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第91話 栗毛聖女、ステータス強化スキルを取得する。

『かかってこいやぁー!』


「もしかして私って不幸体質!? ウォーターブロック(水塊)ッ!  ホーリーアドオン(聖属性追加)ッ! このゲームを初めてからずっと水属性耐性のモンスターと戦っている気がするんだけど!」


 ダンジョンを進みだして最初に遭遇したのは〝動く案山子(ウゴクカカシ)〟という文字通りのモンスター2体で、移動はできませんけど攻撃してくるやっかいな案山子です。何が厄介というと、ダメージの入らないオブジェクト(置物)の案山子に紛れていて攻撃時以外は動かないため攻撃対象として認識(ターゲット)するのに誤認して無駄撃ちを誘ってくるのです。そして、この〝動く案山子〟は藁で出来ており水属性攻撃を吸収してしまうのでアユちゃんは文句をいっているのでした。


「言われてみれば不遇属性よのぅ……。わっちなら初心者には絶対に勧めまいて」

「私、一応は初心者だから! ミコさんもうボケたの?!」

「な、それは言ってはならぬっ!  少しは反省せいっ! ―――刺突・推飛ッ!」

「ちょっ、それはナシでしょ!? ───こっちに来るなぁああ!  泥沼(クァグマイアー)!」


『うわぁああああっ! ―――ぶへっ!』


 〝動く案山子〟はNPCと同じような言葉を話せるモンスター版NPCのような感じで、人間の叫び声がこのモンスターから聞こえてきます。ちなみに、悲鳴の原因はミコさんがアユちゃんに向けて〝動く案山子〟をノックバックさせて強制移動して押し付けたのと、沼に足の棒が沈んで転んだせいです。モンスターのくせに妙にリアルですね……。


「打撃も効きづらいけど……、耐性100じゃないみたいだし私はなんとかかな。───正拳突きッ!」

「わたくしにとってはカモですわね! 案山子は斬られるためにあるのですわ!」

「ミナツちゃん! ちょっと違うよ! 今の私にはできないけど燃やすためにあるんだよ!―――ヒールッ!」

「そういわれるとそんな気もしてきましたわ。では―――、火炎斬ッ!」


 ザシュッ! ボッ!


『ぐわぁあああああああっ!』


 もう一体の〝動く案山子〟は私とミナツさんが対応していて、AGIが低く避けきれずにダメージを受けたミナツさんをプリアちゃんが即座に回復させてから斬り、追加効果で燃やして倒します。


「それよりもこの悲鳴、なんとかなりませんの?」

「恐らくは人型のモンスターと戦う練習のようなものじゃろうて。案山子だからこそ今は斬れるのじゃ。ありがたく悲鳴を受け取るとよい」


 VRゲーム特有の人型モンスターと戦う時の忌避感を和らげる目的のモンスター、恐らくはそうなのでしょうね。そうなると逆に言葉を発しない人型のモンスターもそのうち出てくると思い、ミナツさんは大丈夫かなっと少し心配になりました。けれど、今〝動く案山子〟を躊躇いなく斬れているので問題ないような気もして考えるのをやめます。


「ねぇ、このダンジョンって迷路っぽいしお宝あるかな?」

「あるんじゃないかな? 感じ的に隠し部屋とかありそうだもんね」


 私たちは〝紙の鳥(ペーバード)〟というダンジョンの天井に紐で吊るされているモンスターや、同じく天井から吊るされている〝円盤反射丸(リフレクマル)をアユちゃんの魔法を主火力として、近接組は遠距離スキルを駆使しながらで倒して進みます。


「―――空波拳ッ! はぁ……、アユちゃん以上に私にとっては嫌なダンジョンだよ~」

「ラピスちゃんの弓! 使えないからね!」


 プリアちゃんも楽しそうですね。たぶん、私なら何か対策を思い付くんじゃないかと期待しているんでしょうけど、ちょっと新しいスキルでも取らないと難しいかなと思います。


「必中(笑)じゃな」

「う~~~、ミコさんまで~。はぁ……、間違ってはないんだけど悔しいかもっ」


 私は天井を見て壊せないかを考えてすぐにその考えを捨てます。空へ向けて放ち上空で必中判定を付与した再ターゲティングを行い攻撃する〝天穹・始導〟は必中スキルなのに天井がある場所では使えないのです。本当に恨めしいです。


「ラピスちゃんもレベルがそれなりに上がって安定しているんだから器用さ(DEX)も上げて普通に弓を使ったらいいんじゃない?」

「……それだよアユちゃん! 私、なんのために武道家を選んだか思い出したよ!」


 私はアユちゃんのステータスを上げたらいいという言葉で初心に立ち返って。ありったけのスキルポイントを《《アクティブ・ステータス上昇スキル》》に注ぎ込みます。


「気功法・集中妙技ッ! どうだぁ! これで私も安定した長距離攻撃ができるよ! ―――やぁ!!!」


 5分間だけDEXを大幅に上昇させるアクティブスキルを使用して私は目についた〝円盤反射丸(リフレクマル)〟に向けて弓を引くと、これまで狙った場所へと飛んでいかなかった矢はステータス補正を受けてかしっかりとターゲットにした〝円盤反射丸〟の中心へと……吸い込まれて、中心に空いている空間をうまく通り抜けていきました。


『カラカラカラッ』


「あははっ! 《《ラピスちゃん》》って面白いね」


 さすがにこれは私も笑って、円盤反射丸もクルクル回りながら笑って、みんな笑って、―――ミナツさんが初めてラピスちゃんと呼んでくれて。心の底から取得してよかったと思えるスキルになりました。

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