって誘導する手段をヴィンス公爵に伝えた人物が誰なのかを知りたいのです」

「な、なんだと?それはいったい――」

「それはこっちが知りたいくらいだ。間違いなく帝国人しか知り得ないことなんだから、あんたのほうが詳しいはずだが?」

「……ア、アウタールフ嬢?」

「まぁ騎士団長はのんびり聞いていてください。どうなんだ?帝国出身のプールトンさん」



 すまん団長、説明がめんどいから黙っていてくれ。


 豚肉さんは驚いた表情で目を見開き、少しの間放心したように固まっていた。



「……申しわけありません。わたしたちも魔石の件を知ったのはつい最近のことでして。我が主も不在のため、思ったように調査が進まないのが現状です」

「遠回しに無関係と言いたいようだが、その保証はどこにもないぞ」

「仰るとおりにございます。なんとも情けないお話ですが、このように騎士団長様にも目を付けられてしまいました。アウタールフ様にお会いできたのは偶然でしたが、この機会を逃す手はないと思ったのです」

「あんたの隠れたお仲間に取り囲まれている状況でなにを言われても信じられんぞ?俺たちを殺すつもりはないようだが、交渉するならもう少しやり方を考えたほうがいい」

「……いやはや、度重なる無礼をお許し頂きたく願います。わたしたちがアグネア王国の存続を望んでいる、ということは確かですので」

「…………そなたは帝国の者だったのか」

「はい。仰るとおりでございます」



 豚肉さんは剣聖アルファの部下で、例の黒幕を探している。そうなると不正行為をしたという副団長とかも帝国人の仲間だったりするのか?


 なんかめんどくせぇな……パパっとヴィンスを締め上げて吐かせたほうが早くない?



「ううむ……私が口を挟むには知らないことが多すぎるようだ」

「こちらのアウタールフ様ならば状況を正しく把握されておられるご様子。きっと多くの真実を教えてくださると思いますよ」

「……はぁ?自分で説明するのが面倒だからって俺に押し付けようしているな貴様。許さんぞ!」

「い、いえいえいえ、そのようなつもりは――」

「なら言い出しっぺの責任として団長に説明して差し上げるべきだろう。なぁゴズ?」

「ブモ」

「ゴズもそう言っている。断るなら今日から貴様の首は組合のインテリアだ。喜べ」

「か、かしこまりました!ただちに説明いたします!」



 豚肉さんは困り顔で騎士団長に状況説明を始めた。言い出しっぺなんだから当然よ当然。懇切丁寧に自分で教えて差し上げるべきだ。


 さぁ俺は騎士団長のマントをデコレーションしているアサガオちゃんを回収して、ラット君と優雅なティータイムといこう。無駄に疲れたわ。






 それからのんびり過ごして十分ほど経過したのだが、まだ騎士団長と豚肉さんのお話は継続中だった。


 しかしなんだ、ディーネというかアウタールフ家は本当に災難だな。せっかく扉の脅威をやり過ごせたと思えば、今度は大陸中から目を付けられる予定だなんて。かわいそうに……


 俺にはどうしようもない。もう前のような無茶もできないし――あ、そうだ。人のことよりまずは自分のことだろ。この仕事が終わったら武器を調達しようと思っていたんだ。障壁を張れないから空手無双もできないからな。


 ラット君の名前とシルバー家の威光を利用して割引してもらうか?ちょうどここに御曹司がいるし……ん?



「どうしたんです?さっきから静かですね」

「……もうなにがなんだかわからなくて」

「確かにラット様は色々と知り過ぎました。今後は気をつけてください」

「…………え?」

「あの話はそこらの貴族が聞いていい内容ではありませんし、口外すれば殺されますよ?頑張ってください」

「そそそんな!?どうがんばれって言うんですかぁ~!」



 震えてガチ泣きするラット君が可愛い。同じ子供でもどこぞの赤髪幼女は惨殺死体から金目の物を漁るほどタフだったからな。俺のほうがドン引きだったよ。


 しかし、こんな世間知らずな子供が自分の身を守れるか?こいつの専属護衛だって頼りになるかは――



「ブモ?」



 あ、丁度いいのがいるじゃん。



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