第79話 勇太、紅月兎と出会う。
俺はユーザーから〝サギノウン〟と呼ばれている進化個体を探し回った。今は最初に探したマップで別の進化をした〝ツチウサギ〟のサギノウンがいないかを一人で調べている。
「どう考えても特殊個体が多すぎる。初心者とか今からこのゲームを始めるのは無理だろ……」
結果としては10体以上のサギノウンを第六天明王のギルドメンバーたちと討伐したのだが、このゲームの仕様により新規プレイヤーが入るほどサギノウンは生まれて初心者ストッパーになる。
「序盤のゲームバランスが既に崩壊しているんだよな」
さて、どうしたものか。運営会社の一員としてはこの問題は非常に重要で、新規プレイヤーの取り込みが見込めないゲームかつ、プレイヤーがほぼこないマップが多くあるためサーバーの維持費だけが増え続ける。そろそろ黎明期のVRMMORPGに対してサービス終了が見えてきている気がした。
「まぁ、このゲームが特にひどいのは、モンスターが経験値を取得するのとパーティープレイ前提の難易度設定ってところだろうが」
今回のラピスたちのイベントはコンバートしないゲーム間移動の試験運用でもある。コンバートがレベルなどのリセット機能があるのは旧作から新作への〝強くてニューゲーム〟を防ぐためだ。
「七夕の時に作られたゲーム間移動システムを利用して、GFOでレベルをそれなりに上げてからこの世界に呼ぶ案はラピスたちの巡礼成功を見ると問題はなさそうだな」
多少の引き継ぎはあるが、一からのプレイヤーにもそれ相応の対応がされているので基本的にコンバートによるプレイヤー間の強さに大きな差はない。逆に言えば、この世界へのコンバートを行なった場合は《《詰む》》場合がある。そのための対応策の試験運用だった。
「MSOとGFOは信仰神が違うっか⋯⋯。世界観が同じならいっそのことモンスターを混ぜて適正レベルに配置し直せばあるいは⋯⋯、いや、それよりも───」
GFOはまだサービスが始まったばかりのゲームのため大半のプレイヤーはレベルが低い。今回のようにゲームの一部としてレベル帯によって行動できる範囲を絞り、プレイヤーを行き来させてMSOプレイヤーとパーティーを組むことが出来れば、GFOは新規マップによるサーバー負荷の増加を遅らせられるし、MSOはレベル上げで詰むこともなくなる。
「よし! この案を企画として提出してやる! 幸いなことに統括運営の部署だしな」
このままだとサービス終了の話が出てきたこのゲームに、遊んでいるプレイヤーやこれまで作られた世界の再利用を提言し、今回の【厄災】イベントによる転移が実装された。今の部署はちゃんと自分の意見を聞いて、良ければ汲み上げてくれる。
「仕事に充実できるようになったのは栗毛聖女さまのおかげだな。必ず守ってやるよ。あの子を育てたこの世界を」
ポコッ!
《《一人でサギノウンを探していた》》。勇者の称号を持つアレスというプレイヤーはいない。
「ちょ、待てよ。何で⋯⋯、っ! まさか時間切れで再抽選が!?」
そこには自分が《《出会うはずのない》》真紅に輝く宝石の角を持つツチウサギ、アカツキウサギがいた。




