第59話 栗毛武道家、王鳥と王妃鳥から依頼を受ける。
トロピバードの巣に足を踏み入れたガイさんにトロピバードたちが殺到します。
「とりあえず倒すよー! 放水 ッ! ホーリーアドオンッ!」
アユちゃんの攻撃を皮切りに巣から現れるトロピバードの第一陣を突破して内部に私たちも入ります。
「ちょ、ちょっと待てー! いきなりボス戦とか聞いてないぞ!?」
ガイさんが叫びます。トロピバード夫婦が突如として私たちの目の前に降りてきたのです。⋯⋯まだ処理していない取り巻きのトロピバードたちを引き連れて。
「ガイ、何羽持てる?」
「 6、⋯⋯いやプリアに回復をもらえれば10羽までだな」
「⋯⋯なら俺があのパパとママのタゲを引き受ける。ヒューイは風魔法で俺の援護、ハナは臨機応変にMPを温存しつつ補助魔法中心の支援を!」
「わかりました」
「は〜い」
アレスさんが自分のパーティメンバーに指示して、私たちの方を見ます。
「ミコたちは二羽とガイの10羽を無視して他の雑魚処理を頼む! プリアはガイ優先で回復を!」
「承知したのじゃ!」
アレスさんの指示に皆、異論はなく即座に動き始めます。
「───"天穹・始導"ッ!」
私は"矢筒(破魔矢)"を装備して、トロピバードが攻撃が届く射程に入ったのを確認し、弓を空へと構えて矢を放ちます。
「⋯⋯挙動が違う?」
矢が放たれた 2秒後にトロピバードの索敵範囲に私たちが入り、戦闘モードとなり襲ってきましたがゆっくりとパパとママと降下を続けます。
「───付与呪術・反転金縛ッ! ───なんじゃと!?」
矢が反転し、落ちてきてトロピバードに当たる寸前にミコさんが麻痺付与をしますが必中攻撃であるはずの"天穹・始導"で放たれた矢はすり抜けて地面に突き刺さりました。
『ドッ、ド、ドリアーン』
出来ることもなさそうですが、念のために武器を構えながらしばらくトロピバードたちの降下を私たちは眺め、降り立ったパパ鳥はドヤりながら自己紹介っぽく鳩胸を膨らませて仰け反ります。恐らくイベントに入ったのでしょうが言葉がわかりません。
『スチーンッ! マ、マンゴス。スチンスチン』
すると、ママ鳥が翼でパパ鳥の頭をスッ叩き私たちに向けて謝りだしました。
「イベントが始まったってことは翻訳アイテムはあの装備のどっちかだよね」
私たちは"水着"と"鹿木氷の棒"の両方をとりあえず装備すると言葉がわかるようになりました。
『すまんすまん。あの不良西瓜鳥を懲らしめてくれた恩人じゃったな。ワシはこの果実鳥たちの王である麝香猫果実鳥、こちらは愛しの王妃の 茫栗果実鳥じゃ』
腰を低くして再度、自己紹介をしたであろうドリアンバードはちらっとマンゴスチンバードを見て、"愛しの"を付けて紹介し直したことでご機嫌になっている妻に安堵しているようでした。
「スイカバード? ⋯⋯私たちが戦ったのは西瓜蟹鋏鳥だったよね?」
「そうじゃな」
『あやつは蟹鋏からハサミを奪って強くなろうとしただけのただの西瓜鳥じゃ』
ドリアンバード曰く、ハサミを奪われてたカニッパーはただの蟹になって海に帰って行ったようです。
「だからあまり数がいなかったんだね!」
『そうね。【厄災】火龍果実鳥の強さに憧れた哀れな子よ。⋯⋯カニッパーたちには今度謝罪に行かないといけないわね』
「【厄災】ってどうやったら戦える?」
「【厄災】ってここにいるの?」
『お主らは───』
私とアユちゃんがマンゴスチンバードの話した【厄災】について食い気味に質問するとドリアンバードの眼の色が変わりました。
「【厄災】フワマンネを解放したのか。ならば、ワシからの依頼じゃ。[【厄災】火龍果実鳥の解放]、このクエストという形でお主らに頼むとしよう』
後ろから「おっ」という声が聞こえて振り返ると、パーティを組んでいた全員がクエストを受注した扱いになったようです。
『トロピドラゴンはこの熱帯林を抜けた先、更地に一本、ドラゴンフルーツの木が生えていて、そこが【厄災】の封印場所よ』
マンゴスチンバードから封印場所を聞いた私たちは巣を後にしました。
「俺たちは話がわからなかったから説明してもらえると助かる」
アレスさんたちに今起きたイベントの概要を伝えながら、私はクエスト発生条件をまとめます。
「トロピバード・西瓜蟹鋏鳥の討伐、会話イベント中に水着での【厄災】発言、その時に【厄災】からフワマリンネを既に解放していること。そんなとこかな?」
アレスさんたちが頭に手を当ててマジかよって呟いていますがマジです。そして、何に対してそう呟いたのかもわかりました。
「つまり、風車の街・カザグル、湾岸都市・ナミノ、この二つの町でのクエストを完全にクリアしないと発生しないイベントということじゃな」
私たちがクエストの鍵になっているので、このクエストはクリア扱いになるでしょうが、今後も同じ展開が予想され、アレスさんたちは町を戻ってクエストを探すところからになります。
「ま、終わってから考えるか。 それじゃ、【厄災】トロピドラゴンとやらをサクっと倒そうぜ」
ガイさんが真っ先に思考を放棄して走り出しました。ドラゴンの名を持つ【厄災】、事前情報は掲示板で情報収集が好きなハナさんも持っていないため私たちが初めて挑むプレイヤーのようです。強敵の予感がしました。




