第72話 栗毛聖女、〝【厄災】サギノウン〟対策会議を開く。
酒場に集まった私たち5人と、アレスさんたち4人、それにギルド〝第六天明王〟のエミルさん、カゲミツさん、ジャスターさん、それと応羽さんの13人がそれぞれテーブルに各々座って顔を合わせています。
「これで全員かい? それじゃ〝サギノウン〟について情報交換といこうじゃないか」
エミルさんの一言で対策会議が開かれました。
「まず、アレスさん。あなたたちは変わったウサギにやられて全滅した」
「ええ。あっ、私たちもほかの人と同じように接してもらって構いませんよ」
「そうかい? じゃあアレス、そいつが【厄災】ってのを纏ったんだね」
「それも間違いありません。少し前に【厄災】の一つである〝トロピドラゴン〟というモンスターと戦いましたし」
そういって、おもむろに|ユーザーインターフェース《UI》を操作してとある動画を皆がみえる位置に映して再生を始めました。
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〚 ❀ Flower の 今日の冒険 ❀ 〛
「みんなー、来てくれてありがとう~! 今日の動画はなんとレアモンスターとの遭遇だよ! 楽しみにしていってね~。あ、新規さんですね! はじめまして~、Flowerです。緩〜くやるけどよろしくね」
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「い、いやぁぁぁああああああああ! アレス! さすがにこれは公開処刑でしょ!」
アレスさんに掴みかかったハナさんの叫びが酒場に響き渡ります。
「動画で見てもらった方が早いだろ。宣伝になるとむしろ感謝してくれてもいいぞ」
酒場には私たち以外のプレイヤーもいて、突然流れたハナさんの動画に興味を惹かれたのかチラチラと皆がこちらを、主にハナさんを見てきました。
「うわ〜。これは恥ずかしいわ」
「ですわね。⋯⋯アユさんにも恥ずかしいという感情があったことに驚きましたが」
「ミナツさん。アユちゃんは《《今》》をふざけるのはいいけど過去をいじるのは嫌いなんだよ」
何だかんだで半年以上、一日の大半を一緒に過ごした茉実ちゃんですから、私はミナツさんにアユちゃんのことを教えました。
「それは失礼しました。アユさんなりに色々とあるのですね」
「気にしてないから大丈夫だよ〜」
「こやつはこんなじゃが、基本はお人好しじゃからのぅ」
ミナツさんの謝罪もあり私はアレスさんたちを見ると、あちらも落ち着いたようでハナさんが酒場の知らないプレイヤーさんたちに「チャンネル登録よろしくね!」と気持ちを切り替えて笑顔を振りまいてました。
「逞しいね!」
「まあ、ハナが好きで動画配信してるんだから気にすんな」
そんなこんなありましたが動画を飛ばしていって問題のシーンを再生します。
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「ここ、この魔法使い君見ててね。───ほらっ! 一撃でやられちゃった」
「なんか立派な綺麗なツノだし、これはレアモンスターだと私は思うんだよねー。あっ、そうそう、この黒い紐のようなのって【厄災】だよね? 初見の方ごめんね。詳しくは過去の配信にトロピドラゴン戦があるから、それ見てくれたらわかるかな」
「改めて動画で見るとひどいね。魔法使いが一撃はわかるけど、前衛二人も一撃でやられるとか倒せるのかな? あっ、私もやられたね」
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「どう思います?」
そこで動画を止めて、アレスさんがミコさんに問います。
「わっちもあの黒い紐は【厄災】じゃと思う。それにあのマップでわっちらが見てきたウサギはツノも普通でそんなに大きくはなかったのじゃ」
「決まりだね。私が見てもアイツは〝サギノウン〟だ。そして【厄災】とやらのイベントモンスターに変化したと見て間違いない」
そして、眠そうにしながら会議にいた応羽さんが追加情報を私たちにくれました。
「あの後、ボク含めてギルドメンバー総出で探してみましたけど遭遇出来なかった。アレスたちがマップに出た時にしか出現しないのだと思うよ」
「ありがとう。私はギルマスだけど夜更かし出来なくてすまないね。非常に助かったよ」
「リアル都合は仕方ないですよ」
「そうだぜ。オレも副ギルドマスターだが先に落ちてたからな!」
ジャスターさんは自慢の斧の持ち手部分を床に強打し、副ギルドマスターとしての存在感を出してフォローしました。
「と、なると|GOD・F・オンライン《GFO》のゲームの延長、つまりアレスやラピス、プリアたちがいないと発生しないイベントバトルってことか。厄介だね」
「なに。オレらがパーティに入ってやるよ。最大12人パーティなんだろ?」
「ここには13人いますけど⋯⋯?」
「応羽はまだレベルが低いですから不参加です。お気になさらず」
文字通りの報告にだけ来てくれた応羽さんに私は頭を下げました。そんなことしなくていいと手を振りジェスチャーされたのですぐにやめましたけど、後でありがとうございますと伝えようと思い、会議に戻ります。
「ラピス。とりあえず、皆のレベルは今30前後で合ってるかい?」
「そうだね。それで前衛が一撃なんだから安全をとって45くらいまでは上げたいかも」
私はエミルさんの意図を理解して目標レベルを設定します。
「じゃあ、明日からパワーレベリングに行こうか」
《《この世界のモンスターはプレイヤーを倒すと経験値を獲得して強くなっていきます》》。〝サギノウン〟は初心者を狩り続けて強くなった〝ツチウサギ〟です。恐らく新規プレイヤーが減ったことで、このマップでの狩りが減り、倒されないまま成長し続けたのでしょう。
「ボク、思ったんですけど⋯⋯、低レベル帯のパーティがなかなか成立しないんですよ。巡礼も熟練プレイヤーの魔法による転送が主な移動手段になってるでしょ? だから、誰も〝サギノウン〟発生に気づかなかったのではないでしょうか」
巡礼以外では通らないマップですし、それも今や時間が経ちすぎて初心者のパーティが成立しない。とりあえず初心者がフィールドに出てみたらすぐにやられて〝ツチウサギ〟の経験値、それが繰り返された結果だと応羽さんは推測したようです。
「⋯⋯はぁ。可能性はありそうだね。明日から手の空いているメンバーは低レベルマップの掃除だね。報酬は適当にギルド資産から出しとくよ」
「〝サギノウン〟って〝未知の詐欺〟って意味だったよね! なんかワクワクしてきたかも!」
〝サギノウン〟はプレイヤーが勝手に付けた進化モンスターの呼称で、このウサギの本当の名前は私たちはまだ知りません。アレスさんたちの戦闘もダメージを与えて名前を表示させる前に一方的にやられましたから。
「それじゃ、みんな! チャンネル登録よろしくね!」
ハナさんがもうどうにでもなれと叫びながら〆て会議は終わり、まずは私たちのレベル上げを行うことになりました。




