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第12話 中の人、原因を調べる。

「VRMMOの運営会社がパソコン使って報告書を作成とか笑えるな」


 夜勤で22時に出社した俺は部屋で一人サポートセンター宛に溜まった数多の問い合わせメールに目を通した。仕事内容としてはユーザーからの問い合わせの中でも緊急性の高いと思われる案件に対してのみ対応するため、いつもならスマートフォンでゲームでもしながら簡単に片付く案件を処理したりするだけの時間だが今日は違った。


「VRにそんなリアリティ求めていません!か、リアルってのはもっと理不尽(リアル)だけどな」


 俺、南出勇太(みなみでゆうた)は脳波読み込み型のフルダイブ仮想現実(VR)技術を開発した会社に新卒で入社したが、研修が終わると同時に子会社へ出向となり新作オンラインゲームである|GOD・F・オンライン《GFO》の運営チームに配属された。最先端デジタルの環境で仕事が出来る!と入社時は期待に胸膨らませていたけれど、現実は手書き書類にデスクトップパソコンでの簡単な問い合わせ対応と上司への報告ばかり。自嘲気味にそんな事も呟いてしまうのも無理はないと思う。


「仕事をちゃんとやってるか顔を見たいんだとよ。あの子は顔を見なくても信頼する事が出来るってのによ」


 なぜVRオンライン技術を持ちながらVRリモートワークで仕事をしないのか?そんなことを思った時期もあったが、理由は単純に監視と低コストだからだと部署の先輩が言っていた。


「あー、だから仕事は楽しくないのか。出来ない、出来ない、って違うだろ!もっと信頼しろよ、期待しろよ!」


 MMORPGでの聖職者(ヒーラー)というのは基本的に固定パーティになりがちだが、それは必要とされるからであり、命を預けるなら腕も人間性も信用できるプレイヤーと出来る限りパーティを組みたいからだ。当然、聖職者にも選ぶ権利はあるが、聖職者は低レベルモンスターでソロのレベル上げが出来ないためパーティへの依存度は大きい。


「あの月影オンライン(MSO)で聖女とかどんなけだよ」


 MSOはVRMMOのサービス初期にリリースされたタイトルで、夜の世界という設定のせいか大型モンスターが跋扈する世界のため5人以上のパーティが推奨され、最新マップでソロ狩りは無理、ヒーラー必須と言われるほどの高難易度の仮想世界だったので上位職になるまでに数多くのプレイヤーとパーティを組んできたのだと思う。


「けど、そんな子がもうヒーラーを出来ないなんてな」


 運営アカウントによりNPCキャラを一時的にアバターとして利用できる機能を使って神父(GM)としてログインし、運営への問い合わせで不具合の対応を求めてきた栗毛の少女に聖職者スキルが使えないのは"仕様"であると伝えた時、"加護"が原因だと分かると雰囲気が変わった気がした。だからだろうか、原因を真面目に調べて上へきちんと報告しようと思ったのは。


「あの子は"加護"を取得していないことに納得していた。なら正規の方法でアイテムが消えた事になるな」


 MSOでプリアというプレイヤーにクエストアイテムであった"夜天の宝玉"を渡したと言っていたので、プリアのアバターデータを本社のデータベースから呼び出して"夜天の宝玉"を検索した結果、どうでもいいクエストクリアであるNPCへの高レアリティアイテム納品に使い消滅したらしい。


「バカなのか?いや、そもそもなんで重要アイテムの取引が出来るんだ?」


 だが、問題はそこではなくラピスからプリアに確かに"夜天の宝玉"は渡されていた、重要なイベントアイテムにも関わらずだ。違和感を感じて急いでアイテムの詳細情報を開くとプレイヤー間取引不可、売却不可のロックが何故かかかっていないことに気が付いた。


「何が仕様だよ。不具合じゃねーか」


 本社のシステム開発課に本件を問い合わせた結果、確かに事象としては"仕様"と呼べるが⋯⋯、元を正せば不具合から始まっていた。さらにアイテム情報を遡ると、アイテム強奪スキルが使えるモンスターの攻撃で一度プレイヤーであるラピスから所有権が消えた事が原因だった。


「なるほど、わかってきた。"加護"実装時に当時の最高難度のダンジョンへ加護スキルを取らずに"夜天の宝玉"としてアイテムのまま持って挑んで、アイテム強奪を受けてモンスターへ移動、この時にアイテムの保護設定は解除され、ラピスからプリアへの移動が可能となったわけか」


 そうなると話は変わってくる。システム開発課は信仰神によって聖職者スキルが使用出来ないのは仕様であり、加護スキルを取得せずにコンバートしたのはプレイヤーの過失である。何故ならば、"加護"未取得の場合は"夜天の宝玉"などの重要アイテムを"必ず"プレイヤーが所持しているので警戒メッセージが表示されるから。そういう理由で仕様として個別対応出来ないとされたし、俺もその時は納得してあの子に仕様であると伝えた。


 しかし、"夜天の宝玉"を所持しておらずその警告メッセージが表示されないままコンバートしたなら"運営に責任があり個別対応で加護スキル取得という補填"が出来るのではないか。


「よし、やるぞ!」


 深夜に書き上げた報告書、その結末は⋯⋯。


["夜天の宝玉"の譲渡は本人の意思で行われた行為で、"仕様"として解決した問題であり、個別に補填は行わない。しかし、同様の事案が発生する可能性があることから"夜天の宝玉"を強奪した"スリーゾック(モンスター)"のアイテム強奪スキルの判定から重要アイテムを即時削除、アイテム強奪スキルを保有している全VRMMOゲームのモンスターへ対応の水平展開を行い対策の終了とする。なお、ユーザーへの告知は行わないものとする。

 以上]

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