第8話 栗毛修道女、VR技術を語る。
街の外は草がいい感じに膝丈あたりまで伸びて、草むらから野生のモンスターが現れた的な表現がピッタリな雰囲気を風が吹いて醸し出します。
「風が気持ちいいねー、雰囲気だけなのに不思議」
アユちゃんが髪に手を触れながら茶色の初心者用ローブを靡かせています。昨日は心に余裕がなくて気付かなかったけど、アユちゃんのアバターは水属性魔法を使いたいプレイヤーに多い澄んだ青色のロング、瞳の色は黄が加わった黒、細かい色指定をしないと発現しない珍しい黄黒をしていました。
「そうだね。ちなみに何か普通のゲームとの違いに気付いたことない?」
「うーん、ラピスちゃんの声がリアルのラピスちゃんと同じように聞こえるとか?だって可愛い声そのままだもん」
「かわっ!惜しいけどそういうのなし!」
人差し指を頭に当てて少し考える仕草をしてからアユちゃんは反応に困る事を口にしました。もう、揶揄わないで欲しいよー。
「VRゲームって視覚と聴覚のリアルを特に追求しているからね、半分正解かな」
「やったー!って半分かー、⋯⋯んー、もう半分は何?」
アユちゃんは喜んだ後にもう少し考えたけど正解に辿り着けなくて私に聞いてきます。ちなみに五感の中で嗅覚と触覚、味覚はプレイヤーの生理的な拒絶反応を引き起こす可能性が高いため少し感じ方が抑えられています。
「基本的に所謂BGMがないんだよ。その分、リアルを感じられるように草木の揺れる音や水の音、足音からNPCやモンスターの生活音までを再現して動きに合わせて雰囲気で感覚に訴えかけてくる凄い技術なんだよ」
「あははっ、ラピスちゃんってホントにVRゲーム好きなんだね。けどモンスターの生活音なんてリアルにないけどリアルに感じれるように表現してるって凄いね」
「うっ、私にとってはリアルだったから!」
最後は何言ってるか分からなくなりつつも、VR技術について熱く語り過ぎたかなと少し反省し、こんな事が前にもあったなぁと懐かしい気持ちになりました。
「そういえばアユちゃんと学校の外で初めて話した日も私が一方的に喋ってたね」
「私はラピスちゃんって大人しくて寡黙な子かと思ってたら全然違ってビックリしたけど一生懸命なラピスちゃんが可愛くてあんまり話は聞いてなかったり?」
「もうっ!」
アユちゃんはGFOもVRゲームって括りだけど、私にとってVR MMO RPGは私のリアルであり一番好きな事だから。月影オンラインから世界は変わってもアバターは私だからこそさっきは熱くなってたのかな。
「そうそう、私が書店でゲームの雑誌を読んでたらラピスちゃんが『狐島さんもゲームやるの?』って。その後の勢いに負けちゃったけど今思えば少し声も震えてたし
勇気出して話しかけてくれたんだよね」
「もう!この話は終わりっ、ほら狩りにいくよ」
「あははっ、はーい」
雑談を切り上げて道を外れて草むらの中へと私たちは進みます。
「モンスターに出会ったら私が注意を引きつけてターゲットになるから、その後に魔法詠唱に入ってね」
「りょーかいっ」
魔法職とのペア狩りの定石、ヒーラーが前衛を兼ねる。ただし、ヘイト管理スキルはないので1体づつ物理的にタゲ取り殲滅作戦です。




