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第61話 栗毛武道家、【厄災】トロピドラゴンと戦う②

 『ピッ! ピタ〜〜〜ヤッ!』


「いや、やっぱりトロピバードじゃん! ピタヤとかドラゴンフルーツの正式名称でしょ!」


 アユちゃんが叫びますが、私にはピタヤがわからないのでミコさんを見ます。


「アユがそれを知っていたのに驚いたのじゃ⋯⋯」


 どうやら本当にトロピバードのようです。名前はトロピドラゴンですが。


「プリア、それにアレスたちよ、【厄災】とはあの黒い渦巻いとる模様のことじゃ。【厄災】が弱点部位じゃがアレには聖属性が効く。本体の鳥と耐性など違うゆえに臨機応変に対応するのじゃ」

「あ、それと【厄災】はさっきアユちゃんの羽根を奪ったみたいに伸びて攻撃してくるし、毒もあるから気をつけてください」


 ミコさんと私が【厄災】についての情報をフワマリンネと戦っていない人たちに伝えます。ちなみに、いつの間にかミコさんは水着から薄紫の羽織りに朱色の袴姿に戻っていました。


「了解っ! ね! 聖属性が効くなら私は極滅魔法使う?」

「それは最後の一押しにとっておくのじゃ。スイカニッパーの時と違い、弱点で入れば押し切れるやもしれん。それに気になることもあるしのぅ⋯⋯、回復は任せたのじゃ」


 プリアちゃんが極大消滅魔法、略して極滅魔法で攻撃に回るのを提案しましたがミコさんが止めます。


「先に殴っておくよ! ウォーターブロック(水塊)ッ!  ホーリーアドオン(聖属性追加)ッ!」


 アユちゃんは水属性魔法での攻撃手段に水塊を選び、衝撃属性が付いた聖属性魔法にしてトロピドラゴンに向けて魔法を放ちます。


『ッヤーーー!』


「ちょっ! こっち来ないでーーーっ!」


『ヤーーーッ!』


 悲鳴と共にトロピドラゴンのHPは目視で確認できるくらい微妙に減り、かなり怒っている様子でアユちゃん目掛けて突進してきました。


「ちっ! そのまま走れ! 石盾(ストーンガード)ッ!」


 ガイさんがアユちゃんとすれ違い、トロピドラゴンに当たる直前に盾を地面に突き立てスキルを使います。その盾は巨大な石と化してトロピドラゴンはぶつかり仰け反ります。


「ガイさんありがとう!」

「気にすんな! 下がってもう一発頼むわ」

「えいっ、えいっ、えいっ、───正拳突きッ! (⋯⋯封印の範囲がフワマリンネと違う?)」


 私はガイさんの盾にぶつかり仰け反ったタイミングで連撃を加えながら考えます。フワマリンネは鎖に繋がれていたためそんなに移動しませんでした。ですがトロピドラゴンは自由に動き回れるようです。足元を見まるとたしかに鎖はありますが、地中にどれだけの長さがあるかまだわかりません。


「風よ、地を駆け敵を切り裂け! ───疾風刃(ウインドライナー)ッ!」


『ヤーーーッ!』


「うわーわーわわわ」


 かなり後方、恐らくはヒューイくんの魔法がギリギリ届く位置からの攻撃にも反応して突進してきたため、魔法使いは間合いをとってもすぐに近接戦を仕掛けてくるので天敵のようです。


「ヒューイはさらに下がれ! 重量受流(ヘヴィパリィ)!」


 横から割り込む形でアレスさんが剣を横にしてトロピドラゴンの正面に立ちます。そのままトロピドラゴンに向かって地面を力強く踏み込み、スキルを使いながら剣をカチ上げると再びトロピドラゴンは仰け反りました。


「属性剣舞・───炎天華(えんてんか)ッ!」

「刺突・───乱れ霰(みだれあられ)ッ!」


 アレスさんはバランス型の剣士なのでそのまま攻撃に移ります。ミコさんも"鹿木氷の棒"を装備として槍スキルを発動しました。


『ピ〜⋯⋯』


「んっ! ───"空波拳(くうはけん)"ッ!」

「続けて剣舞・───明羽連(あきばれ)っ!」

「っふ、っふん! やぁ! ───刺突・一点ッ!」

「ウォーターブロック(水塊)ッ!  ホーリーアドオン(聖属性追加)ッ!」


 トロピドラゴンが怯んで攻撃のチャンスですが、私が近くまでいくまでにこの隙が終わるとみて空波拳で少しでもダメージを稼ぎます。アレスさん、ミコさんもチャンスを見逃さずに連撃を加え、アユちゃんも後方から魔法を飛ばします。


「バラバラに動きすぎて誰に支援魔法をかけたらいいのよ〜」


 ハナさんはあたふたしながらもしっかりと前衛にSTR増加、後衛にはINT増加の魔法をかけてくれています。そんなハナさんと対照的に、アレスさんとガイさんの守りは硬く、たまに回復(ヒール)を飛ばすだけのプリアちゃんが少し暇そうに見えました。


「ミコさん、アレスさんとガイさんで今は抑えられてるし、行動変化前にプリアちゃんに極滅魔法撃ってもらうよ!」

「うむ。わかったのじゃ! ガイよ、プリアの前で待機を頼む」

「あいよ」


 なので、最後の一押し、その一撃で減らせるHPゲージの量を調べるために余裕がある今のうちに一度、極滅魔法を使ってみることにし、その後の突進に備えてガイさんもスタンバイします。


「今っ! 詠唱省略《スペルアブリビエーション》ッ!」

「───略! 信仰の力にて陽光を集め玉と為す。───下級極大消滅魔法・陽光消滅玉(サンデリーボール)ッ!」


『ピヤァアアアアアアアッ!』


 私は長年プリアちゃんに掛け続けた魔法をプリアちゃんの動作に合わせてジャストタイミングで発動しました。プリアちゃんと目が合うと凄く嬉しそうです。


「⋯⋯弱点だと凄い威力ですね」


 ヒューイくんが羨ましそうにその光景を眺めています。


「ほら、プリアちゃんはしばらく動けないんだから頑張れ男の子!」


 ハナさんが気合を入れさせて再び全員が戦闘モードになり先ほどの動きを盾役の二人の後ろから魔法を放つことに注意して繰り返します。


「プリアの魔法で削れるのは15%ほどかのぅ。残り 5%は気合いで乗り切るしかないようじゃな」


 ミコさんと行動変化後の対応を話しているとトロピドラゴンのHPが半分を下回り、名前が橙色へと変化しました。


「ここからが本番だよね」


 私も気合を入れ直し、猛攻がくるなら回避ボーナスによるSTR上昇効果を得やすい夜会のドレスに身を包み後半戦に挑みます。

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