第57話 栗毛武道家、ゲームを遊ぶ。
翌日、アレスさんたちと合流した私たちは最後のクエストが発生するとアタリを付けているトロピバードの巣へとさっそく向かいました。
「それでさー、そのスイカニッパーって感じのトロピバードがねー」
アユちゃんがスイカニッパーの挙動についてアレスさんたち四人に面白おかしく伝えながら道中を進みます。
「津波対策が水着でスイカ割りが効果抜群ってすっごく笑えるよ! なんかゲームっぽくていいじゃん!」
「いやハナさん、ここゲームじゃないですか」
「そうだった! けど、そのゲームだって認識が大事でさ、やっぱりゲームなんだから色々と試さないとだよねって話」
「まあ、分からないでもないですけど⋯⋯」
特定のモンスターへの対策があることに興奮するハナさんに気をよくしてアユちゃんがフワマリンネ戦の様子も話しています。私たちと親しくなってアレスさんたちもアレスさんたちなりにパーティメンバーとの距離感が近くなったらしいです。
「ま、現実でありゲームである。まさに仮想現実ってヤツじゃねーか。な?」
「放水 ッ!」
「ぶっ!」
ガイさんがドヤ顔で上手くまとめただろ?っという顔がなんとなく気に入らない様子のアユちゃんが水をぶっかけます。
「何しやがる!」
「逆っ! ゲームだけど現実があるの。この世界はゲームなんだよ? だったら楽しまないと!」
「同じじゃねーか」
珍しくアユちゃんが荒れていますが、もしかしたら私に気を遣ってくれているのかもしれません。
「確かに私たちの現実だよ? けど、プレイヤーがプレイヤーである以上はゲームなんだよ」
つまり、人がいようがいまいがあくまでもゲームと割り切るアユちゃんは、みんながロールプレイ、つまりはキャラクターを演じているだけと言い切ります。
「だからさ───、VRゲームを現実として受け止めるのは経験をリアルに持ち帰ってからなんだよ。⋯⋯ゲームから一歩を踏み出した友達が近くにいるから、だから私たちはゲームとして遊ぶし色々と試すんだよ」
その話を聞いて、私は"アレ"が久しぶりに見たくなりました。
「ねえ、アユちゃん」
「ん?」
「私、アレが見たい。アユちゃんが初めてショートカット機能で見せてくれた花火をみんなに見てほしい」
私のお願いが伝わったようで、一言「オッケー」とアユちゃんらしい返事をしてショートカットを触る動作をしました。
「ゲームなんだから魔法使いは華やかに魔法を使います! バブルッ!」
アユちゃんは空に左手をかざし、バブルを放ち、バブルにホーリーアドオンをショートカットで掛けます。
「水縛陣ッ!」
光の泡と化したバブルに水縛陣で泡のまま空中に固定し、いくつもの光の泡を空中に作ります。なお、最初のバブルを叫んだのは雰囲気のためのようで、2個目以降はショートカット発動で増やしていきました。
「これは綺麗ですね」
「うんうん。魔法にこんな使い方もあるんだ」
アレスさんとハナさんが見惚れているのと対照的に、ヒューイくんとガイさんは目から鱗という言葉が似合うくらい固まっています。ミコさんとプリアちゃんはアユちゃんだしね〜って、これで終わらないだろうことも分かってる感じですね。
「さ、花火大会といっくよー!」
武道家の隠しスキルエアショックで固定した泡を最短発動で連続して空中で破裂させ、煌びやかな花火を演出します。
「⋯⋯は?」
「これは見事じゃのぅ」
魔法使いが魔法を使わない。その発想にガイさんは唖然としていますが、それこそがアユちゃんの言いたかったゲームなんだから色々とやってみて、リアルに活かせってことかなと私は思います。
「で、話は戻るのじゃが。水着の素材に通常のトロピバードの羽、スイカニッパー羽ときたら」
「なるほど。もしかしたら次は”巣”に関係あるかもしれないな」
私のお願いしたアユちゃんのショーも終わり、ミコさんとアレスさんは真面目にクエストについて話しています。
「あ、そういえば」
鳥かーと考えていると、私はこの大陸に来たことを思い出しました。
「フワマリンネで飛んでる時に襲ってきた鳥さんに、アユちゃんが"厄災"のカケラが足に絡まっていたって言っていたような」
私がそういうとミコさんとアユちゃんの二人も「あー」と言った感じで思い出しました。
「つまり、トロピバードの親玉が"厄災"である可能性が高いといいたいのかい?」
「はい。フワマリンネの時もクエストはカザグルで大量のフワマルたちを倒した後に発生しましたし」
なお、この私の予想はすぐにトロピバードのパパ、ママからの依頼で当たることになりました。




