第66話 花子、バズらない。
私は今、自分の無力さを激しく痛感している。
「どうして誰も動画を見てくれないのよー!」
山口 花子、31歳、リアルのことからゲームのことまで、雑談動画の配信を週3回ペースで上げてます。
「フォロワー数は31人、年齢と同じ⋯⋯ガクリ」
やはり若さか⋯⋯いや、面白さが必要なのか⋯⋯。けど、ザ・平凡な私にそれを求めるのは違うと思う。私の動画は平凡な癒しだ。だからだろうか、フワマリンネが特定のイベントで呼べるとか情報を上げても『そうなんですか〜』とコメントをいただいて終わりだった。
「フォロワーさんたちも落ち着いた方ばかりだからしょうがないんだけどねー」
バズる条件は拡散力。フォロワーの多い人なら勝手にバスるが、無名の動画配信者はそもそも動画再生されないため内容に関係なくバズらない。
「ハナとしてのミコさんたちとのプレイ動画はあげたくないし〜。かといって、有名投稿者にタレコミもしたくない⋯⋯。これが私の限界か〜」
私の動画配信はゲームの実況プレイは録画で生配信は雑談のみ、しかも顔出しである。
「うじうじしても仕方がない! さ、今日も遊びにログインするかー!」
ピコンッ!
[今から銭花蝶のドロップアイテム集めるんだが、よかったら一緒に来ないか?]
ログインしてすぐにアレスからメール機能での連絡が来た。
[行く! ちょっと待ってて、周辺MAPとモンスター情報調べてから合流するね]
[わかった。木綿村の防具屋で待つ]
アレス、ガイ、ヒューイ、それにハナの四人で固定パーティを組むようになったのは湾岸都市ナミノに着いてからだ。正確に言えば、グランサバス王国から出港する船の中でアレスが同レベル帯のメンバー募集をしたのが始まりだった。
「思えばミコさんたちに初めて会ったのも防具屋だったな〜」
行動を共にするようになり5つほどの街を訪れたが、アレスは新しく着いた街では必ず武器屋と防具屋、雑貨屋には最初に寄ることがわかった。
「売られている装備やアイテムを見れば適正レベルと必要な対策がわかるとかで。そう考えたらアレスが防具屋に行きたがったからミコさんたちに出会えたんだっけ」
可愛らしいガールズパーティ⋯⋯の皮を被った凄腕パーティ、それもプレイスタイルが個性的だった。
「モンスターに張り付いて、被ダメは範囲攻撃以外は回避し最高効率でダメージを叩き出す武道家」
前の世界で対人戦の頂点に立つほどの腕前で、スキルのみに頼らないプレイヤースキルを目の当たりにして、私は心の底から凄い綺麗な動きだと感じた。
「INT極振りの初心者だけど、スキルを組み合わせて発想力で柔軟に対処する水魔法使い」
フワマリンネは通常戦闘では呼べないがイベント戦闘では呼べる。彼女がその発想に至ったのはカザグルからフワマリンネで移動中に【厄災】のカケラに襲われたからだそうで、強制イベント時にフワマリンネに乗れたのなら他のイベント戦闘でも試してみる価値はあると思ったそうだ。全くもって洞察力が凄く、その発想が私には出てこない。
「ほぼINT極振りで、MP消費軽減や極大消滅魔法のレベルをかなり上げないと発動すらできないから、スキルポイントのほぼ全てを極滅魔法関連に注いで、支援スキルを回復魔法のヒールのみに絞った聖職者」
自称:薬草娘と割り切りパーティに参加してきたらしいが、普通の聖職者はステータス強化や付与の魔法をバランス良く取得している。しかし、それらを使いこなすには大量のMPとプレイヤースキルが必要となり、緊急時の回復でMPが尽きたり、支援が切れて全滅することもよくある。
「あのガイのHPもヒール2回で全回復とかどんなけなのよ」
ちなみに私が全回復させようと思ったらヒール5回だ。それだけでMPがほぼ尽きるのでプリアちゃんがいてくれた時は助かった。今は薬草娘だけど切り札の下級極滅魔法は近いうちに通常魔法のようにあの子は使い出す気がした。
「まあ、それはあの武道家がいての話だけどね」
攻撃の予備動作でモンスターとの距離感を見極め、自分の攻撃が当てれない時は支援魔法を使い他の仲間を補助する栗毛の武道家は目立たないが、同じ支援魔法を使う後衛で聖職者をしている私より視野が広くてヤバい。
「多数相手が苦手なミコさん、2発は耐えられないアユちゃんとプリアちゃん。自身がダメージ覚悟のタゲ取りもして全滅を防いでいたし、ギリギリのタイミングでプリアちゃんのヒールが間に合うのは二人の阿吽の呼吸とも言えるのよね」
そんな四人の女の子たちは、攻略情報を見ずに突き進む。
「うん! 私は私だ! 平凡な私は下調べをきちんとしよう! あ⋯⋯、そういうところアレスと私って似てるのかも」
平凡な私はバズらない。だって基本的に調べた情報を元にしてプレイしているんだから何をしても二番煎じだ。
「お待たせ! じゃ〜、行こっか」
けど、そんな私だからアレスは私を必要としてくれている。
「武器屋と防具屋の装備は大したことはないが、道具屋に大量の"毒消し草"が売っていた。毒攻撃をしてくるモンスターが近くにいるのか?」
まあ、アレスはある程度の対策をしてきてるんだけどね。
「今日は軽装備に着替えてるんだし、割合ダメージの毒はアレスも避けたいんだー」
「そりゃ、ペア狩りってヤツは相方に負担をあまりかけたくないからな」
この聖職者泣かせが。
「だったらソロでやればいいでしょ?」
私がそういうと、彼は頭を掻きながらこう言った。
「"Flower"との生雑談は癒しなんだよ]
聞けば先月、31歳の誕生日にフォロワーが増えないのを愚痴ってた私を探してフォローした31人目のフォロワーらしく、ちゃんと動画も見てくれているそうだ。
「あー、フワマリンネの動画な。そもそも海龍神社での加護イベントをミコさんたちが初めて見つけたんだから、動画配信しているようなトップ層は誰もクリアしてないし、ミコさんレベルの踊り手がいないと取れないんだからなかなか再現できないのを考えると伸びないわな」
さらに言えば、カザグルからナミノに来たからフワマリンネ専用イベントが発生した可能性もあり、フワマリンネをどのイベントでも呼べるとは限らず、"嘘つき"呼ばわりされるリスクも説明された。
「そんな〜〜〜!!!」
チャンッ、チャンッ!
私の悲痛な叫びに銭花蝶が反応し、羽音を響かせながら近づいてきました。が、すぐにアレスに斬られて消滅します。
「まあ、ド底辺配信者でよかったな」
「うっさい! この馬鹿アレスッ!」
チャンッ、チャンッ!
「この大声で叫べば銭花蝶が寄ってくるのを動画に上げるのはどうだ? 俺は出演オッケーだぜ?」
編集は任せたと丸投げしてきた彼とのやりとりも含めてプレイ動画を公開した。
〔癒されるわー〕
〔何、この夫婦漫才〕
〔アイテム集めは叫びながらやると効率がいいのか〕
何故かフォロワーが10倍になり300人を越えた。
[310歳おめでう( ^ω^ )]
「うっさいわ! けど、ありがとう!」
メールは晒した。何故かこのやりとりがウケて更にフォロワーが増えた。げせぬ。




