第56話 栗毛武道家、水着を預ける。
私たちは湾岸都市ナミノに戻り、さっそく水着の強化を行ってもらいに防具屋の先代がいる店舗の離れへ向かいました。
「これはスイカニッパーの羽じゃねーか! こいつは巨体で津波を起こし海中戦を仕掛けてきて並大抵の冒険者じゃ歯が立たねぇのによく倒せたな!」
先代は大いに驚いた様子で羽を見て興奮しています。
「お主の水着のおかげじゃ。感謝するのじゃ」
「はっはっはっ! 俺のおかげか! よし、最高の防具に仕立ててやるから待ってな! 明日には渡してやるから水着は預からせてもらうぞ」
ミコさんの一言で機嫌を良くして作業に取り掛かってくれるようで性能強化量の増加が期待できました。
「ちょいまちな! アンタ、女の子の水着を何だと思ってんだい! 女房のアタシがキッチリと仕上げてあげるから、あんたらは安心しな」
水着の強化は先代の奥さんが最終的に引き受けてくれましたが、多分大丈夫でしょう。
「男って単純だよね〜」
「そうじゃな。───じゃが、働く者にとって、自分の仕事に対して感謝の声を直に聞いて嬉しくないことは決してないのじゃ。アユだけじゃなくラピスにプリアも覚えておくとよいぞ」
この世界はゲームです。NPCと会話は選択肢の一部を担っており、会話次第で好感度が変わり仕事の質が変わります。
「そうだよね! 私もお客さんにありがとうって言われると気持ちがいいもん!」
プリアちゃんもバイトとして働いているらしく、その言葉に共感しているようでした。
「⋯⋯私たちも土日だけでもバイトしてみる?」
「ミコさんの言ってることもわかるし、ラピスちゃんの気持ちもわかるけど、私たちは学生で勉強や学校生活が第一だからね」
私のバイトの提案はアユちゃんが真剣な雰囲気で却下されました。
「このゲームをしてる時点で説得力はないのぅ。⋯⋯じゃが、そうじゃな。社会に出たら基本的にあとはひたすら労働じゃ。お主がやりたいバイトがあるならやってもいいと思うが、そうでないなら好きなことを今は存分に楽しむとよい」
ミコさんはそう言ってアユちゃんとプリアちゃんに目配せをしました。
「そうそう。私はラピスちゃんと高校生活を楽しみたいし! まあ、二人でバイトってもの楽しそうなんだけど、それはラピスちゃんがリアルで人にもっと慣れてからかな」
そう言ってアユちゃんはいつもの感じに戻りヘラヘラとしました。
「私のバイトはやりたいことだから! きっとラピスちゃんもやってみたいことに出会えるよ! その時は応援するからね!」
とりあえずバイトしようかなって考えはよくないと皆に諭されました。
「そうだよね⋯⋯。やりたいことじゃないと、もし辛いことがあったらすぐに辞めたくなっちゃうかもしれないし、軽く考えすぎてたかも。みんなありがとう」
そんなこんなでリアルのあれこれ中心にお喋りをして1日が終わりました。




