第99話 栗毛聖女、ギルドに誘う。
「───"天穹・始導"ッ!」
空を八の字に飛び回り、プレイヤーのアイテムを奪おうとするモンスターはデブった鴉の〝大鴉〟で、射程範囲に一瞬入った時を見計らって私は必中の破魔矢を空へと放ちます。
「―――|スペル・ギブ・チャージ《呪文加詠唱》ッ!
「……呪詛三箋、怨恨尽きぬ燃え尽きぬ、悲惨は飛散な螺旋なり、因果砕くは我が信条なりっ! ───付与呪術・炎禍爆砕っす!」
『デュフッ! ―――ピィ~~~ッ!』
いつもならミコさんが付与呪術で麻痺をかけて空を飛んでいるモンスターを落として迎撃するところですが、今は魔法使いが二人もいるので遠距離から撃破していくスタイルを取っています。
「射程に入りま」
「いいから早く、―――詠唱短縮ッ! 魔法を撃ってください」
天穹・始導は矢の滞空時間が長く、詠唱時間が長く取れるため、マリアさんが強化したマヤさんの呪術を矢にかけて大鴉は大ダメージを受けました。しかし、それだけでは仕留めきれないため反撃のためにすぐさま急降下し始めましたが、眺めているだけで動こうとしないサンダーさんに対してマリアさんが活を入れます。
「ッチ。 ―――雷よ、撃ち落とせッ!」
ピリリィッ!
「―――正拳突きッ!」
「―――刺突・一点ッ!」
感電して落ちてきた大鴉を見て私とミコさんは目で合図を送り合い、大鴉の墜落ポイントに対して左右からスキルを地面に激突すると同時に発動し、私たちでトドメを刺しました。
「ふむ。これで[カソッタ村の害鳥駆除]のクエストは終わりじゃな」
「もう出ているクエストはあと一つか二つかな?」
「確か残っているのはアイテムの納品クエストが二つっすよ」
「新しいクエストが出ていないか僕見てきます」
サンダーさんがNPCに順番に話しかけて新たなクエスト探しに行きます。カソッタ村でクエスト攻略を始めて二日が経ち、順調にクリアしていった私たちはこの村でのクエスト制覇も目前となっていました。
「あーし以外にも気になってると思うっすから、あーしから聞くっすけど、マリアは本当に初心者っすか? 動きに無駄がないというか効率的に動きすぎっす」
「うん。それに位置取りも完璧だった。まるでアユちゃんみたい」
私たちのパーティはクエスト制覇するまでということですので、もうすぐ解散するというのもあり、踏み込んだ話をマヤさんがし始めました。
「ふふふ。私はハナさんというプレイヤーに憧れてゲームを始めましたけど、ラピスちゃんたちの戦い方も何十回と見返して勉強したのよ?」
マリアさんが言うのは、ハナさんの【厄災】トロピドラゴン戦の動画を何度も視聴して、多人数への支援をこなすハナさんのような支援職を目指していたところ、動画のところどころで出てくる私たちの動き方も一緒に覚えてしまったそうです。
「とは言ってもね~、ラピスちゃんみたいに動きながらあれこれは私にはできないし、アユちゃんのような聖属性プールで攻撃なんて発想力は持っていないから大したことはないのよ?」
確かに私たちの動きはずっと組んで来たというのもありますが、アユちゃんやプリアちゃんの立ち位置は固定化されています。射程ギリギリの位置かつ、私たち前衛の真後ろではなく右寄り。これはミコさんが槍を両手で装備し攻撃をしている時にもすぐに振り向いて状況を把握できるようにするためです。
「それでも十分すぎる支援じゃった。感謝する」
文字通り、当たらなればどうということはない。装備の懸念はあったもそれでも寄生と呼ばれるようなこともなく、支援職として十分に役割を果たしたマリアさんに私もお礼を言います。
「あ、そういえばアユちゃんで思い出したけど、アユちゃんも装備ってずっと初期装備のままナミノで狩りしてたよね」
そんな攻撃が当たらないようにしていたアユちゃんの立ち振る舞いを見てたのなら私たちが戦いやすいのも頷けました。
「お待たせしました。連続クエストも発生していませんし、《《この村のクエスト》》は全部終わったので次の村へ行きましょうか」
「《《そうじゃな》》。ではアレナシティへとフワマリンネにて向かって、そちらで解散ということにしようぞ」
私たちは再びフワマリに乗って町から町へと移動します。
「この子、フワマリちゃんでしたっけ? 本当に便利で可愛くていいね~」
「あーしたちも【厄災】クエストをやってみないっすか?」
「カザグルって初心者の町じゃないですか。僕はそんな遠くまで戻るのは嫌なので遠慮しておきますね」
ピコンッ
空の旅を始めてしばらくするとミコさんからメールが届きました。恐らくはもうすぐパーティが解散するのでどうするかという内容かなと思いながら開きます。
[解散前にフレンド登録を行うかわっちが聞いてみる。お主はわっちに合わせておくのじゃぞ]
そこに記されていたのは、とりあえずはフレンド登録の話だけだして解散する方向でという内容でした。
「サンダーさんってそんなに先に進みたいのはなんでなんですか?」
「そんなの攻略の前線へ行くほど強い装備が手に入るからですよ。ゲームっていうのは装備の更新で強くなっていくものでしょ。あの村は人がいないのでもしかしたら情報の出回っていないレア装備がと思ったのですけどハズレでしたね」
このパーティ、……やっぱりそうですよね。違和感を覚えたのはクエストの受注する順番でした。そして、数を狩るからというのとドロップアイテムの持ち逃げ対策ということで清算は狩りの都度にNPCへの売却で行われました。
[マヤさんも言ってたけど、私たちってまだクエスト残ってるよね……]
[うむ。それでもまだあやつをギルドに誘う気はあるのかや?]
初めのうちは私たちとプレイスタイルが合うしいいかなっと思っていました。けれど、一緒に狩りをするうちにゲームを楽しんでるように思えない行動が見受けられて……、最後には自分さえクエストが終わってしまえばそれでいい。その上、次の町への移動まで私たちを利用しようとしているように感じました。
[ううん。《《サンダーさんは誘わない》》。ギルドマスターとしてみんなで遊ぶ気のない人は私のギルドにいてほしくないから]
ギルドマスターとして私は決断します。……あの時、セピアさんにギルドに誘われて断ったのはメンバーの人を私はまったく知らないので、〝人として合う合わない〟がわからないからでした。それに《《ナツキ》》さんは私が居心地の良かった〝第六天明王〟に居辛さを感じてギルド離れていったのです。
[友人としてサンダーさんが見てくれているならそれでいいし、違うなら悲しい。ただそれだけだよ]
プレイスタイル、ゲームへの価値観が違う人がギルドにいるとギスギスします。ギルドというのは心に寄り添った居場所になると思っているので、私は、私が人として合う人しかギルドに入れないことを決意しました。それでもセピアさんと同じで友人としてと言ってくれるなら私は力になりたいと思っています。
しかし、その想いも届かないほど私と彼は合わないんだと思い知らされ、アレナシティに着いてこのパーティは解散しました。
「また何かあったら連絡します。ありがとうございました」
サンダーさんはフレンド登録をミコさん、マヤさん、マリアさんとしましたが、恐らくは自分の助けてほしい時にだけしか連絡してこない気がしました。そして、ミコさんは当然断ると思うので彼のその後は私が知ることは今後出会わない限りないのかもしれません。
「それじゃ、もっかいカソッタ村にいこっか」
「うむ。残りのクエストを終わらせるとしようぞ」
私たちが再びアレナシティを軽く散策して、三人が去ったのを確認してから《《西の出口》》へと向かいます。
「あの村に戻るんならあーしらも乗せてもらってもいいっすか?」
「というよりは、またパーティ組んでほしいなって思ってまた待ち伏せしちゃいました~。―――私たちもあんな半端で村から離れるのは嫌なのですよ」
「―――しかたがないのぅ。どうするのじゃ? 《《ギルマス》》よ」
ミコさんがわざとらしくギルドマスターと呼んで私の方を見てきますけど、そんなの答えはもう決まってます。
「もちろんだよ! それじゃパーティ組もっか」
「ラピスよ、ほれ。―――もう一声あるじゃろ」
わかってますよ。ミコさんには副ギルドマスターをやってもらう予定ですけど影のギルマスみたいなりそうですね。
「え? なになにっ、もしかしてギルドに入れてくれるの!?」
「マリアは気が早い。あーしら知り合ってまだ数日っすよ?」
期待に満ちたマリアさんと、期待してもいいのかなっという表情をしたマヤさんが可愛くて、私が照れながらですけど二人をギルドに誘います。
「あの、よかったら、ギルドに入ってくれないかな? ギルドはこれから作るんだけど……、二人とはこれからの一緒に遊びたいと思ったから」
「もちろんよ! ラピスちゃん、ありがとう!」
「あーしも楽しかったっすから。そう言ってもらえると嬉しいっすね」
一つの返事は食い気味に。もう一つの返事は控えめに。そしてマリアさんの顔が近いっ!
「よかったのぅ。これで7人じゃ」
「うん! 二人ともよろしくね! ―――そういえばアユちゃんたちも進展あったのかな?」
再びフワマリに乗って移動をしながらアユちゃんにメールを送ると意味不明な返信が来ました。
[そっか! ラピスちゃんが入れてもいいって思った人たちか~。早く会いたいな! もちろんラピスちゃんやミコさんにも! あ、そういえば私たちも3人の候補を見つけたからこれでちょうど10人だよね? 私たちの彼ピも紹介したいし明後日にノドカナ村集合しない?]
……彼ピ? 私たちの? とりあえず内容をみんなに伝えて、集合は明後日ということなのでカソッタ村のクエストを終わらせてから合流するという予定で動くことになりました。




