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第11話 栗毛修道女、信仰神が違います。

 ゲーム内時間は夕方を過ぎて夜の帳が下りました。"仕様です。"という運営からの回答により聖職者スキルが使えないという裁定は覆らない現実を私は受け入れて、その原因をNPC神父に聞くために教会の扉を開けます。


「こんばんわ。神父さん、少し聞きたいことがあるの」

「迷える子羊よ、お待ちしておりました。主神より神託を頂いております」


 教会内を蝋燭の灯りが仄かに照らし、正面に見える大樹のステンドグラスからは月の光が差し込んでいます。そんな夜の教会で、奥にはランタンを持った神父さんが私を待っていました。


「ラピスちゃん、運営からの神父様に確認しろってそういうこと?」

「みたいだね。仕様上の質問は神託って形で教えてくれるって」


 一緒について来てくれたアユちゃんが設定を察して、私もメールの意味を理解しました。


「なら教えて。スキルが発動しないのはなんで?コンバートでのスキル引き継ぎの時に何か間違えたってこと?」

「いいえ、コンバートは正常に行われていますし、スキル再取得も問題ありません」


 私は可能性としてコンバートエラーによるスキル引き継ぎ失敗を考えて神父さんに尋ねましたがエラーはなく、やはり仕様のようです。


「ならどうしてスキルは発動しないの?!」


 仕様でスキルが発動しない何かがあるのなら、原因を対処すればスキルを使えるようになるはず。その原因を私は知りたくて言葉に力がこもります。


「結論から申し上げれば、コンバートにより引き継いだ貴女のスキルは信仰神が違います」


 ごめんなさい、すぐに理解できなくて神父さんの次の言葉を待ちます。


「光雫世界(この世界)の本来の聖職者スキルは、陽光神様への信仰心を糧にスキルを発動します」


 聖職者の職業は神に祈りを捧げて御力を借りて魔法にする設定なので世界が変わろうとスキル発動の原理は同じですね。


「貴女はコンバートによって輝夜世界(前の世界)の夜天の女神様を信仰している聖職者としてこの世界に転移されました。ステータスの信仰神がカスピエッタ様になってらっしゃるはずです」


 そう言われてステータス画面を確認すると職業の下にカッコして(信仰神:カスピエッタ)と確かにありました。


「確認して確かにそうなっていたけれど、それだと輝夜世界の聖職者スキルとしてスキルが発動するはずですよね?」

「はい。本来であれば発動しますが、ここは陽光神様の世界です。夜天の女神様の力は例外的に昼と夜が同時に来ないように力が及ばない仕様となっています」


 そんなピンポイントで世界を転移する聖職者がいなかったためか、妙にリアルな設定が生きたレアケースのようです。


「もちろん対策として各世界で神からの寵愛クエストにより"加護"と名の付く聖職者スキルがありまして、性能を引き上げる必須スキルとしてプレイヤーは自然とスキルを獲得し、どこの世界でもスキルが発動するように調整をしていましたが、貴女はスキルを取得せずに上位職である聖女になられて転移されたようですね」

「⋯⋯あ、"夜天女神の加護"は"夜天の宝玉"をプリアちゃんにあげちゃったからスキルを取れなかったんだった」


 魔術師のプリアちゃんは燃やすのが好きで、最高ダメージに挑戦してたらうっかりイベントに必要なアイテムも燃やしちゃって、代用品の高レアアイテムとして使ってってあげちゃったのを思い出しました。


「ねえラピスちゃん、話聞いてたら加護スキルなしに聖女様だったラピスちゃんって凄いんじゃない?」

「かも?とりあえず続きを聞こうね」


 言われてみればそうかもと思いながらも恥ずかしいので神父さんに続きを促します。


「ですので、貴女の習得している聖職者スキルは"夜天女神の加護"の未習得により発動しませんし、信仰神が違いますので未習得の聖職者スキルを新規で取得されても発動いたしません」


 ちょっと待って。それって聖職者のスキルが全て使えないってことなんじゃ⋯⋯。


「わかりました。夜遅くに(・・・・)対応してくださりありがとうございました」

「ありがとうございました!雰囲気バッチリでしたよ」


 中の人にお礼を言って私はアユちゃんと教会を後にしました。ってアユちゃん、空気読んで!神父さんを演じてくれてた運営の人も苦笑いしてるじゃん!


「はあ、納得はしたけど少しだけ叫んでいいかな」

「どうぞ」


 アユちゃんは楽しそうに見てますけど私は複雑です。VR MMO RPGはゲームというよりリアルの一部だと私は思ってきました。けど、コレばっかりは言いたい。


「VRにそんなリアリティ求めてません!」

 (>_<)


 と、顔文字のような私の表情にアユちゃんが爆笑しながらとりあえず今日は解散する事にしました。


 栗毛聖女の新世界での受難は始まったばかりだと、これは始まりだと。この頃の私は知りませんでした。




──────


新たな冒険がここから始まります。

個人のイラストレーター様に描いていただいた表紙絵のようなものがありますのでよろしければご覧ください。


栗毛聖女の受難【イラスト】 - カクヨム https://kakuyomu.jp/users/takkyun/news/16818093078880627655

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