第73話 栗毛聖女、効率重視のレベル上げを行う。
聖職者(修道士)8人、武道家、斧戦士、聖騎士、そして聖女の12人パーティでのレベル上げを行うために、聖職者御用達の狩場である〝蜜の坩堝〟へとやってきました。
「咲いてる花がすっごく綺麗だけど、すっごく大きいね!」
「ここはね、蜜竜〝ハニードラッゴ〟っていうレベルの高いドラゴンが棲息していて、ちょっと変わったギミックがあるから聖職者のレベル上げにはうってつけなんだよ」
「ラピスさん。エミルさんたちはお強いのですから、ギミックなどに頼らずとも普通に狩りに出かけてはダメですの?」
アユちゃんは景色を見ながらもう熟練のプレイヤー顔負けに歩いていますけど、ミナツさんはまだキョロキョロとしていてかわいいです。っと、そんなことより初心者であるミナツさんの質問に私はゲームシステムについて説明を始めます。
「えっとね、パーティプレイでの経験値は全員のレベル差+-10までならモンスターの基礎経験値に人数補正を掛けて均等分配してくれるけど、それ以上レベルが離れていると経験値配分が変わるんだよ」
「そうなんですか。ちなみにどのようにです?」
「獲得できる総経験値は同じなんだけどね、配分率は戦闘における貢献度による比率にするようになるの。だから貢献度に直結する行動をするのが大事なの」
具体的には、与えたダメージ量や被弾した回数に加えて、回復したHP量、スキルごとに設定された貢献度係数など加算されていき、戦闘終了時にその比率によって経験値が分配されます。戦闘不能や他プレイヤーへの迷惑行為による減少もありますが、基本的にそれらの行動に対する評価をAIが判断し分配しているというのが先人たちの推測です。
「プレイヤーのみんなが色々と試して検証してデータを集めたことだから確実にそうだとは言えないんだけど、それでも大体の経験値配分率に関わる行動は解明されていて、公開もされてるんだよ」
「今、ラピスちゃんが言った検証を行ってデータをまとめた人たちは凄いわね。それに、それを覚えてるラピスちゃんも」
「情報は武器だからね。……って今でも思ってるけど、アユちゃんみたいに未知を楽しむってプレイスタイルも必要かなとも最近は思うようになったよ」
モゴモゴ
ミナツさんとの会話にハナさんが混じって3人でおしゃべりしながら歩いているとアユちゃんが食人植物に食べられているのが目に入りました。食べられている最中でHPゲージががほとんどなく死にそうになっていますがまだ生きているようで私は一番近い聖職者のミコさんに知らせます。
「ミコさん、アユちゃんにヒールッ!」
「ヒール! 何故死にかけておるのじゃ!?」
「ソイツの処理は任せな。しゃらーっ! と」
『シタァアアアアアアアアアアッ!』
植物といえどモンスターです。ジャスターさんの斧で茎を叩きおられて一撃で決着はつきました。
「すっごい馬鹿力ですね……。正直羨ましいです」
「ヒューイ。オレも男として羨ましいが、オレには盾、お前には魔法がある。あの男がそれほどSTRを上げ続けた努力の成果だ。オレたちも頑張ろうぜ」
そんなヒューイくんとガイさんがを見て「まったく、青春しておるな」といっているカゲミツさん。長い付き合いですがリアルはまったく謎に包まれていますがおいくつなのか少し気になりました。ですが、そこで聞くのはマナー違反なので私は謎の人のままにしておきます。
「ラピスちゃんラピスちゃん。私の食べられたあれって食虫植物のフクロユキノシタに似てたよね~」
「ごめん、ちょっとアユちゃんが何いってるかわからないかも……」
「本当に変な知識ばかり詳しいのぅ。わっちもモチーフはフクロユキノシタじゃと思うのじゃ。鳴き声もシタァアアアアアアじゃったし」
「ミコさん声真似上手! トロピバードたちの鳴き真似もお願い!」
どうやらアユちゃんのいった植物に本当に似ているっているようです。プリアちゃんはミコさんの声真似を煽りじゃなくて本気で褒めているようで、ミコさんはたじたじになりながらも律儀に「アッポ~~~」など様々な鳴き声を披露しています。
「ミコさんってやっぱりかわいいよな」
「……私もそう思いますけど、アレスさんにはハナさんがいますよね? 一緒に動画配信に出てましたよね?」
「―――そこは枠が違うんだよ。わかるだろ?」
わからなくはないですけど、本人を前にそれはどうかと……、あっ、修羅場が始まりました。
「痴話喧嘩はおいてくよー! ほら、もうすぐ目的地の〝ウツボコカズラ〟だ」
エミルさんが目的地到着を告げ、私たちの目の前に巨大な湖が広がりました。
「落ちたら溶けて即死だから気を付けなよ? これも食虫植物の巨大なウツボカズラがモチーフだから」
なんとなく嫌な予感がしてアユちゃんを探すと、さっそく飛び込もうとしたアユちゃんはミナツさんたちの手によって止められていました。
「それじゃ狩ろうよ! 蜜竜〝ハニードラッゴ〟!」
プリアちゃんは慣れた動作で準備に取り掛かり、私もみんなへ狩り方の説明を始めました。




