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第74話 栗毛聖女、〝ハニードラッゴ〟を狩る。

「蜜竜〝ハニードラッゴ〟は蜂がモチーフのドラゴンでね、花の蜜を集める習性があるんだよ」


 私は湖(モンスター)の畔で花を集めながら各モンスターの生態から皆に説明をしていきます。


「だから、この花の蜜にハニードラッゴは引き寄せられるの」

「ねぇ、それって倒す手段じゃないよね?」


 ハナさんがいいところを突いてきます。そう、これはあくまでハニードラッゴを誘導する手段です。


「うん。蜜をもって巣からここまで誘導するんだよ。倒すのはこの《《ウツボコカズラ》》だけど、貢献度は戦闘に参加したプレイヤーだけに適応されるから」

「もしかして少しでも戦闘に貢献していれば経験値が入るし、ほぼ分散もしない?」

「そうなんだよ。モンスターを連れてくるのはカゲミツさんとエミルさん。で、私たちはハニードラッゴとの戦闘で支援魔法で貢献度割合を稼ぐの」


 MMORPG(ネトゲ)には古くから、MPKと呼ばれるモンスターを使って他プレイヤーを殺害(キル)する迷惑行為が存在します。私も未遂ですがたくさんのモンスターを押し付けられたことがあります。それらの行為を行ったプレイヤーに経験値が入らない貢献度減少処置を逆手に取った貢献比率配分育成法になります。


「なるほど。実際に攻撃する人に配分される割合がないから、多く経験値がもらえるのかしら」


 ミナツさんも私たちが行おうとしている狩り方に理解が追いついたようです。盾役は被ダメ0かつ逃亡という迷惑行為により経験値0、攻撃役は誰もHPを削らないためそもそも不在、あとは支援魔法のみで経験値が分配されるという算段です。


「あと、みんなに移動速度増加(スピードインクリーズ)を覚えてもらうけど使用人数による効果の重複があるからスキルレベル1で大丈夫だし、スキルポイントを振ったことを後悔はさせないよ」


 VRMMORPGにおいて移動速度増加は攻撃を回避できるか否かに直結します。スキルレベルが上がっていれば効果時間も長くなりますが緊急回避として利用するなら1でも十分です。そして、全員が覚えることにより誰か一人でも近くにいれば避けれない攻撃も回避できる可能性があり、また素早く後退して安全に回復できるため生存率に直結します。


「重ね掛けはプレイヤーへの負担も大きいけどね!」


 プリアちゃんが笑ってますが、昔にギルドメンバーの聖職者の人たち皆でジャスターさんに移動速度増加の重ね掛けをしてVR酔い状態へと陥れた過去がありやりすぎたことを反省した私は笑えませんでした……。


「そういえばプリアちゃんは極滅魔法系統しか覚えてないんだよね?」

「そうじゃ。〝薬草娘〟が普通の支援魔法を覚えるのはロールプレイ(遊び方)を違えるのではないかのぅ」


 私はプリアちゃんのプレイスタイルを忘れていました。ミコさんの言う通りで、こだわりがある人への配慮を怠ってしまっていました。


「ごめんなさい。プリアちゃんの遊び方まで気が回ってなくて」

「いいよ! だってラピスちゃんと一緒に遊べたらそれだけで十分だし! えいっ! 移動速度増加(スピードインクリーズ)!」


 とにかく明るいプリアちゃんのまま、覚えたての移動速度増加を使ってくれました。なので私のいう言葉は一つしかないなと思い、しっかりと口にします。


「ありがとう!」

「どういたしまして! えへへ!」


 和やかなムードの中、花の蜜は集まりアイテムボックスは蜜壺で埋まっていきます。


「っしゃー! オレ様が一番乗りだな!」


ブゥゥゥゥン

『ハギャアアアアアアッ!』


「ラピス! とっとと処理しな! 私とカゲミツは近くで待てるからさ」

「それじゃ、みんな! ハニードラッゴをターゲティングして移動速度増加を使うよ!」

「そらよ!」


 ジャスターさんが茂みから飛び出してその後ろを蜂の体をした西洋竜が追いかけてきました。そして、私たちがハニードラッゴを視界にとらえて魔法を撃てる状態である確認するとジャスターさんは《《蜜壺をウツボコカズラ(湖)へと投げ入れます》》。


「みんな、《《ハニードラッゴに移動速度増加》》だよ!」


 ハニードラッゴは湖の上へと飛んでいき、蜜壺が水面に触れる前に回収しようと降下してきます。そこを私たちの移動速度増加でスピードを上げられて本来は水に落ちないはずのモンスターが|ウツボコカズラの胃液?《湖》に落ち断末魔をあげます。


『ハニャアァァァッ……!!』


「なんかえげつないね……。ちょっと私でも引くかも」

「けど、30前半くらいだったら数十体でレベル上がっていくからね。最高効率だよ」

「ラピスちゃんって、効率重視で狩りしてる時が一番いきいきしてるかも?」

「じゃな……」


 次の蜜壺をジャスターさんに渡して移動速度増加をジャスターさんにかけて見送り、エミルさんを待つ私はあゆちゃんの言う通り、久しぶりに効率を追求する狩りでとても楽しい気分になっていました。


「うん……。私もあまりミコさんのこと言えないかな」


 対人狂に、自由人、火力厨に効率厨……、何とも言えない視線が私たちのパーティ内で飛び交います。ミナツさんだけが私は違うわよ?っと目で訴えていましたけど、彼女もエミル教ですし同類かなっと思い、かなり親近感が沸いてハニードラッゴによるレベル上げがスタートしました。

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