第53話 栗毛武道家、西瓜を見つける。
私たちは以前と同じ作戦を道中は基本的に行い、ボスと思われるパパとママはイベント発生を期待して地上戦を想定して準備します。
「もしさ、パパとママが降りてこなかったらどうするの?」
「ふむ、その時は撤退じゃな」
「潔いね!」
まあ、アイテムだけでも美味しいので問題はないのですがこの町をすでに離れたアレスさんたちに戻ってきてもらう以上は何かしらプラスαの戦果は欲しいところです。
「そういえばさ、水着装備に鹿木氷って武器屋と防具屋から貰った装備だし、セットで何か起きないかな? スイカ割りとか!」
「⋯⋯!? アユちゃん! それだ!」
私は防具屋で水着を受け取った時に聞いた話をみんなに話します。
「『もしスイカ型のトロピバードの羽を手に入れたらその時はまた来るといい。遊びの水着を戦闘用の水着に仕立て直してやるからな』って、防具屋の先代が言っていたんだよ〜」
「そーなんだー。ごめん! 聞いてなかった!」
「わっちもじゃ。すまんのぅ」
もし、これが連続クエストなら可能性はあるはず。そう思い、私たちは先にカニッパーたちの生息する砂浜に向かいました。
『『カニッ、カッニーッ!』』
飛び出してきたカニッパーたちは私たちを見て動きを止めます。
「なんかさ、この子たちも可愛いよね」
「そうだね。さすがに1カ月近く見てると私も愛着湧くよ」
『カッ!? カニッー?』
言葉は通じないにしてもレベル差的に私たちの方が強者となり攻撃はしてこなくなりましたし、泳ぎの練習をしている時も近くを歩いて私を見ていたのを私も見ていたので私もカニッパーたちをこれ以上無駄に狩るのは憚れました。
「十分に乱獲した後じゃがのぅ」
「ミコさん! ラピスちゃんをいじめない!」
「すまんすまん。ついのぅ」
少しだけ二人の距離が近くなったような気がしますけど、私はそれがお互いにいい事だと思い言葉にせず胸に仕舞います。
「じゃ、水着と槍を装備しよっか」
アユちゃんの合図で私たちは全員が装備を変更します。
「ラピスちゃんの水着姿! 相変わらず可愛いね!」
「あはは⋯⋯ありがとう、プリアちゃん。まだ恥ずかしいんだけどね」
私はピンクのタンキニタイプの水着にパレオを巻いた姿で"鹿木氷の棒"を装備します。ちなみにプリアちゃんとミコさんはビキニタイプ、アユちゃんは競泳水着となります。
「ん⋯⋯今さ、イベントマップに入った感じしたよね」
「当たり⋯⋯のようじゃな」
アユちゃんとミコさんがサッと警戒しますが姿が見えません。小さな、ほんの小さな振動を感じ嫌な予感がしました。
「下っ!」
私はそれを信じて叫びます。次の瞬間には砂が盛り上がり巨大なハサミが飛び出してきました。
『スイガニィイイーーー!!』
「巨大なカニッパー!?」
「アユよ、どうやら違うようじゃぞ」
現れたモンスターは低空ではあるが飛行し、体は巨大な西瓜で出来ていた。
「放水 ッ! ホーリーアドオンッ!」
アユちゃんが手始めにいつものスキルを発動します。モンスター名は⋯⋯トロピバードでした。
「差し詰めトロピバードのスイカニッパーといったところかのぅ」
「ラピスちゃん!」
「うん!」
プリアちゃんの言いたい事を理解し、私は"見習いの弓"と"矢筒(破魔矢)"へと装備を変更して弓を空へと構えます。
「───"天穹・始導"ッ!」
「───付与呪術・反転金縛ッ!」
私の発動した必中スキルに麻痺スキルをミコさんが乗せてトロピバードに刺さります。
『ガニィイイ!』
が、全く動きは止まらずハサミを叩きつけてきました。
〔移動速度増加〕
その攻撃範囲にいたミコさんに私はショートカットでスキルをかけて回避させます。
「助かった! じゃが、やはり落ちんか」
「ボスだしね〜。あれはトロピバードってよりスイカニッパーって別のボスと思った方が良さげかも」
「そうだね、動きもわからないし慎重にいこう」
元々威力のない必中スキルなので麻痺が入らずほぼ無傷なのが少し凹みますが、長期戦は上等です。
「回復は任せて!」
だって、プリアちゃんが仲間になって初めてのボス戦なんですから!




