第9話 栗毛修道女、GFOで初戦闘をする。
少し開けた場所に出ると、反対側からフワマルという風船のようなモンスターが草むら現れました。
「おー、コレがモンスター?可愛いし攻撃してこないね。倒すのに抵抗あるよー」
アユちゃんが不用意に近づきましたがフワマルは襲ってきません。流石に初心者向けモンスターで視認攻撃型はいないかな。
「そうだね。この子は攻撃反応型なモンスターでこっちから攻撃しないと攻撃されないけど可愛くてもモンスターは倒さないと経験値もアイテムも貰えないから倒しちゃおう」
「ラピスちゃんって割り切ってるあたり流石ベテランだよねー。こんな可愛いのに〜」
「うーん、大抵のゲームにはペットや召喚獣システムがあるから実装されたらいつか仲間に出来るかも。だから倒そ?」
アユちゃんの長い葛藤を終わらせて、なんとか戦闘する雰囲気へ切り替えます。ちなみに、セピアさんことナツキさんの召喚術がスキルが変換されずに元のまま使えるので恐らく遠くないうちに召喚術士の職業が解禁されると思っていますが確定ではないので今はそこまでは伝えませんでした。
「視線をモンスターの中央に合わせて。ちゃんとターゲティングされたらモンスターの名前が見えるから、私が一発殴ったら詠唱を始めてね」
「わかった!」
アユちゃんに指示を出してから私はターゲティングしてあるフワマルへと杖で物理的に殴りかかります。ただし初心者用ロッドは魔力補正+5は付いていますが物理攻撃力1と本来は物理的に殴るのを想定していないので、恐らく1ダメージしか与えられません。
殴られたポコッという音に反応したかのように振り向いてフワマルは私に向かってプクーっと膨れて威嚇しました。よし、これでターゲティングされたはずです。
「今だよ。好きな魔法で攻撃してみて」
「っと、バブル」
1秒ほどの詠唱時間が過ぎた後、魔法が発動して泡がフワマルを包み込みます。
『きゅきゅ〜〜〜』
フワマルが苦しんだ後に泡が弾けると少し萎んでから今度はフワマルがパンッと弾けました。
「やった!初勝利っ、V」
「う〜、V」
「あははっ!魔法使いになったみたいで楽しいね!」
「今のアユちゃんは誰が見ても魔法使いだよー」
楽しそうにアユちゃんがブイの字を指で作って腕を私に突き出すので、子どもっぽくて恥ずかしいですが私も同じように返しました。けれど、初めての体験ではしゃげるアユちゃんが⋯⋯。
「アユちゃんが少し羨ましいな」
そんな心の声が漏れてしまって、アユちゃんが目をパチパチし、何故か私をぎゅーっと抱きしめました。
「ラピスちゃんと2人だから楽しいんだよ?ラピスちゃんも私との冒険?は初めてだよね。だったら初めてを楽しまないとっ!」
「⋯⋯うん。ありがとう」
本当に茉実ちゃんはラピスの気持ちを察するのが上手です。少し鼻声だったけどアユちゃんも微笑んでくれてるし笑って応えれたよね?
「あ、ほら。アイテムが落ちてるよ」
「ほんとだ」
アユちゃんが私から離れてドロップしたアイテムを指で指して教えてくれました。これは私に拾ってことかな?
「えっと通常ドロップっぽいのと」
「初勝利の労働の対価だー。お金になるやつだよね」
「うん、後でまとめて精算するから楽しみにしててね」
一部のモンスターを除いてゲーム内通貨はドロップしないため、モンスター系統特有のドロップアイテムをNPCに売却するのが一般的なお金の稼ぎ方で、基本的に狩りに出かけて帰って来たらアイテムをお金に換金して人数で分配する"精算"をするまでが"パーティ"とアユちゃんに説明しました。
「ほんと仕事みたいでリアルだよねー」
「相手もリアルにいる人だからね、信頼関係って大事なんだよ。またパーティを組むかもしれないし、悪い噂が流れると他の人とも組んでもらえなくなるからね」
「あ、あっちにも光ってるのがあるよ!ラピスちゃん急いでー」
アイテムの光が点滅し終えると消滅してしまうのでアユちゃんが私に急かします。
〔移動速度増加〕
私は急いでアイテム回収をしようとショートカット登録してある移動速度増加の魔法を自分に掛けようとして違和感を感じました。
(あれ?押せない?)
目的地点へ移動アクションをしながらの魔法詠唱だったので足を止める事なくアイテムの元に辿り着いてギリギリ回収できましたけど仕様が違うのかバグなのかちゃんと検証しないとですね。何はともあれ、私のやるべき事は決まってます。
「レアアイテムをゲットしたよー、V」
アユちゃんにレアアイテムの報告を笑顔でする事です。
「やったね!V」
そう言って返してくれるアユちゃんと笑いあって、もう何匹かフワマルを倒して狩りを終えて私たちは戻る事にしました。




