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第10話 栗毛修道女、運営に問い合わせる。

「傷を癒せ、回復(ヒール)」


 どうして魔法が発動しないんだろう?そんな疑問を抱きながら私は街に戻ってから再度、詠唱付きで回復魔法を使ってみますがやっぱり発動しません。


「ラピスちゃん、だいじょぶ?何かあった?」

「スキルが発動しないの。バグだと思うから運営に問い合わせしてみるね。心配してくれてありがとう」


 回復魔法を街中で無意味に発動しようとしたのに何も起きなかったら、流石にアユちゃんが初心者でも異変に気付くよね。とりあえず2人で中央広場のベンチに腰を下ろしてメールの作成をします。


[「件名:聖職者スキルが発動しない不具合について」 当アバターにて、月影オンライン(MSO)から|GOD・F・オンライン《GFO》へのコンバートを行いましたが聖職者スキルが発動しません。転職によるスキル再取得も出来ておりショートカット登録も可能ですが、スキルが通常発動もショートカットによる発動もしません。不具合かと思われますので調査、対応のほどよろしくお願いします。]


 私はさっそく出来上がったメールをサポートセンターへ不具合報告として送信して、送ったメールをアユちゃんに転送しました。


「こんな感じなんだー。せっかく初めての狩りだからショートカット機能で驚かせようと思ってたのに残念だよー」


 "星流の指輪"を装備して初心者向けのモンスターと戦っていたので受けるダメージはほとんど1だったし、5分ごとに発生するHP自然回復とレベルアップによるHP、MP全回復によって回復魔法を使わずにアユちゃんとの狩りはスキルなしで乗り切れましたがスキルが使えないと行ける狩場に限界は来ると思いますし、心配してくれて隠しておくのも心が痛いので私は正直に伝えました。ついでにショートカットの話をしたのは狩り中に私が突然困惑したのをアユちゃんは悟ってると思い、変に心配して欲しくないから少し戯けて残念がりました。


「大丈夫、きっとすぐに対応してくれるよ。そしたら明日はもう少し遠くまで行こうね」

「うん。アユちゃんも魔法を使うのに慣れてきたし楽しみにしておくよ」

「そうだ、せっかくだからショートカット登録の仕方とか教えておくね」


 そんな私の気持ちなんか知ってるけれど知らん顔で、アユちゃんはもう明日には不具合が解消されて今日より遠くへ行く話をしてきたので私の気持ちも前向きになり、狩り中に教えようと思ってたショートカット機能について説明を始めました。


「設定できた?」

「うん、たぶん大丈夫」

「じゃあ試しに空にバブルを打ってみようか」

「んー、ラピスちゃん、ちゃんと見ててね」


 一通り教え終わった後、実践をお願いしたはずが意味深な前置きしたアユちゃんは立ち上がり空に左手をかざしました。そのままバブル(泡)を無詠唱で放ち、凝視してターゲティングしたバブルに聖職者の隠しスキルであるホーリーアドオン(聖属性追加)を掛けます。それにより光の泡と貸したバブルに武道家の隠しスキルエアショック(遠当て)で泡が消える前に空中で破裂させると、光の泡は飛散してただのバブルの魔法とは思えない煌びやかな残像を空に花火の様に残して消えました。


「⋯⋯え?ちょ、待って。アユちゃんショートカットの使い方、私より上手いんだけど」

「ラピスちゃんは丁寧だからそれでいいんだよー。私はほら、鮎だから!」

「ごめんなさいっ!意味わからない」

「あははっ、ラピスちゃん元気出たみたいで良かったー!」

「うん。元気でたし凄かった!アユちゃん才能あるよ、聖女の私が保証する」

「それはそうとショートカット発動をやってみて思ったんだけど、スキル名はやっぱり叫びたいね」

「だよね!せっかくのVRだけどファンタジーだもん、さっすがアユちゃん分かってる」


 様々な職業の見習い限定スキルを取得したアユちゃんだからできる芸当だと思いながらも思いつきでコンボを、しかも魔法だけでなく武道家のスキル(技)も混ぜたショートカット3連撃を繰り出す才能に私はワクワクしました。そのせいかどうか分かりませんが、よくわからないテンションになってアユちゃんと笑い合います。


 そんなこんなをしていたらピコンッ!と新着メールが届いたお知らせが出てきたので差出人と件名を確認しました。


[Re:「件名:聖職者スキルが発動しない不具合について」]


「あ、返信きたみたい」

「対応早くて良かったね。いつ直りそうって

書いてある?」


 運営に問い合わせをして返信が来るまで30分とかかりませんでした。アユちゃんは喜んでくれてますが私はそれどころじゃありません。


「え、⋯⋯仕様です。って書いてある」

「ラピスちゃん、ちょっと私にも見せて」


 アユちゃんにまたメールの転送をして2人で何度も読み返します。


「本当に書いてあるね、仕様です。って」


 何度見ても内容が変わる事は当然なく、詳細はNPC神父へとご確認下さいと書かれていました。


「とりあえず行ってみようか」

「⋯⋯うん、そうだね」


 かなりショックで心ここに在らずだったけど、アユちゃんのおかげでなんとか教会へと辿り着くことができました。

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