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第77話 栗毛聖女、坩堝蜜竜と戦う①

 私は先ほどの雑魚処理の時に、こっそりエミルさんにロイヤルゼリードラッゴの攻撃パターンも確認していました。それを思い出しながら対応すれば大丈夫という自信と、アユちゃんやミナツさんには無知識のまま遊んでほしいという願いをもってこのレイドバトルに挑みます。


「では殲滅を始める。───夜星の世界を」

「「「〝夜天女神の聖域(カスピエッタリー)〟展開」」」


 黒龍のメイド服を着た幼女だけど、ギルマスをしているメアリーさんの合図で〝Night of メアリー〟のパーティーメンバーたちが空間補助魔法を重複して仕掛けました。


「闇に集いし、小さな輝き、祖の天は何を求めるか、―――」

「ありがたいね! 星の輝きを我が剣に集え〝聖爛星嵐〟、さらにっ! 〝巨聖剣〟発動っ!」

「そっちのギルマス二人、はりきってるねー。 じゃあ、俺たちもバフ増し増しでいこうか。はい、まずは〝|コンソメチップスシャワー《攻撃力増加ポーション》〟」

「おっけー! 〝獄炎付与《インフェルノ・エンチャント》〟でどうよ! 10分間だけど物理・魔法に火属性付与だぜ」

「ああ、もうっ! 〝加重制御《ウエイト・コントロール》〟と〝属性濃縮(エレメント・プレス)〟、あとは何!?」


 闇魔術師のメアリーさんが詠唱を始め、聖騎士のエミルさんは天候に左右されて星の見え方で強化度合いの変化する自己強化スキルを使い、さらに普通の長さだったロングソードを巨大な剣へと変化させます。そして錬金術師のサトウさんと付与術師のショウユさんも周囲の戦闘職にバフをバラまいて、VR特有の操作性の変化に対応できるように聖女のミリンさんが文句を言いながらさらに補助魔法を重ね掛けしてプレイに支障がないように調整していきます。


『ロロロロロロォオオオオオオ』


「〝精神統一(壱)〟〝精神統治(弐)、〝精神統讃(参)……では、動き出す前にメアリー殿の攻撃に合わせて遠距離攻撃を同時に放つぞ」

「うっし! こうやって、プリアと合わせるのも久しぶりだな。〝今日戦士(ナウッ)〟」

「ですね! ジャスターさんの脳筋には負けちゃいますけど! ラピスちゃん!」

「準備できてる! 詠唱省略《スペルアブリビエーション》ッ!」


 カゲミツさんが槍を構えたまま次の攻撃を確定クリティカル攻撃にしてさらにダメージを引き上げようと自己強化を重ねていきます。ジャスターさんも一日のクールタイムが必要という重いデメリットのあるSTR強化スキルを使い、プリアちゃんも極滅魔法を唱え始めました。


「みんな、ロイヤルゼリードラッゴは一撃でも攻撃が当たるとランダムなプレイヤーへの突進を行うから初動の向きからその方向の人に移動速度増加(スピードインクリーズ)をお願い」

「うん! ばっちり決めてみせるから見ててね!」

「私もタイミングは慣れましたわ……。あの蜜竜たちが練習台になってくださいましたので」


 アユちゃんやミナツさん、アレスさんたち聖職者のパーティメンバーもハニードラッゴ狩りで移動速度増加をひたすら使っていたので、苦笑しながらも失敗はないと確信するような顔で各々に返事をしてくれました。


「―――闇夜が包むは静寂の使徒、化せよ貸せよ姿を変えよ、刃となりて力の一端を我が呼びかけに応じて解放せよ。―――〝闇調律刃(ヤミノシラベ)〟ッ!」

「―――聖夜十字斬(ホーリィナイトクロス)ッ!」

「―――刺突・翔点(しょうてん)ッ!」

「おらよっ! 斧(オノ)ブーメランッ!」

「―――中級極大消滅魔法・極陽光滅線(ザ・サンシャイン)ッ!」


 皆がそれぞれに必殺と呼べる一撃を放ちます。湖の上を闇の刃が走り、光の斬撃が飛び、一突きは点となり距離を0にする。斧は弧を描きながら回転し、天の彼方より他世界の神が力を貸し与えた消滅の光が降り注ぐ。初撃を与えるまで動き出さないモンスターにのみ通じる正真正銘の全力一斉攻撃が放たれました。


『ロィヤアアアアアアアアアアッ!』


「みんな、〝商攻快〟で! 移動速度増加ッ!」

「「「移動速度増加」」」


 〝商攻快〟の人が固まている場所へと突撃してきたので私たちは分担して移動速度増加を攻撃範囲に入っている人全員にかけることに成功します。


「ターゲットはわたしってなんでよ! ショウユでもいいじゃない!」

「おいこらっ!」

「まにあえぇえええっ! 断絶の盾(ゼロシールド)ッ!」


 支援職は他者に支援するのが本業です。特にHP管理が重要な仕事といえるでしょう。……しかし、支援職は自分のHP管理ができるプレイヤーは少ないのです。なぜなら、基本的に後方で安全に魔法を唱えているから。


「やっぱりミリンさんは凄いね」


パリンッ


「やった! まにあった~っ!」


 誰も死なせない。そのためには聖職者である自分も死んではなりません。咄嗟の状況に自分が置かれた時、自分に対しても他者へいつもかけている最適な魔法を自身にかけることができる。その技術を持っていて初めて聖職者として一人前だと私は思っていますし、それがいつでもできるわけではないとも思っています。


「ハナさん、あれが本物の聖女の動きだよ。転職を目指すなら参考にしてね」

「え? いや、あれは無理かな~……」


 今は無理に思えても、MSOというVR古参プレイヤーばかりのこのレイドバトルはみんなの成長に繋がると私は信じています。

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