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第54話 栗毛武道家、西瓜蟹鋏鳥で成長を感じる。

 トロピバード(果実鳥)・西瓜蟹鋏鳥(スイカニッパー)、その姿は巨大なスイカから鳥の頭と足、羽、尻尾が生えている通常のトロピバードの特徴に加えて、羽はカニッパーの鋏(ハサミ)で出来ていました。


「あの羽がカニッパーと同じハサミと同じ威力じゃとやっかいじゃのぅ」


 私たちはカニッパー(蟹)を相手にする時はアユちゃんの泥沼で不意打ちの攻撃を避けてきましたが、あのハサミに直撃するとかなりのダメージを受けることを他のプレイヤーを見て知っています。


「とりあえず、私とミコさんはいつもの動きで」

「そうじゃな」


 私は素手になり懐に飛び込み攻撃の当たらないであろう真下に入ります。


「えいっ、えいっ、"空波拳(くうはけん)"ッ!」


 私が使い続けてきた"正拳突き"は構えからの一連の流れによってダメージが変わるため正面への攻撃でなければ威力が出ません。なので、トロピバード(パパイヤ)対策の遠距離スキルとして取得した"空波拳"を上へ向けて放ちます。


「拳術の跳び技を直接当てるとダメージアップなんだよ!」

「ラピスよ、その動きは初めてみるんじゃが、とりあえず殴ればいいのかのぅ?」

「はい!」


 弓術の必中スキル"天穹・始導(てんきゅう・しどう)"は再使用までの時間(クールタイム)とミコさんの呪術の組み合わせが必要なので改めて遠距離スキルを吟味して私は空波拳(このスキル)を取得したのです。


「っふ、っふん! やぁ! ───刺突・一点ッ!」


 ミコさんは水着からいつもの薄紫の羽織りに朱色の袴を装備し、手に長槍"一迅ニ風三散"を持って頭の鈴を鳴らしながら舞います。


「ミコさんの攻撃、効いてないっぽいかも」

「やはりと言うべきか、突撃属性は弱点以外は耐性がありそうじゃな」


 アユちゃんが観察してダメージが通っていないのを伝えます。スイカニッパーは巨大で、弱点と思われる頭も高い位置にありミコさんが少し下がります。


「いかん! ラピスも下がるじゃ!」


『スッ⋯⋯、スイーーーカッ!」


 スイカニッパーが首を下げた後、大きく首を持ち上げて跳ねました。


「ラピスちゃん! 直撃しなければ私が回復するからやっちゃえ!」


 私はプリアちゃんを信じてギリギリダメージを受ける位置、尚且つスイカニッパーの正面で構えます。


「────正拳突きッ!」

「ヒールッ!」


 ズドーンと砂を吹き上げて落ちてきたスイカニッパーはその近くの私に衝撃でダメージを与えますが、プリアちゃんが即回復させてくれました。そして私の攻撃はスイカニッパーの顔面へとクリティカルヒットしました。


『ガニッ⋯⋯』


「ミコさん!」

「わかっておる!」


 怯んで頭を下げたことに即座に反応したミコさんと共に私たちは蓮撃を叩き込みます。


「っふ、っふん! やぁ! ───刺突・一点ッ!」

「────正拳突きっ、えいっ、正拳突きっ、えいっ、正拳突きッ!」

「────水の壁となり押し潰せっ! ウォーターブロック(水塊)ッ!」


 様子を見ていたアユちゃんも衝撃属性が追加された水属性魔法で攻撃に参加を始めます。


「離れて下さい!」


 プリアちゃんの一言で私たちはスイカニッパーから距離をとります。


『スイィィィイ⋯⋯カッ! カッ! カッ!』


 今度は口から大きな西瓜(スイカ)の種を吐いて攻撃してきました。


「正面は出来るだけなしじゃな」

「そうですね。地面に半分沈んでしまいましたし、さっきの動きが下にいることなら頭は期待できませんね」

「ならばやはり尻尾じゃな」


 私たちは冷静に分析して次の攻撃方法を考えます。羽がカニッパーのハサミであるため振り下ろしなどの攻撃をサイドからは考える必要性があります。となると後方、尻尾を次の狙いに定めます。


『ガニィイイッ! パッ! パッ! パッ!』


 しかし、スイカニッパーも後ろを取らせまいと羽のハサミで攻撃を仕掛けます。


「そのまま沈んじゃえ! 泥沼《クァグマイアー》ッ!」


 が、アユちゃんの泥沼に羽が沈み私たちまで届きません。尻尾に到達した私たちは再び総攻撃を仕掛けます。


「っふ、っふん! やぁ! ───"刺突・乱れ霰(みだれあられ)"」

「えいっ、えいっ、正拳突きッ!」

「────ウォーターブロック(水塊)ッ!」


 先ほどのダウン時の頭と違い、尻尾は揺ら揺らと動いているため小技でダメージを積み上げます。


「名前が橙色に変わりました!」


 プリアちゃんの声で一斉にスイカニッパーの動きの変化に警戒します。


『スイ〜〜〜』


「潜ったのじゃ」

「───"天穹・始導"ッ!」


 泥沼無効なのか、動きが戻り地面に潜ります。私は見失わないように弓矢を再び装備し、クールタイムが過ぎた必中スキル"天穹・始導"を空へと放ちます。瞬時にこのスキルが使えたのは、この大陸に来てから一カ月以上経ち、覚えた新しいスキルを使いこなせるようになったからだと思えました。


「ラピスちゃん! 凄いよ!」


 不意打ち回避で居場所特定のために打った必中スキルにプリアちゃんが興奮していますが、落ちてきていた矢はふいに落下をやめました。


「え?」


 なぜか矢は方向を海、それも沖合へと変えて勢いよく飛んで行きました。


「⋯⋯ボス特有の瞬間移動かのぅ」

「ってことは⋯⋯」


 ミコさんとアユちゃんは何が起こるか察します。私もそれに気づき、ふとフワマリンネ戦を思い出しました。


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