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第46話 栗毛武道家、破魔矢を返納する。

 私たちは"トロピバードの羽"を防具屋の先代店主へと納品しました。


「ほらよ。これが報酬の防具だ」

「って、これは水着だよね⋯⋯」

「海あるからね〜! ね、みんなで泳ぎに行こうよ!」

「それよりも全員分あるのは何故じゃ?」


 貰えた防具は水着でした。⋯⋯確かに布を使っていると言っていたので重鎧などではないにしても、ローブとか他にあるよね? と思えなくもないですけどプリアちゃんの言う通り海があるからなのでしょう。


「ん? お前たち、トロピバードの羽を 40枚持ってきたじゃないか。一着 10枚で水着の防具を作ってやる。と、そう伝えたと思うぞ」


 先代店主の言葉に固まりながらも私たちはお互いに顔を見合わせます。


「⋯⋯聞いてなかったね」

「アユちゃんのフラグがなんだってミコさんも騒いでいたし、全員が聞き逃したのかな」

「⋯⋯町長の時からまるで成長せんな」

「今回はミコさんもね!?」


 ミコさんを含む四人でガヤガヤと話していると後ろで先代店主が気になることを話しているのに気づいてそちらに耳を傾けます。


「もしスイカ型のトロピバードの羽を手に入れたらその時はまた来るといい。遊びの水着を戦闘用の水着に仕立て直してやるからな」


 私はそれをみんなに伝えようとしてやめました。その代わり、忘れないように深く記憶しました。


「終わったーーー!」

「お疲れ様じゃ」

「かなり苦労したけどやっとだね!」


 防具屋の連続クエストをクリアして報酬を受け取り、みんなが達成感に酔いしれているところに水を差せなかったからです。


「それじゃ、さっそく海に行こっか〜」

「その前に寄るべき場所があるのじゃ」

「あ、はい。あそこですね」


 海龍神社へと私たちの狩りが無事に終わったことの報告と、使用済み破魔矢のお焚き上げのためにやってきました。


「出費に対してのリターンが水着か〜」

「ちょっとお高い水着だよね!」


 授与所にて破魔矢の値段を見ると、破魔矢一本でトロピバード一体での狩りはかなりの赤字だったのを実感させられました。


「けど、私たちの初期装備よりは防御力高いんだよねー。ラピスちゃんは着替える?」

「私は恥ずかしいし、必要になったらで⋯⋯」


 ちなみに報酬で貰った水着装備はまだ試着もしていないのでどんな水着かわかりませんが、【ラピス専用】と付いているのに嫌な予感しかしません。


「アユちゃんだけラピスちゃんの水着姿を見てるんだよね? 私もラピスの水着姿、見たいな〜!」

「や、それはリアルでだけだよ〜⋯⋯」

「ね! アユちゃん、ラピスちゃんの水着写真あとで送ってもらっていい?」

「おっけー!」

「えっ!アユちゃんとプリアちゃんの二人っていつの間に連絡先交換してたの!?」


 私の知らないところで私のプライバシーが拡散されていたのにショックを受けますが、アユちゃんからプリアちゃんへなので怒ったフリをして私は文句を言いながらプリアちゃんのプライベートを聞き出そうと頑張ります。


「だって、ラピスちゃんとリアルで繋がるのはなんか恥ずかしいし⋯⋯」


 だけど、いつものプリアちゃんらしくない"素"のような態度を出されては私は諦めざるおえませんね。


「そういえばさっ! ラピスちゃんの"加護"スキルって七夕イベントの報酬なんだよね?!」

「うん。多分だけど応羽さん、金の花びらが集まったんじゃないかな?」

「だねー。エミルさんがギルドに誘って入ってくれてたし、私の話をしてても不思議じゃないからねー」

「え!? 私聞いてないー! そっかー、"第六天明王"に新しい人が入ったんだー! 会ってみたいなー!」


 それから七夕での出来事をあれこれ話していて願い事の話になりました。


「もし、プリアちゃんの願い事が叶うなら何を願うの?」

「私はねー! ラピスちゃんのところにどんな時でもすぐにワープできるスキルが欲しいかな!」

「っう! 全属性の最強スキルが使えるようになりたいとか思った私を殴りたい⋯⋯」

「十分にアユも純粋な願い事だと思うのじゃがなぁ。ラピスはどうじゃ?」

「私は⋯⋯」


 真っ直ぐに私への好意を向けてくるプリアちゃんが眩しくて、純粋にゲームを楽しんでいるアユちゃんも眩しくて、私は考え込みます。少ない時間の沈黙。みんなが私の言葉を静かに待ってくれている優しさが身に染みたころ、絵馬を私たちに渡しながらミコさんが真剣に言葉を選んで話しはじめました。


「⋯⋯お前たち。人の願いは時に悪意にもなるのじゃ。呪符の話は少々分かりにくいかったやもしれぬが、呪いや呪詛なんてものは嫉妬や恨みにより相手の不幸を願った結果じゃ」


 そう言いながら願い事をスラスラと書いて奉納します。


「神様に叶えて欲しい自分の願いには悪意を乗せるべきではない。それなら最初から呪い専門のところへ行けとわっちは言いたいのぅ。それとじゃな、努力でどうにかなる願いはのぅ、願うものでなく決意を神様に示すために書くのじゃぞ」


 ちなみに、ミコさんの呪術は相手の動きを一時的に止める事に特化したもののため、あくまでミコさんが止まって欲しいという願いで発動しているので悪意はなくノーカンとのことです。


「じゃあ、私たちは先にさっきの願い事を書くね」


 アユちゃんはそう言ってプリアちゃんと二人で先に書き始めました。


「私の願い事か〜。あっ⋯⋯」


 恥ずかしいですけど、私は思い出した願い事を絵馬に書き、こっそりと奉納します。


「あれ? ラピスちゃん、もう書いちゃったの?」

「ね! ラピスちゃんは何を書いたのかな〜?!」


 二人が興味津々で聞いてきますが恥ずかしいので内緒です。


【水が怖くなくなりますように】


 ここは海龍神社です。水に関する私の願い事、叶えてくれるといいな。

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