第64話 栗毛武道家、日御子の自覚を持つ。
例のごとく翌日、トロピバードの巣を訪れた私たちはトロピバード(ドラゴンフルーツ)と対面しました。
「トロピドラゴンとは一体なんじゃったのじゃ……」
「ですよね~」
ミコさんの言葉に全員が激しく同意します。今回も会話ができるのは私たちミコさんパーティのみですが、綺麗なドラゴンフルーツ型のトロピバードは名前も変わっていましたのでアレスさんたちも理解して反応します。
『よく来てくれた。【厄災】から解放されて英雄様も私たちの元へと帰ってこれた。貴殿らに感謝する。本当にありがとう』
「あの一つ聞きたいのですけど、【厄災】って一体何なんですか?」
せっかくモンスターと会話ができるイベントなので、私はドリアンバード王にフワマリンネの時から思っていた疑問を投げかけました。
『ふむ。ワシらにもよくはわからん。はるか昔、力ある者たちが自身の自我と自由を犠牲にして各地に封印したと聞いておるが⋯⋯。ピタヤ様、何か覚えていらっしゃいませんか?』
『世界はある日、闇に覆われたピタ。それはすぐに収まり光が戻ったのヤ。だけどその時【厄災】がやってきていたピタ。【厄災】はこの世界の生物に取り付いて理性を奪う何かヤ』
「異世界からの侵略者的なヤツ?」
ピタヤ様の回答にアユちゃんが反応しますが、ニュアンス的にそう捉えてもいいような気がして私はそのまま先を促します。
『それ以上のことは知らないヤ……、もしかしたらグランサバスの国王が詳しく知っているかも知れないピタ。私”たち”は彼らの計画に賛同し、自ら犠牲になったんヤ』
ピタヤ様が話してくれた計画はこうです。【厄災】に取り付かれると生物は狂暴化するが、厄災許容量(狂暴化に必要な厄災量)は素体の強さに比例しています。厄災の総量も増えていないことに気付いた当時最大の人族国家であるグランサバス王国が主体となって封印計画を提唱、主導しました。力ある生物に当時のグランサバス国王が自ら殴り会いに行き、選ばれた者がその地の【厄災】を一手に引き受けて封印したそうです。いつか陽光神様が力を蓄えて救ってくれることを願って。
「って、国王陛下やばくない? これってラスボスフラグじゃん……」
「アユちゃんもそう感じるよね!」
アユちゃんとプリアちゃんが最強元国王の話で盛り上がっています。私とミコさんは二人して”友風の証”を装備して自身の胸元を見つめます。
「フワマリ。お主も立派に戦ったのじゃな……」
「ミコさん。もしかしてフワマリはフワマルたちと居たかったのかな?」
ミコさんはフワマリの過去の雄姿を、そして私は今の解放されたフワマリを、それぞれが”仲間”として想います。
「いや、自分を解放したわっちらの元に来てくれたのじゃ。プレイヤー、すなわち陽光神の使いである[日御子]こそがこの世界の【厄災】を払う力を持つ希望なのじゃろう。フワマルたちと平和に暮らしたいやもしれぬが、それ以上に他の同士を解放して欲しいのじゃとわっちは思うのじゃ」
ミコさんの話がそのままフワマリの気持ちなのだと、そう私は感じました。だってトロピドラゴン戦の時に私たちを助けてくれましたけど、フワマリ自身は体力は削ってもピタヤ様を傷つけていないから。
『忘れておったが、お主らへの報酬を授けよう。受け取るが良い』
ドリアン王が思い出したようにそう言うと、ドリアン王とマンゴスチン王妃の羽根が左右から各八枚抜けて私たちの靴に取り込まれました。
【一夜のガラス靴[翼]】素早さ +15、常時浮遊(極小)付与、破壊不可・売却不可・取引不可
「装備がパワーアップした!」
「そうだね。⋯⋯って、アユちゃん! ビーチサンダルに翼が生えてるよ!?」
どうやら"装備中"の足防具がパワーアップされたようで水着装備のまま来ていたアユちゃんはビーチサンダルが重要アイテムと化してしまったようです。
『すまぬ、やり直しはできん。気に入らなければ必要な時だけ履いて欲しい』
『⋯⋯はぁ。さすがに可哀想だから貴女だけに私の魔法を授けます』
何というドリアン王でしょうか。と、思っていたらマンゴスチン王妃からアユちゃんは魔法をいただけたようです。もしかしたら水着装備一式の場合、プレイヤーの愛用している装備品とは違うと判定されて発生する特殊なイベントかもしれません。アユちゃんの場合は初期ローブと水着しか持っていないので棚ぼたでしたけど。
「アユちゃん。どんな魔法?」
「ラピスちゃんでも教えないー。使ってからのお楽しみだよ!」
色々とありましたけどピタヤ様も解放し報酬もいただいたので私たちはトロピバードの巣を出ようとします。
『そうじゃ。ピタヤ様もフワマリンネ様同様にあの者たちに力を貸してはいただけませんか?』
『もう年ピタ。戦いたくないヤ』
『そこを何とか⋯⋯』
ドリアン王がピタヤ様を説得していますが首を縦に振りません。ピタヤ様は何かを閃いたように巣の奥に進んでスイカニッパーを連れて来ました。
『私に憧れていたと聞いたピタ。私に出来なかった【厄災】からの世界の救済を、スイカニッパー、お前に託すヤ』
「スイカニッパーが来てくれるんだ」
『おうス! アンタらも強いがおれっちも強いイ。英雄様に託されたからには世界くらい救ってやるカ』
私は翻訳げ随分と投げやりだなーと思いながらも仲間になったスイカニッパーに乗るのが楽しみです。
「お疲れ様ー! いや〜、ミコさんたちといると楽しいね! 私、動画のネタだらけで困っちゃうよ」
ナミノに戻り、私たちはアレスさんたちと別れる前に打ち上げをしています。
「フワマリンネの事だけじゃぞ? アユも言っておったじゃろ。この世界はゲームじゃと、そして楽しまねばな」
「ミコさんわかってる!」
「そうだな! 俺たちも楽しんでフワマリンネ解放してくるぜ!」
ハナさんは凄くガッカリしてますがミコさんは楽しそうです。ガイさんもアユちゃんの気持ちが通じたようでゲームとして全力で遊ぶという思いが伝わります。だって、カザグルは最初の街の付近にあるのでアレスさんたちには簡単なクエストをこれから全制覇しないといけないのに楽しそうにしているのだから。
「へいお待ち! ドラゴンフルーツのハムサラダ!」
ピタヤ様を解放してからナミノでドラゴンフルーツ料理が出されるようになりました。何でもこれまで見なかった小さなトロピバードのドラゴンフルーツ型が現れるようになったからだそうです。
「そういえば巨大豚の『トトトトーンッ!』って鳴き声さ、ポポポポー───」
「アユさん、それ以上は言ってはいけません」
ヒューイ君も随分打ち解けましたね。こういうネタのノリ好きそうだしアユちゃんと結構気が合ってそうです。同じ魔法使いですしね。
「やっぱり知らない人とでも仲良くなれる協力プレイができるMMORPGが私は好き」
「わっちもじゃ。もちろん対人戦は今でも好きじゃがな」
「そうなんですか。俺と一戦どうです?」
「お主とはやらん!」
アレスさん撃沈。私たちはトロピバードの巣で聞いた話をするとお互いに来た時の反対の街へと向かうことに決めました。
「じゃ、明日は船でグランサバス王国へ行こう!」
「「「おー!!!」」なのじゃ」
楽しい雰囲気なので私も気が乗りアユちゃんの言葉に大きな声で返事していました。打ち上げはなんだかんだで一人、また一人と落ちても最後の一人になる深夜まで続いたそうです。誰が最後まで騒いでいたかは私は知りませんけどね。




